END. おかえり
「いつもありがとうございます。コーリー様」
そう頭を下げる女の前には白いマントに鹿の角のようで樹木に似た角を持つコーリー。
額には神の印と言われる太陽の模様の痣がある。
精霊の子でありながら人間のみならず多種族を救う、いわば救世主的存在。
彼は何処で生まれ育ち、どのようにして存在すら消え失せていた魔法を身につけたかは謎である。
「そうえば貴女は昔から病弱だと聞きましたが前はどうされてたんですか?」
症状は比較的落ち着いていたが原因である病気は難病で何度も魔法をかけないと治らない。
しかし、彼女の場合はそれが軽かった。
その理由を知りたかった。
「ああ、昔ひどい風邪で死にかけたことがあって…その時に訪れた老婆のお客様が風邪薬をくれたんですよ」
「…どんな薬ですか?」
「残してありますよ。万が一の為に、もうお客様が訪れなくなって十数年ですから薬は大切にしないと」
そう言って取り出されたのは見覚えのある瓶。
かつて母であり師匠でもある魔女様と共に薬作りを教わった時に使っていたものだ。
作った薬はここに届けられていたのかと思うとコーリーは思わず笑う。
「ここだけの話、この薬をくれたのは氷の魔女なんです。知ってますか?御伽話の」
「え?」
「一度、あまりにも綺麗な人だったから付けたんです。森に入っていったからもしかしたらって思ったんですけど、そしたら姿を変えて若い女の人に変わったんです」
そう彼女は話す。
「…魔女は嫌いですか?」
「ええ、あまり好きじゃありませんね。でも、氷の魔女は好きです。老婆の姿で話してくれる時とても素敵な笑顔で笑いかけてくれたんです。私もあんな人になれたらなぁって」
「なれますよ。きっと」
(魔女様には及ばないけど)
コーリーは彼女から魔女の話を聞くと、その家を去った。
(…久しぶりに帰ろうかな)
そう言って赴いた緑が生茂る森はコーリーにお帰りと囁きかける。
雪は完全に溶けて無くなってしまっている。
しかし、家は健在だ。
コーリーが家の中に入ると中は当然ながら静寂のみ。
首の青水晶のネックレスを握りしめて子供のような笑顔を作るとコーリーは高らかに声を上げた。
「ただいま魔女様!」
そんな家の書斎で紙の上の夜空が静かに文字を作っていた。
"おかえり"
ある王国に古から伝わる物語がある。
王国の北には一年中雪に閉ざされた森がある。
絶対にその森に入ってはいけない。
森には両腕の無い、世界で最も優しい"氷の魔女"と"森の精霊子"が住んでいるから。
____氷の魔女と精霊子
END
最後まで読んでくださってありがとうございました!!
(なんとか間に合った〜!!)
感想などあったら嬉しいです!
他にも小説書いてます。
魂喰らいになったのですが神龍の体を手に入れたようです
https://ncode.syosetu.com/n1811fr/
よかったらご覧ください〜!