ひと目で、絶対無理だと気付いたよ
登場人物紹介
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池表 一茂・・・帝国中学風紀委員長
木春 遊馬・・・同副会長
宇治丘 皇成・・・同副書記
書記・・・同書記
竹野内 先生(たけのうち先生)・・・社会科の先生。生徒指導。
とある晴れた朝のことである。風紀委員長池表は校門にいた。生徒が校門を通らねばならない最終時刻、8時20分まで20秒を切っている。新弊橋の彼方、建物の陰から現れたのは紛れもない帝国中生徒の集団である。
その数、10,20・・・
「急いでくださぁい!」必死に叫ぶ。だが彼らが走らない。
「畜生。日頃の鯖読みのツケがここできやがったか・・・」
そして悟ったのだ。「間に合わない」と。
ここで池表ら役員は集団を止める陣形に移行する。いわゆる人の鎖だ。
全員で手を繋ぎ合わせ、遅刻した連中をその場に食い止める。
もとより、遅刻者というのは風紀委員長に年組を申告し、それが昼の放送で流されるというのが通例であった。
だが、あまりに遅刻の数が多いときは勢いで逃げ切り、有耶無耶にすることができるのだ。
人の鎖とはこれをさせないために作られた苦肉の策である。
木春、池表、宇治丘、書記の男四人衆。対するは20人の肉の塊。勝負はもうついていた。
それは草 兵どもが 夢の跡
あれからどれだけ経っただろうか。いや2分しか経っていない。目の前には遅刻者ではなく
生徒指導の竹野内先生が立っていた。明らかに機嫌が悪そうな顔をしている。不味い。
「お前ら生徒会がしっかりやらんけんがこげんなろうが!」
この一言で読者諸君は理解できたであろうが、彼はかなり癖が強めの方言を使う。もう60過ぎのおじいちゃんで言葉の理解に苦しむのはしばしばあるが、これが鹿児島弁とか津軽弁とかでないことが唯一の救いであろう。
そしてこの状況である。やばい。かなり激おこだ。あっ。
竹野内先生が時計を投げつけてくる。野球部の反応でキャッチしていた。
おっと。こんなところで野球が役立つとはな。
皆野球部に入ろう。
あ