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『岩の上の扉』

 オブキュロス村は、ドラコニス王国の旧王都・ドラコブルトの街の東にあり、その先にあるシュヴァンツブルク王国との国境にあるコクサエ峠越えに備えるための宿場町として行商人や商人キャラバンが多く通り、僻地の村にしては、栄えていた。


 この村を越えた先に、ドラコニス王国が管理するオブキュロス関所があり、通過のための手形を得なくてはならなかった。


 僕は、このコクサエ峠越えに備えオブキュロス村に一泊することにした。

ドラコブルトが王都だった時代からあるという円卓亭という酒場で、夕食をとることにした僕の隣には、銀等級の冒険者として各国を回っているというカルクスさんとテーブルを共にした。


「おごってくれる? ありがたいねぇ! じゃぁワイルドボアのシチューを頂くぜ!」

「では、代わりに不思議な体験談を教えてもらいたいんですけど」

「なんでも話してやるさ……ドラコニス大陸は不思議なことだらけだからな……特に禁足地じゃな……何が起きたって不思議じゃねぇからな」

「禁足地に入ったことがあるんですか?」

「そりゃ、冒険者やってりゃ……踏み込まざるを得ない瞬間なんざ、いくらでもあるってもんよ」

「なるほど……」

「それじゃドラコブルトの近くであった禁足地での話をしてやるよ」


カルクスさんは、そう言って話し始めた。


-----


 その依頼は、簡単だった。

ドラコブルト近くの農村を荒らすワイルドボアの群れの討伐依頼だった。

本来なら銅等級の連中がやるような仕事だったが、収穫期も近いってことで、短期間で確実に仕留めるため俺たち銀等級が呼ばれたってわけよ。

ま、ギャラは銀等級としての金額を提示されたからな。


 割のいい仕事だった。


 俺たちは、他の銀等級の冒険者、アンとビリー、クリスティーナと俺、4人でパーティを組んで、ワイルドボアを狩っていった。

奴らは足跡を残して歩くからな、追跡は楽だった。

5頭の群れで、夫婦と子供3頭の家族らしかった。

すぐに子供3頭と父親のワイルドボアは狩れた。

だが、母親だけ、取り逃がしてしまった。

母親を逃すと、すぐに繁殖して数を増やす可能性があるからな、確実に最後の一頭を仕留めるため、俺たちは足跡を追ったよ。


 だが、奴は森を越えて、禁足地である左翼の森へと入っていった。

そもそも禁足地なんてもんは、俺たちの勝手な決め事であって、野生の奴らにはただの森ですらないからな……。


確実に短期間で仕事を終わらせるために俺たちも、禁足地に足を踏み入れた。


 禁足地なんていったって、結局はただの森だ。

すぐに足跡を追って、俺たちはワイルドボアを仕留めた。


 な、簡単な仕事だろ?

仕事を請け負ってから一週間とかからなかった。


 すぐに俺たちは、ワイルドボアを狩った証である牙を引き抜き、帰路についた。

急げば3日もあればドラコブルトにつけるはず。

足早に、俺たちは禁足地である左翼の森を抜けようとしていた。


 すると、パーティの一人、ビリーが変な音がするっていうんだ。

立ち止まり、耳を澄ますと、


 ティリリリリリリリ……。


聞いたこともないような、奇妙な音が響いていた。

生き物の鳴き声には聞こえない、何か、マキナなんかの機械音に似た音だと思った。


 仕事は終えてるし、面倒に巻き込まれるのも厄介だと思った俺たちは、音は無視してドラコブルトへと歩みを進めた。


 だが不思議なことに、その音は半日歩き続けても、ずっと俺たちについてくるように一定の音量で聞こえてくる。

しかも、森のそこら中から聞こえてくるようで方角も、その音の方角すらわからない。


 それで日没が近づき、キャンプを張る場所を探していると、森から急に開けた場所に出た。


「なんだこの場所?」


 そこは、巨大な岩を中心に、キレイに円形に広がった草原で、自然に出来たモノには見えなかった。

だが、他の場所でテントを張るよりも、そこで張った方がモンスターの襲撃があったとしても対応しやすいということで、巨大な岩の近くにテントの準備を始めた。


 気づけば、あのティリリリリ……っていう音は消えていた。


 すると、見張りのために、岩に上った女冒険者のアンが、俺たちを呼んだ。

アンが言うには岩の上に変な扉があるっていうんだ。


俺たちは、たいまつ手に登った岩の上を確認すると、確かに不自然に真四角な扉のようなモノがついていた。


 しかし、その扉は、取っ手もないし、そもそも石なのか金属なのかよくわからない、みたこともない素材で出来ていた。

叩くと、キィィィンっと音が響く不思議な金属のようなモノだった。


 すると、急にあのティリリリリ……って音が響いた。

その音と同時に扉が開いたのだ。


 中には、ドアと同じ素材で出来た梯子がかかっていて、岩を突き抜けて地中の漆黒の闇の中へと続いていた。


「どうする?」


ビリーが聞いた。


「どうするって言われても……」


 俺は女性陣のアンとクリスティーナに目配せして意思を確認するが、二人とも危険は冒したくないって首を振った。


 すると、その空気に気付いたビリーが声を荒げた。


「おいおい、マジか? こんなの古代遺跡に決まってるだろ? しかも、こんなの聞いたこともねぇ……ってことは誰も見たことのねぇ代物ってことだ! つまり中には誰の手もついてねぇお宝だらけだぜ?」

「たしかにな……」


 ビリーの言うことにも一理ある。


「じゃ、男だけで行ってきなよ」


 クリスティーナは呆れたように言った。


「お言葉に甘えて……お宝は俺たちのもんだからな!」


 ビリーは憎まれ口をたたいて松明の火をランプに移して、ゆっくりと穴の中へと入っていった。

俺もビリ-に続いて梯子を下りていく。


 周囲は丸く削り取られたような筒状になっていて、全て扉と同じみたことのない素材でできてた。


「どこまであるんだろうな?」

「さぁ……深けりゃ深いほどお宝はたんまりあるんじゃねーか?」


 しかし、降りても降りても底が現れない。


「ちょっと、深さを確認していいか?」

「だな、頼む!」


 俺は、懐からスリングショット用の小石を、漆黒の闇の中に堕とした。


 シンっと無音のまま時間だけが過ぎていく。

そして30も数えた頃に、キィィィィィンっと下から音が響いてくる。


「こりゃ、遠いな……」

「だが、底があるってことだ……」


 が、次の瞬間。

事態は急変する。


ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ……。


 何かはわからない。

ただおびただしい数の何かが、うごめいている音のように聞こえた。

そして、その音は……俺たちめがけてこの筒を上がってきているようだった。


「あ、上がれ!」

「お、おう!」


 俺たちは必死に上ったよ。

途中、ワイルドボアを狩った証となる牙の入ったバックバックを捨ててまで必死にな。


 だが、異変は、さらに続いた。


 ティリリリリリリリリ……。


 あの奇妙な音が響き始めたんだ。

上からはアンとクリスティーナの声で「ドアが閉まりだした! 急いで」って声が聞こえたよ


 二人は、俺たちが戻るまで扉が閉まらないようにって、手持ちの剣や斧なんかを差し込んで踏ん張ってくれてたよ。


俺とビリーが扉から飛び出してすぐだったよ。


 バキンッ!


 音を立ててアンの剣とクリスティーナのバトルアックスが砕けて、扉は閉じた。

その瞬間だよ、扉の向こうからガサガサと大量の何かがうごめく音が響いてきた……。


-----


「結局、証が無いからな報酬はもらえずじまいさ……俺とビリーは、アンとクリスティーナの報酬分と剣とバトルアックス代を肩代わりして……大赤字だよ」


 そう言ってワイルドボアの肉にかじりついた。


「その後、俺はビリーと、その場所に戻ったんだよ……だが、岩はおろか……あの草原すら見つけられなかった……まぁ、今思えば命があっただけでもマシだよな」


 カルクスさんはかじり取ったワイルドボアの肉を、エールで胃に流し込んで笑った。

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