軍艦・艦砲の歴史 ~アルマダまで
銃は歴史上、重大な役割を担ってきた。
賛否両論を引き起こし⋯⋯(以下略)
船に大砲を搭載することは14世紀ごろにはすでに行われていた。
しかし、それ以前に船に搭載されていた火器———古代ローマのガレー船に搭載されていたバリスタ《設置型の大型弓兵器》やカタパルト《投石器》、モンゴル帝国が搭載した火箭《原始的なロケット兵器》のように、それ自体は敵の船を破壊するのを目的としたものではなかった。
それらの目的は敵の乗員を殺傷したり、設備を破壊することで戦闘を優位に進める。
あるいは沿岸への攻撃を行い上陸戦を支援するための前座や補助兵装の扱いであった。
16世紀初頭までの船と船の戦いは主に船首に装備した衝角での敵艦を破壊や火船や火炎瓶を用いての放火、船を横付けして白兵戦闘を行い船を占領する接舷戦闘が主な方法であった。
そのため船の構造も船同士の近接戦闘に備えて設計されている。
14世紀の船は横から見ると”Uの字”に見えるほど船首楼や船尾楼が高い物が多い。船首楼と船尾楼とは上甲板の一段高い出っ張りのことで、船首部にあるのが船首楼、船尾にあるのが船尾楼である。
船首楼と船尾楼の役目は、
①高波を防ぐ。②海戦で敵の攻撃を防ぐ。③海戦で敵の船に乗り移りやすくする。④船室スペースを確保する(船尾楼)などである。
元々戦闘を考えずに作った船には楼が付いていないものもあったが、後に戦闘用に改修されたものには文字通り船の前後に木製の塔が築かれたいるものもある。まさに戦闘船の設計思想は城と同じだったのだ。
艦砲の存在が海戦の勝利に大きく寄与したのは、ガレー同士の最後の戦いである1571年レパントの海戦であると言われている。この戦いはスペイン、ベネチア、ローマ教皇軍の同盟国艦隊とオスマン・トルコ艦隊が地中海の覇権を賭けて争った海戦のひとつだ。
同盟国艦隊は、ガレアス船《帆船とガレー船の折衷型の船種》により多くの重砲を装備し射撃により敵を近寄せずオスマン・トルコ艦隊のガレー船に対して優位に立つことでこの戦いに勝利をおさめた。
この時搭載された重砲は砲身が短く射程が短かったがその火力は絶大で、砲撃でズタボロになった敵艦に接舷すれば容易く勝利をおさめることが出来た。
帆船同士が撃ちあいで海戦の勝敗を決したのが、1588年に英仏海峡でスペインとイングランドが争った通称”アルマダの海戦”である。
スペインがイングランドの私掠船が海賊行為と密貿易を繰り返したことに対する制裁戦争の面がおおきい戦いだ。この戦争の敗戦によりスペインの威信は大きく削がれ、その後も戦争を繰り返したことにより財政が破綻する契機となった。
この戦争に置いて何が勝敗を決したのか?
様々要因が絡み合った戦いで単純化は難しいが戦闘にのみ焦点を当てるならば、戦闘艦の構造と大砲の種類の違いにあると考えられる。
スペインは上記のレパントの戦いでも最終的には接舷攻撃による白兵戦闘により勝利をおさめている。
砲撃で威圧しながら敵を追い込み最後には優位な状態で接舷切込みを行う事で勝利してきた。
この戦法は地中海において負けなしで最強の戦術であった。
そのため船も戦法に合わせて設計されており、船首楼、船尾楼が高く。
大きく重い短射程の重砲、上甲板に備え付けられた接舷援護用の大量の小型砲、白兵戦闘用の大勢の兵員を装備していた。レパント時代の帆船と同じようなU字の船だ。
一方、イングランドが用意した大型戦闘艦は船尾楼を縮小し、横から見ると船首から船尾にかけてなだらかに高くなっていく船型をしている。船内の白兵戦闘要員は少なく長射程の砲を大量に装備していた。
スペインの船は重装備に大量の人員搭載、大型の船首、船尾の両楼のせいでトップヘビーになり空気抵抗により速度も低下、操作性が悪化してしまった。イングランド側は重量をと空気抵抗を落とすことでスペイン側より操作性と速度で優位に立った。
装備している大砲はスペイン側より小型で長射程のもので、大砲を支える台に改良がほどこされている。
この時代の大砲は前装式《大砲の前から弾を装填する事》で発射のたびに大砲を移動させなければ再装填できないのだが、スペインの砲は砲台の車輪が2つなのに対しイングランドの砲は4つ付いている。つまり大砲の移動が容易く、早い装填が可能なのだ。
その結果、スペイン側が接近しようにも常に風上を取られ接近できず。遠距離から一方的に射撃を受ける形になってしまう。波の穏やかかな地中海では最強を誇る戦術が、波が荒れ狂う大西洋にでると一気に不利になってしまったのだ。
そうこうするうちに指揮のまずさも合わさり、《当時のスペインの指揮官は海軍の指揮官が戦争前に病死していたために上陸戦を行う陸軍が指揮をしていた》スペイン艦隊は徐々に混乱。
嵐に巻き込まれ完全に壊走しイギリスを周回してスペインに敗走する間にほとんどが拿捕されるか沈没してしまった。
【ガレー船】
船の推進力は帆を張るか、櫂を漕ぐ。
櫂を使う船の事をガレー船と呼んでいる。
帆も使うこともあるが、オールで漕ぐ方が風の向きに関係なく安定して進むことができる。
<キャラベル船>
特徴
三本マストの三角帆
船尾中央の舵
全長20~30m 約50トン
【キャラベル・ラティーナ】
三角帆は地中海の船によく使われていた帆だった。
向かい風でも受ける影響が少なく、斜めにジグザグに進めることができた。
三角帆を使っているのを「キャラベル・ラティーナ」
四角帆を使っているのを「キャラベル・レドンナ」
と呼んでいる。
<キャラック船>
特徴
マストは三本(メインと船尾のミズンマスト)四角帆
ミズンマストに三角帆
バウスプリット(船首に突き出してある棒のようなもの)
全長30~60m 200~1500トン
より長期間航海を可能にするために、水と食料を多く積載する必要がある。
それで開発されたのが大型船舶キャラック船だ。