46間に合えば問題は無い!
海洋国家群の言語に掛かる手間が大きいので早いとこなんとかしてやりたいです
やって来たのは第三格納区画。ハンガーに懸架されているのはスレイトリオンだ。
何故シールブルスより損傷の酷いスレイトリオン方が先に修理し終わっているのかと言うとだ。スレイトリオンに限った話ではなく、他の三つの機体もパーツ別でモジュール化されているのだ。
それでシールブルスは予備パーツが無く、渋々失った部分を修理せざるを得ないのだが、スレイトリオンには予備パーツがあったのだ。
それにより、改修までもが迅速に進み、ゼアディーチェ搭載にまで至っていた。
スレイトリオンはサイラフィスと違い、細身の機体な上に、空気力学を考慮した外装の改修によって飛行時間も伸びている。らしい。
らしいと言うのも実際にスレイトリオンは飛んだことが無いのだ。
サイラフィスは幾度かの試験飛行の末に出来上がった試験機の面もあるのだが、こちらは完全にぶっつけ本番だ。
「まぁ多少操作は知ってるし、成り行きで搭乗する主人公の少年兵じゃないだけマシだろ」
操作系はラインデインとほぼ同様だが、他の機体と違い、スレイトリオンにしか搭載されていないシステムがある。
魔導術フュージョンシステムと呼ばれるそれは、機体とパイロットを物理的に接続する事によって操作性の向上を目的としたもので、早い話が阿頼〇識システムだ。A〇Sと言ってもいい。
本来はシェーレの様な特別な者にしか扱えないらしいので今搭載されているのは俺の為に調整された簡易版だ。
コックピットのシートに座りハッチを閉める。同時に操縦桿を握るとその根本から伸びて来たケーブルが手首に刺さる。その他にもシートやペダルの下から次から次へとケーブルが出て来ては刺さる。魔力装甲なので痛みは無いのだが、不思議な気分だ。
まるで魔力装甲の上にもう一つ魔力装甲を被っているような気分になる。
「スレイトリオン改!出るぞ!」
格納庫上部のハッチが開いて行き、機体がハンガーごとせりあがる。
操縦桿を引いたりペダルを踏みこんだりして動作の確認をする。
調整不足かと思ったがどうやら機嫌は良いようだ。
ハンガーからパージされると同時に魔導ブースターを起動する。
「グォ!?」
想像を絶する加速に、思わず操縦桿を手放してしまいそうになる。
フュージョンシステムのおかげで制御はできているが、それでも操縦桿を握っているのといないのではイメージの差が大きい。
俺は天才では無いのだからコックピットで座禅を組んだところで機体が動くわけでも無いの。
伝説の五秒なんて素人の俺には無理な芸当だ。
だから操縦をするイメージを高めるために操縦桿は必要な物なのだ。
「暴れ馬め・・・ゲット〇シンじゃねぇんだぞ・・・!」
操縦桿をしっかりと握りなおし、機体の制御を行う。
幸い甲板から海上に放り出されるなんて事は無かったが、危うく艦橋に突っ込む所だった。
魔導ブースターは全力稼働させれば魔力プロペラントの大きいサイラフィスと違い、一時間も持たないだろう。
だが飛行の為には全力稼働の半分以下の出力で済む。
「騎兵隊なんて大それたもんじゃないが・・・間に合えば問題は無い!」
武器は標準武装の短槍二本に残っていたダイナマイト弾頭をそれぞれ一本ずつ括り付けた物だ。
本来は投擲する装備の為、予備の短槍を懸架する為のハンガーが肩と腰に合計で四つあるのだが、今回は別の物を搭載している。
「スレイトリオン!アガマか!」
サイラフィスは重装甲の為、軽量なスレイトリオンよりも遅い。機体の制御さえできれば追いつくなど造作も無い事だ。
「突破口を開きます!後に続いて下さい!」
魔導ブースターの出力を上げ、吶喊する。目標は先のダイナマイト砲撃が命中した場所だ。血は止まっているが、鱗が剥がれ落ちている。
もちろん海龍も無防備で受ける訳が無い。体をくねらせて目標を付けにくくする様に動く。
さらにその巨体はその質量だけで武器となる。巨体に見合わないスピードで振り回される頭部が鞭の様にしなり、スレイトリオンにめがけて振り下ろされる。
それを機体を横に滑らせるように回避し、振り抜けた頭部に両肩のハンガーに装着されたポッドランチャーが狙いを定める。
「今週のビックリドッキリメカだ!」
ポッドランチャーから射出されたそれは、円筒形の小さな容器の連なった物だ。鳥餅の付いたそれが海龍の頭部にへばりついて行く。
「死ななくても驚く位はしてくれよ」
そこに腰のハンガーに懸架された二門の小型魔導砲で砲撃する。
火属性の術式が発射され、吸い込まれる様に海龍の頭部、円筒形の容器が付着した場所に着弾する。
着弾後すぐに炎が巻き起こり、海龍の頭部を焦がしていく。
突然の炎上に驚き、悶える海龍。
その隙に小型魔導砲を合体させ、長砲身にする。実はこの小型魔導砲は改造品なのだ。
砲身にはライフリングを施し、特別な金属を使用する事によって魔力の流入量を変更する事で砲口径を変更する事が可能にする事ができた。この特殊な金属はメグファインの秘蔵品なのだが、形状記憶合金の様な性質を持っているのだが、その上で質量の変動無しで体積が増減し、その上で強度は変わらないという優れものだ。加工するのに最初は苦労したが、魔力に反応して形を変える事に気づいてからは速かった。
この金属の存在によって、女の子以外ならなんでも撃てるマルチプルランチャーに変形可能なのだ。ちなみに、女の子でもちぎって丸めれば撃てるぞ。
持ってきた短槍を装填し、装薬チャンバーには爆破術式を込め、鱗の剥がれた場所に照準を合わせる。
「ひっ飛べ!」
魔導砲に装填された短槍がチャンバー内で起動した爆発術式による爆圧を受けて砲身内で加速する。
回転の加えられた短槍は砲口を飛び出し、亜音速で照準した場所へ飛翔していった。
スフェアヴルムからの砲撃では距離が離れすぎて弾速が落ちていたが、この距離からであれば表皮程度は貫通するようだ。
短槍が体内に入り、内部で爆発する。
「これは子供には見せられんな。・・・突破口どころか仕留めてしまったではないか」
遅れてやってきたサイラフィスが腹に大穴の開いた海龍を前に停止した。
「一応念には念を入れておきましょう。この距離でも三本なら風穴を開けられるでしょうし適当に狙って下さい。私は向こうをやります」
キャルレッジは出番を取られたのが悔しかったのか呆れたのか。海面に浮かぶ海龍に降り立って行った。
俺も海龍の頭部へと近づいて行くと、まだ燃えていた。
先程の円筒形の容器だが、中身はナパームとテルミットを交互に詰めた物だ。ナパームはナフサに魔力を通したらなんかドロドロになったのでそれを使っている。テルミットはでん〇ろう先生直伝の酸化鉄とアルミの粉末を混ぜた物だ。アルミは無かったので作ったが、酸化鉄は艦内の廃材置き場に文字通り腐る程あったので、それを拝借してきた。
鳥糯はなぜか備品にあったのでそちらから拝借してきた。もちろん酸化鉄もそうだが許可はきちんとネルレイアに出してもらった。
「ちょっちやりすぎだったかな・・・、短時間とは言えテルミットだもんなぁ」
テルミットの付着した部分の鱗はものの見事にボロボロに砕けたり溶けたりだ。見るも無残とはこういう時に使うのだろう。
そんなボロボロの頭部はいったん置いておいて、海龍の口を無理やり開いて、そこにマルチプルランチャーを突っ込んで残った短槍を発射する。
途端に頭部がはじけ飛び、あたりの海水が赤く染まっていった。
そして胴体の方でも爆音がしたのでサイレスが爆破したのだろう。
死体を弄ぶ趣味は無いのでさっさと撤収してしまおう。
・・・・・・・・・
「ワイシュクソクツラソスマゾ・・・」
艦橋に戻ってみれば、海洋国家群の青年が啞然とした顔で海上に未だ浮かんでいる大型海龍種を見ていた。もしも俺が霊の見える体質だったなら、口から半分くらい白いのが出ているのが見えたかもしれない。
「ワイシュクソクホヤ?」
「スイジンシュクナタトソホチボホナヘイネフシュクラリダ。ワネハツワイマハススゲヤノントイリブトグンショクトソナチワチハマイヤズダ」
「なるほど・・・どうにもきな臭くなってきましたね」
キャルレッジが何か納得したような表情でうなづいた。
「我々は海洋国家群の領地争いに本格的に巻き込まれたようですね」
もしや先程倒した大型海龍が何か重要な守り神だったとかそういうアレで、それを倒した俺達は最早敵対しかないという事なのだろうか。会話が分からないと話を理解できないが、そう納得する何かがキャルレッジにとってはあったのだろう。
大陸語が聞き取れた為に油断していた・・・。海洋国家群の言葉も少しは学んでおくべきだったか。
「とにかくこれでムータスーイ島奪還は絶対条件になりました。サン・サルソさんはこちらの情報源になってくれるようですし、奪還後は島民との折衝もしてくれることでしょう」
「ワイシュクソクツラソチラトダ、イラチワラカフタイ。アラチヨヒョクショウチコク」
レミルは頭を抱えていた。当初はあくまで補給拠点としてのムータスーイ島奪還の為にサン・サルソサンに手を貸すだけのつもりだったのに、気が付けば海洋国家群のいざこざに巻き込まれてしまったのだ。誰だって頭を抱える、俺も同じ立場だったら頭を抱えたかもしれない。
「・・・予定は変わらん。我々はあくまでも補給拠点を確保する為にムータスーイ島をゼイルロンの手に戻す。それだけだ」
諦めたのか、自分を納得させるように言った。
「微速前進。目標、ムータスーイ島。各員は警戒態勢を維持せよ」
レミルの号令でスフェアヴルムは動き出した。
「キャルレッジとアガマはそれぞれ機体の整備をしておけ。次にあんなのが出てきたら太刀打ちできんかもしれないがな」
確かに、先の戦闘でダイナマイトは使い切った。もう一度作るには相応の時間と魔力が必要になる。スレイトリオン改の肩部ポッドランチャーも予備は無いので別の装備を考えねばなるまい。
・・・そうだカタパルトだ。このスフェアヴルムにはカタパルトが無いのだ。
やはり出撃の時に初速を付ける意味でもカタパルトは必要だろう。海上で改装できるかは分からないが、ネルネイアに打診しておこう。
ガイドビーコンなんか出すな!って言ってみたいしな。まぁ言ったらスフェアヴルムが沈む時なんだが。
と、そんなくだらない事を考えていると第三格納庫区画に到着した。
「お、よぉ!久しぶりだな!兄弟!」
そこには何時ぞやのローブ男もといボロボロのワイシャツとジーンズ男が、作業台近くの椅子に座っていた。
「藤村か」
「おっほ!態度冷ったいねぇ」
おどけたような態度をとる藤村立木は、どこからともなく酒瓶を取り出してあおった。
「海龍王を殺すたぁたいしたもんだ」
「スレイトリオンがあったからな」
今は格納庫のハンガーに懸架されているスレイトリオン改を見上げる。先の戦闘で損傷こそしなかったものの、肩部ポッドランチャーは使い切りだし、魔導ブースターを目一杯稼働させた上で、マルチプルランチャーも使ったので魔力残量が少ない。どちらも魔力消費の大きい装備だ。改良が必要だろう。
「シェーレ用に調整したのをデチューンしたんだろ?」
「何故それを?」
再び酒瓶をあおり、一息で残り半分以上はあった中身を空にした藤村立木もスレイトリオンを見上げる。
「なんてったってこいつらは俺が作ったんだ」
「やっぱりか」
「あれ!?案外驚かねぇなぁ!」
驚くも何も。大陸の技術ツリーにはそもそも概念や理論の段階で存在していなさそうな技術が、突然無から生えているのだ。不思議に思わないわけがない。
「現代日本で無理な物を、いくら魔力とかいう万能エネルギーがあるかと言って、この星の技術力じゃ作るどころか想像する事も難しいだろ」
「・・・ま、そうなんだがな」
椅子から立ち上がった藤村立木の手には酒瓶は無かった。
「俺も手を貸そう。ノーチラスは、少々やりすぎた」
何時の間にか作業台の上から端材の鉄板を手に取った藤村立木は、その鉄板の表面を撫でる様に手を動かした。
「流石に星の環境を変えるのは・・・な?」
撫でていた鉄板をこちらに見せてくる。
それは前世での日常生活でよく見た事のある物になっていた。
「液晶タブレット擬きだ。作業効率を上げてこいつ等を改良してやるよ」
気が付いたらロボット物になってるんですけど主にナイツ&マジックの影響です
自分だってロボットを動かしたかったんです




