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巨乳と切腹

いよいよ露天風呂に琴音さんたちが登場!


 ――ガラガラガラ。


 そこでガラス戸が開かれる音。


「お待たせいたしました♪」


 聞くだけで癒される美しい声で琴音さんが入ってきたことを知る。

 おそらく凪咲さんも一緒だろう。


 泣きそうになっていた俺たちは慌てて湯で顔を洗い、気分を切り替える。

 せっかく露天風呂に招待してもらったのに暗い表情では申し訳ない。


「す、すみません! 先に入らせていただいてます!」

「は、葉菜もですっ! そ、そのっ、すみませんっ!」


 まずは謝罪から入るのが俺たち兄妹らしいというかなんというか……。


「いえいえ、どうぞお気になさらないでください♪」

「そうです。お嬢様のご友人に風邪をひかれてはメイド長であるわたしの失態にもなりますので」


 ミジンコ以下の存在の俺たちにこうまで気を遣ってくれるんだから、本当に恐縮というか感謝というか畏れ多すぎる。


 面と向かって感謝の気持ちを伝えたいところだが、琴音さんたちが今どういう姿なのかわからないので振り向くこともできない。


 はたして、全裸なのかバスタオルを体に巻いている状態なのか……。


「それでは、わたくしたちも温泉へ浸かりましょうか♪」

「はい、お嬢様」


 ふたりがこちらに近づいてくる。

 って、やはりこの露天風呂、温泉なのか。いい匂いしてるもんな。

 自宅に温泉掘るってどんだけ金持ちなのだろう。


 そう思う間にも琴音さんたちは近づいてくる。

 一歩ごとに緊張が高まる。


 そして――琴音さんたちはわざわざ大回りして俺たちの向こう側……真っ正面に立った。

 つまり――その姿を直視することになる。


 ――っ!? ぜっ、全裸!

 ふたりとも全裸だった!


「ふふ♪ 裸のつきあいというのも少し恥ずかしいですね♪」

「お嬢様の願いを叶えることができてメイド長のわたしも無上の喜びです」


 照れ笑いを浮かべる琴音さん(全裸)。

 涼しい表情の凪咲さん(全裸)。


 漫画だったらここで鼻血を噴きだしているところだ。

 幸い、そうはならずに済んだ。温泉を汚さずに済んだ。


「お、おっきいよぉ……!」


 いつもは優秀な妹だが、琴音さんの母性を象徴する巨乳を前にシンプルな感想を口にしてしまっていた。


 そうなのだ。大きいのだ。

 服の状態からしてわかっていたことだが、こうして見ると本当に大きい。


 素晴らしいおっぱいである。

 これが母性か。なんて圧倒的なんだ。


 ……って、なに見てるんだ俺は! 紳士として恥ずべきことだ!

 つい見惚れてしまった俺は自らの右頬を右拳で全力で殴った。


「み、道広くんっ!? どうなされたのですか!?」

「……い、いえっ……ご心配なく。琴音さんの胸に無遠慮な視線を向けてしまった自らを恥じただけです」


 俺が武士だったら今この瞬間に切腹して果てていることだろう。


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