少年よ、パンツを被れ
「なるほど。食うに困って盗みを働いたのか」
「こんなガキに働き口なんて無いんだ! 他に生き様なんて無いんだよ! 殺すなら殺せ!」
捕まえた男の子だが、その身柄はソフが預かることになった。
町ではこれぐらいの犯罪は日常茶飯事である。官憲に引き渡したところで、孤児なら指の一本か二本を切り落として終わりだ。
そこまでさせる事も無いだろうと、Aランク冒険者としての実績を使い、この子はソフの預かりとなったのである。
もちろん、ソフはこの男の子を冒険者にしてしまおうと、下心を持っている。善意で助けたわけではない。
まだ10歳ぐらいに見えたのだが、ただ単に栄養不足で成長が阻害されているだけで、実際の年齢は14歳と、もっと上だった。
これぐらいの年齢なら、冒険者も始められる。
「なぁ、冒険者になる気は無いか? もしも冒険者になるって言うなら、俺がお前の面倒を見てやれるけど」
「何を企んでるんだよ、パンツのにーちゃん」
そう考えたソフは、少年の勧誘を始めた。
少年は訝しげにしていたが、話そのものには興味があるらしく、様子を窺うように、疑問をそのまま口にする。
「なぁに。俺はつい最近、パーティメンバーに逃げられたんだ。それで、新しい仲間を探しているってだけさ」
「なんで逃げられたんだよ」
「さぁ、なんでだろうな? 俺はただ、頭にパンツを被ってくれと言っていただけなのに」
「変態だー!!」
「変態じゃない。パンツマスターだ」
「変態だよ! にーちゃん、変態だよ!!」
大事な事なので、少年は二回「変態だよ」と叫んだ。
控えめに言っても、「パンツを被ってくれ」は変態である。
しかし、ソフは真剣な顔で少年に向き合った。
そこに、変態性は……頭の上のパンツ以外に無い。頭の上は変態である。
「いいか、少年。よーく考えるんだ。
パンツを被れば、通常の3倍で戦えるようになるんだ。ただの一般人でも、歴戦の兵士並みに戦えるようになるんだよ。
その事実の前に、パンツを被る事なんて、些細な事だとは思わないか? 食いたいものを腹いっぱい食える方が大切だって、そうは思えないか?」
ソフは、一言一言を噛みしめるように言う。
その言葉は少年の心にストンと落ちて、納得を産み出す。
「そっか。確かにそうだよ。パンツを被れば腹いっぱい飯が食えるんなら、その方が良いに決まってるじゃないか」
「一つ、訂正してやるよ。
“腹いっぱい飯を食える”んじゃない。“腹いっぱい美味い飯を食える”んだ」
少年はパンツを被る事への忌避感よりも、空腹を嫌った。
そして、パンツを被れば飯が食えるならと、ソフの差し出した白いパンツを受け取る。
その胸に、腹いっぱい飯を食うんだという大志を抱く。
「さぁ! 少年よ、パンツを被れ!!」