7. 閑話
「先輩、会議室の片付け終わりました!」
「大野くん、お疲れー!」
「あれ、悟さんは?」
「ん? ああ、佐々木さんなら帰られたわ。これから戻って仕事ですって。大変よね?」
「そうっすか。早く立ち直ってくれるといいんすけどね」
「立ち直る? えっと、大野くん。佐々木さんに少し感情移入しすぎじゃない?」
「そんなことないっすよ!」
「というか、シャッター押しながら貰い泣きするの、やめたほうがいいと思うわよ」
「いや、無理っす。悟さんの話を聞いてたら涙止まらなくて」
「必要以上に被写体へ感情移入するな、これ覚えておきなさい」
「そういうもんすかね」
「そういうものよ。佐々木さんといえば、山足線で人身事故があったんだって。電車遅れてるかもしれないから気をつけた方がいいわよ」
「電車? どうせ、今日も終電だから関係ない気がしますけど」
「同感。私たちには無用の心配よね、きっと」
「ほんとっすよ、マジ切ない」
「今日こそは早く帰れるように、この後もキリキリと働きましょうか!」
「そうっすね。ところで、今日の記事って締め切りいつまでなんすか?」
「あ、それ聞いちゃう? 今週中よ」
「今週中!? マジっすか! 先輩、御愁傷様でーす」
「なに、他人事の顔してるのよ。佐々木さんの文字起こし、大野くんの担当だから。編集長のご指名よ、良かったわね」
「は? 俺、カメラマンっすよ!」
「知らないわよ。私も手伝うから頑張って! そうそう、納期は今日中だから」
「うわー、今日は終電も無理だ!」
「大野くん、御愁傷様です!」
「他人事だと思って......。そういえば先輩はさっきから何してんすか?」
「私? 佐々木圭子さんの日記に目を通しているのよ」
「それ、勝手に見ちゃっていいんすか?」
「佐々木さんの了承は貰ったでしょ? 記事にしなければ見ても良いそうよ」
「そういえばそうっすね。ちなみに、何が書いてあるんすか?」
「大野くんも直接読んだ方がいいと思うわ。この記事に携わるならば、日記には目を通すべき。それだけの価値があると私は思うの」
「そうっすか。じゃあ、後で貸してください」
「いいわよ。でも、文字起こしの方が先だからね!」