表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/34

『凪』

僕は、ドラコニス大陸の南東部・シュヴァンツブルグ王国の王都シュヴァンツブルグから南、イーリス平原にある中規模の街・グラナトシュタットにいた。


 グラナトシュタットは、人口6000人と中規模の街だが、ベルンシュタイン商業都市連合の中では、王都シュヴァンツブルグから一番近いため、交易が盛んで情報も集まる場所だった。


 酒場クライノートで、僕は商船の船長であるカサンドラに出会った。

彼女は、女ばかりで営む商船を率いて、シュヴァンツブルグ王国を中心に、小麦粉の交易で稼いでいるらしく、初対面の僕の語る怪談を聞いて、怖がったり笑ったりした上に、チップも弾んでくれて、最高のお客であった。


 そんな彼女が、自分にも一つだけ体験談があるからと語りだした。


「教えてもらう場合、僕が奢ることになっているんですよ」

と告げると、

「じゃぁ、この店で一番安い酒をあなたに奢ってもらうから、あなたが飲んでちょうだい」

と、安酒であるエールを一杯だけ自腹で飲むこととなった。

そんな姿を、彼女は、そこそこの値段をするワインを飲み干しながら笑った。


「それで体験談というのは?」

「怖いというよりも、不思議な話って感じだけど、聞いてくれる?」


そう言うと、彼女は静かに語りだした。



それは私が船長になったばかりの頃だったわ……。

その頃の私は、シュヴァンツブルグの海運利権に食い込もうと、無理な仕事でもなんでも引き受けてた。


 その時は、何故か依頼が余っていたのよ。

後で聞けば、簡単な事なんだけど、その季節は、シュヴァンツブルグ沖に、凪が訪れる時期で、船が立ち往生することが多発すらしいのよ。

そんなことも知らずに、仕事受けちゃったもんだから……本当に大海原のど真ん中で、凪に遭遇して大変だったわ……。


 帆船なんて、風がなければ、ただ海に浮かぶ木の塊だもの……。

一週間以上、まったく風が吹かなくて、私も船員達も生きた心地がしなかったわ。


そんな中、事件が起こったのよ。

一人の船員が、マストの上から、周囲を見回していた私を呼んで叫んだの。


「船長! 大変です! 船長の部屋に、怪しい男がいます!」


私の船は、女しかいない女所帯でしょ?

男を連れ込んだら、男女ともに海に放り込むっていう、掟があるくらい厳しくしてきたから、もう船に男がいるだけで大問題なのよ。

ましてや、自分の部屋でしょ? もしも私が男を連れ込んだなんてことになれば、海に放り込まれるハメになるんだから、たまったもんじゃないわけ。


 だから急いで武装した船員達と共に、私の部屋に急いだわ。

窓の無い部屋だから、船員の一人がドアを抑えていて、中に人がいるなら、出られないように見張っていたらしいのよ。


 私の到着を待って、武装した船員達と共に、私室に飛び込んだ。

でも、誰もいなかったわ……。


 ただ、不思議な事に、私が書いた記憶の無いメモが一枚落ちていたのよね……。

そこには、ただ一言『西に迎え』とだけ書かれていたわ。


その翌日。

いきなり風が吹いたのよ。

東から西に向かう東風がね……。


 そんなに信心深い方じゃないけど、船員達は、もしかしたら水の神・ジャラ様が現れて、お告げなのかもしれないって言いだしたから、とりあえず、一日はお告げ通り、西に向かって進んだわ。


 すると、一艘の小船が、波に流されているのを見つけて、船員達と共に乗り込んだの。

 そこにはルベルンダで奴隷にされていたという父母子の3人が乗っていたのよ。

でも、母と幼い娘は、衰弱しているものの、生きていたんだけど、父親は、すでに息絶えていたわ……。

 そしたら船員が叫んだのよ。


「この人……船長の部屋に入って行った男ですよ!」


 って……。


生きていた母親に話を聞くと、男は「大丈夫だ。もうすぐ助けが来る」そう言うと、今朝がた息を引き取ったっていうのよね……。



「どう? 不思議な話でしょ?」

そう言ってワインを飲みほした。


「その後、そのお母さんと娘さんはどうなったんですか?」

と僕が聞くと、

「今、二人とも私の船で働いてるわ。父親に守られてるんですもの……いい船乗りになるわよ」

カサンドラは、僕を見てほほ笑んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ