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渡り烏の異世界渡航  作者: JINGoo
外海紛争編
56/58

48やったな風呂食って田んぼ入ってくる

スマートファルコンが来ませんどうしたらいいですか

スーパークリークとたづなさんも来ませんどうしたらいいですか

お金がありませんどうしたらいいですか

「さて、作戦目標の変更に伴い、大きな軌道修正をせざるを得なくなった」


会議室を仕切るのはキャルレッジだ。レミルが艦長なのに何も言わないのは参謀の様な立場のキャルレッジの提案を待っているのだろう。


「今現在、友軍と考えられるゼイルロン領が他の五つの群領からの攻撃を受けている」


机の上の海図に乗っている駒を動かす。スフェアヴルムはムータスーイ島から見て西南西の方、約十海里程の距離に居る。

そしてムータスーイ島のほぼ中央南寄りの場所に駒が六つ置かれる。


「我が群領は守りを重視している。故に一つや二つの群領からの攻撃であれば一年や二年程度持たせる事は容易かっただろう。だが五つともなれば話は別だ」


ゼイルロン領の副頭領らしいサン・サルソが言うには、寄せ集めであれば一笑に付す程度には守りに自信があるようだ。


「まぁ流石にもう一体大型の海龍が出てくるなんて事は無いと思いたいな。あれの相手はもう無理だぞ」

「それは無いだろう。海龍王はそもそもの数が少ない。何故彼奴等が使役できたのかは知らぬが、二頭目が居るとは考え難い」


確かにキャルレッジの言う通り。あんなのがもう一体出て来たとしたらそれはスフェアヴルムの轟沈を意味する。

何せあの海龍王とかいう大型の海龍の鱗はスフェアヴルムに搭載されている魔導砲を一切受け付けなかった。テルミットやダイナマイト等の強力な物理火器でなんとかなったが、それらも尽きた今、もう一体が出てきたらどうしようも無いのだ。


「恐らく敵対勢力、仮に諸侯群領連合としようか。それらはこちらを補足していると見て間違いないだろう」

「そうだ。我々ゼイルロンの民程この辺りの海に詳しいわけでは無いだろうが、それでも索敵網は敷かれているだろう。現にその耳に掛かったからこそ、海龍王が出て来たのだろう」

「そうとなれば作戦の練り直しが必要か・・・」


レミルがまた頭を抱えそうになっている。

最初の作戦では示威行動の成否が結果を分けるのだが、今の状況では威嚇攻撃など意味をなさないどころか、余計に刺激してしまうだろう。

下手を打てば捕虜になっているかもしれない島民に対する虐殺なんかもされてしまうかもしれない。

そうなれば仮にムータスーイ島を奪還できたとしても島民やゼイルロン領の方々の心情は最悪だ。


「よし、ではこうしよう」


キャルレッジの提案した案はこうだ。

先ず俺がスレイトリオンで島の上空へ向かい、目立つ行動をして、諸侯群領連合軍の注意を引く。そこにキャルレッジがサイラフィスに乗り、低空から侵入し、強襲する。

強襲成功の合図が出れば俺も攻撃に参加し、スフェアヴルムからの支援砲撃も行う。

突如陣中に現れた巨人と、見えない距離からの砲撃で指揮系統は大混乱になるだろう。

問題は、俺の目立つ行動だが・・・。


「あるぜあるぜ!とびっきり目立つとびっきりのとびっきりがな!」


やかましいのが出た。


「何者だ!」

「ふっふっふっ・・・この紋所が目に入らぬか!」

「もん・・・?なんだか知らんが貴様!乗船者のリストに載っている者では無いな!」

「何を隠そう俺がかの伝説的な人物!トムじいさんである!」


言動は律儀ではない様だが、律儀に偽名を名乗っている。まあメカマスターファントムとか口走らなかっただけ良い事なのだろう。


「トムじいさんと名乗る人物はこの艦には乗っていなかったはずだ!」

「まあ落ち着け。銃を突き付けられちゃビビッて話もできやしねぇ」

「じゅう?・・・何者だと聞いている!」

「落ち着いて下さいレミル艦長殿」

「なんだキャルレッジ。知り合いなのか」

「まぁそんな所です。正直あまり会いたくはなかった者ではないですが、この局面においては有用かと」


ハイテンションおじいちゃんが後ろでイエーイイエーイやってる間にキャルレッジによるレミルの説得が進んでいる。

おじいちゃん、ハジケは昨日やったでしょ。


「で、その目立つとびっきりというのはなんだ」


レミルが改めて問いだたしたので、立木を大人しくさせるためにかけていたアルゼンチン・バックブリーカーを解く。


「フフフ・・・見て驚くなよ、これだぁワントゥースリー」


ふざけながら懐から取り出したのは置かれた床からおよそ立木の胸の辺りまである位の肌色の球だ。これ見よがしに導火線の様な物が付いていて、表面にはこちらもご丁寧に四尺と書かれた札も貼られていた。

どう見ても花火玉である。


「まて、そんなものどこに仕舞っていてどうやって持ち込んだ」

「こまけぇこたぁいいんだよ!こいつを上空にバーンと打ち上げりゃぁ否が応でも目立つだろうさ」


花火玉をぽんぽんと叩いてゲラゲラ笑う立木。艦橋のスタッフは若干引いていた。


「・・・まぁキャルレッジが有用と言うんだ。多少はあてになるのだろうが・・・うむ。まぁいい、それを使おう」


こうして、ここにムータスーイ島大花火大会の開催が決定したのである。


・・・・・・・・・


そんなこんなで俺は今、スレイトリオンに乗ってムータスーイ島上空を旋回している。スレイトリオンは飛行形態でもマニピュレーターを使えるので両手に四尺玉を持ってひたすらに作戦開始時刻を待つ。


「よう相棒。まだ生きてるか?」

「待ちくたびれて墜ちそうだ。危うく冗談言う奴を撃ち落としそうになる位にはな」


今ムータスーイ島の上空に居るのはスレイトリオンだけではない。立木が腕によりをかけて自分用に改修したシールブルス改めバンディットだ。此方はスレイトリオンと違い、変形こそできないものの、概念合金の効果によって自在に飛行する概念を取得していた。

それゆえ航空機然とした変形をするスレイトリオンと違い、バンディットはそのままの形で水平飛行からホバリングにより滞空までできる。


「いま通信が入った。サメが飛んだそうだ」

「よし、じゃあやるか」


なぜバンディットとそれに搭乗した立木が此処にいるのかと言うと、通信の中継の為だ。

バンディットは概念合金の効果によって重量制限など無いに等しい。それによって得られるぱっと見積載過多とも言えるそのバックパックは大型無線魔導通信の為の装置だ。

短距離での通信ならばヘッドセット型の物で事足りるが、長距離であれば大気中に含まれる魔力や、そのほか色々な要因でノイズが混ざり、聞き取れなくなってしまう。

そこで、安直な考えであるが、装置自体の出力を大幅に上げてしまえばノイズも少なくなるのではと仮説を立てた立木が一晩どころか一時間足らずで完成させたのがバンディットとそのバックパックである。


「四尺玉だぞぉ!」


バンディットが器用に四尺玉でお手玉をしている。

まさかその四尺玉からプラズマフィールド出したりしないだろうな。


「投下開始」


気を取り直して、四尺玉に着火する。スレイトリオンの手首装甲の内側にはシリンダー式に収められた魔道具が搭載されており。万が一撃墜なんかされて戦線離脱して、回収すらできない場所に墜ちた場合の備えで着火する魔道具や水を濾過する魔道具などのサバイバルキットが積まれている。今回はそれを四尺玉の着火に使った。

投下された四尺玉は暫く落下した後パラシュートを開いた。


「花火じゃないのか?」

「花火さ」


バンディットもお手玉にしていた四尺玉を順次地表に向けて投げている。それらも着火から暫くするとパラシュートが開いた。


「フレッシェットって知ってるかい?兄弟」

「鉄の矢をショットガンみたいに撃ち出す奴だろ?聞いた事はあるが・・・まさかあの四尺玉はフレッシェットなのか?」

「フッフッフッ・・・実はだな。あの四尺玉には特殊な加工の施されたスライムと砂が詰め込まれているのさ。加工したスライムは一定の刺激を与えると爆発する・・・兄弟もよく知ってるだろう?」

「それで矢を降らせるって言うのか・・・ん?砂?」

「そう!爆発させた勢いで大量の砂を上空にばら撒いてやるのさ!何人かは上を向いてて目に入るかもしれないがそれはまぁ致し方ない犠牲ってやつさ」

「フレッシェット関係ねぇじゃねぇか」


駄目だ。こいつといると流れをつかめない。

立木のとぼけた言動に辟易していると突然、投下した四尺玉の一つが爆発した。


「うおっ!?」


それと同時に急激な気流が発生し、機体が揺さぶられた。


「なんだ!?」

「やっこさんこっちを見てるようだぜ。もいっちょ来るぞ!」


機体の制御を取り戻したところで、また四尺玉が一つ爆発し、気流が発生した。


「爆発と気流で砂が上に舞い上げられてるな。これじゃぁ密度と速度が足らん」

「じゃあどうするよ!」

「マルチプルランチャーを使え」


立木の言う事に従い、変形し、マルチプルランチャーを展開する。空爆の訓練などしていないし、そもそも飛行形態で使用できるようにはできていないので、飛行形態だと使えないのだ。


「対空砲か?それらしい物は見当たらないが・・・」


変形を完了し、機体をホバリングさせながらマルチプルランチャーの薬室チャンバーにあらかじめ用意されている術式弾の弾倉をセットし、照準器を覗き込む。

ムータスーイ島の広場にそれらしいものは見当たらず、他は雑木林の様になっている。居住地域が一に森が八、残りは海岸線と言った所だ。火山島ではない様で、島全体は平坦な地形だ。


「広場に無いとすると・・・射点を変えたか?」


見えない射手に手をこまねいていると、また一つ四尺玉が落とされた。

弾は見えない。


「よく目を凝らせよ兄弟。あそこだ」


バンディットが森の一部を指差す。そこだけ妙に倒木が多い。


「奴さんはあそこから空気の弾を射出してるんだ」


言うが早いか、また一つ四尺玉が落とされた、後二つだ。

そして、落とされる直前にバンディットが指差した場所で木が大きく揺れていた。

確信を持った俺はその場所に照準を合わせる。弾倉に装填されている術式弾は氷の柱を打ち出す物だ。


「狙撃手は近づけばチョロいって言うが・・・射点を変えない狙撃手もチョロいもんだな」


マルチプルランチャーの引き金を引くと、チャンバー内に魔力が供給され、術式弾が射出される。

術式弾は銃口を飛び出すと、それを核として術式が発動する。直径十センチ、長さは六十センチ程の氷柱が音速に迫る速度で打ち出された。

位置エネルギーと運動エネルギーを大量に内包した氷柱は目標の地点へ着弾すると衝撃と共に砕け散った。


「やったか!」

「やったな風呂食って田んぼ入ってくる」


着弾の衝撃で舞い上がった土煙が落ち着いてくると、様子が伺える。

褐色肌の屈強な禿げ男が気絶していた。


「王大人死亡確認!」


バンディットが空中で腕を組んだまま決め台詞を吐いた。立木にとってはあれが決め台詞らしい。

どう聞いても生存フラグだ。これはきっと生きているに違いない。


「サメより通達だ。チェーンソーを拾ったってな」

「じゃあこっちから返礼だ。林は更地にした」

「おっし!マグロより報告。林は更地にした。繰り返す、林は更地にした」

「対空砲火ももう無いし、楽な仕事だったな」


実際、敵の目を此方に向けることが俺達の目的だ。後は上陸したキャルレッジがどうにでもするだろう。


「作戦通り、俺達も降下して制圧に加わるぞ」


スレイトリオンの変形機構は未だ仮設の段階なので、一度人型に変形してしまえば再度の変形が出来ない。そして人型だとホバリングするにしても魔力消費が激しく、出力を絞れば少しずつ降下してしまう。全身のスラスターによって方向転換や多少の移動はできるものの、慣性を使わずに長時間の空中戦をする事は難しい。

なのでバンディットに支えて貰い、広場を目指して降下する。

再度の対空放火を警戒しつつ降下していると水平線の向こうから色鮮やかな法弾が無数に飛んできては広場の回りに着弾する。スフェアヴルムからの法撃だろう。制圧射撃が始まったのだ。


「勝ったな」

「あぁ」

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