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『サンドフロッグ』

 その日、僕はドラコニス大陸のほぼ中央に位置するドラコニス王国の旧王都ドラコブルトの老舗酒場ドラコバールトで、憲兵長のフォルカーさんと食事をしていた。

 すでに50歳を超えているフォルカーさんは、元はドラコニス王国正騎士団に所属したれっきとした騎士で、百年戦争では、いくつもの武勲を上げた人物でもあった。


「怖い話? 戦争の中じゃしょっちゅうさ……」


 フォルカーさんは、カエルのフライに食らいつきながら、話し出した。



 その日は、サエウム荒原を越えてきたルベルンダの部隊がドラコニス王国領に入ったと聞いて、すぐさま出撃させられたよ。ニワトリが朝を告げる前の、まだ暗い時間にたたき起こされてな。

 おかげで朝飯も喰わずに夕方まで行軍だ。しかも、その辺は、砂漠地帯でな……馬も使えないから徒歩でだぜ。

 ちなみに砂漠を越えてくるルベルンダの兵隊ってのはよ。近くにくりゃすぐわかるんだ。

あいつら、質の悪い鋼を使った鎖帷子を着てるからよ……ガシャガシャと音が姿が見える前から聞こえてくる。

 だから、すぐに遭遇できると思って、俺たちは進んだのさ。


 ところが、全然、出てこねぇ。仕方なく俺たちの部隊は国境付近までの移動を命じられた。

手持ちの水は少いってのに昼は酷暑、夜は急激な冷え込みに耐えながら、俺たちは何もない砂漠の中を歩き続けたのさ。既に食糧がつきて丸2日。水も飲んでねぇ。

 敵じゃなく、この砂漠に殺されると思ったね。

 だが、その時の騎士長が撤退は無いって頑な奴でね……それも仕方ねぇ。そいつは、どこぞの貴族の御曹司でよ……手柄を立てなきゃお家に顔が立たねぇってよ。


 そんな最中だよ。

突然、地面の中から一軒家よりも、でっかいカエルが飛び出してきた。サンドフロッグだ。

 こいつには、砂漠の中で生きるため腹の中に水袋があってね。

倒せば、飯と水にありつけるって、俺たちは、必死で戦ったよ。

 そして、俺たち騎士団は、戦いの末、勝ったのさ。最後は俺の戦槌でトドメを指してやってな。

まずは水だって、腹を掻っ捌いて、内臓をより分けていた時さ……。


 ガチャガチャって音がしたんだよ。

胃袋の中からだった。

その胃袋を掻っ捌いたら、胃酸で真っ黒に変色した鎖帷子だったよ……ルベルンダのね。

 しかも、それだけじゃなかった。ドラコニス王国騎士団が使ってる鎖帷子も、何個も出てきたよ……。

 金属以外は、全部消化されちまったらしい。

肉も骨も革製の装備もキレイさっぱりなくなっていたよ。カエルの消化液ってのは、すげーもんだぜ。



「その後、どうしたかって? バカ言うなよ丸二日も飲まず食わずだぞ。水袋の水は飲んだし、肉は焼いて食ったよ。あぁうまかったねぇ……」


 ファルカーさんは、そう言いながら、カエルのフライの肉を骨から歯でこそぎ落すようにして食べていた。


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