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幻想生物に興味を持ち、自称神様の話を聞き始めてから約2時間が経過した。途中他の神様に対する愚痴や、地球のお菓子の話が1時間半以上あったが、説明を聞き終えた。
「つまり要約すると、ファンタジーな生き物は総じておつむが弱くて、騙されまくって数を減らしていき、最終的には絶滅しそうだと?」
「そうなんだよねぇ......ほら、人間って狡猾で悪どくて自己中だからねぇ」
「それを人間である私の前で言うのか、喧嘩なら買うよ?」
自称神様の言葉にイラッとしながらも、心の中で状況を整理していた。
異世界では人間である人族、動物や鳥の特徴を持った人に近い生物の亜人族、鍛治や採掘が得意なドワーフ族、森で自然と共に暮らすエルフ族、魔法が得意で、角や翼を持つ魔人族が暮らしている。人型以外の種族もおり、今回の話の元である幻獣や、動物の姿をして、かつ魔力も持っている魔獣などが挙げられる。ちなみに幻獣と魔獣の違いは、知性を持つかどうからしい。
その世界では各種族が調和をとり生活していたらしいが、ここ数百年、人族が数を徐々に増やし、他の種族のテリトリーをも侵しているようだ。その中でも幻獣は使い魔にしたり、素材として価値が高かったりと一番狙われやすいらしい。
さらに、なまじ知性があるため、よく考えずに人を信じてしまう。それを利用して乱獲されているようだ。
麗奈はその話を聞いて、幻獣頭弱すぎない?と思うと同時にある決断をしていた。
そしておもむろに椅子から立ち上がると、自称神様に向かって宣言する。
「よし、私がその世界の幻獣達を救ってあげるよ!」
「え?元よりそうして貰う予定だけど?」
いい笑顔で協力することを宣言した麗奈はピシッと固まった。
確かに最初の方でそんなことを言っていたのを今更になって思い出したが、2時間も説明をされて(大半は無駄話だが)初めの話など記憶からすっぽりと抜け落ちていた。
自称神様の、大丈夫か?こいつという目線を誤魔化すようにこほんと咳払いをしたあと、「わ、私の決意表明みたいなもんだよ、うん」となんとか取り繕おうとしていた。
耳まで真っ赤にしながらそんなことを言う麗奈に、生暖かい目線が向けられたのは言うまでもない。
「2時間も話が続けば忘れるよね、私悪くないし」とブツブツ言いながらも、椅子に座る。白い○人を食べながら心を落ち着かせて、自称神様に質問を投げ掛けた。
「私が異世界に行くとして、なにか能力とか貰えるの?」
これは転生する側としては重要な問題であった。地球の平和な世界から異世界に行ったとしても生きていける自信がない。
友達の中に異世界転生物の小説が好きな子がいて、話を聞いてる内にある程度は知識を付けていた。
なので密かに私もちーと能力とか貰えるかも、と期待していた。
「うん、もちろん特典はあるよ!自動翻訳と、魔力も適正に応じて与えることになってるからね!」
「うんうん、そこら辺は当たり前だよねぇ!で?他には?」
「......ん?他って、それだけだけど?」
「え?」
「え?」
理解が追い付かなくて聞き返したが、自称神様が首を傾げてさらに聞き返してきた。人生で最も殺意が芽生えた瞬間だったと後に語る。