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渡り烏の異世界渡航  作者: JINGoo
大陸動乱編
42/58

35凄い百面相ですね

春眠暁を覚えずと言える時間も残り少なくなってきましたね

「とても美味しかったですね!隊長」

「あぁ、そうだな」

「美味しかったです。あんな料理は初めて食べました」

「はい、私も初めてでした」

「おいしかった」


各々料理の感想を言いながら店を後にした。因みに個室だったのでそれ程マナーに気を付ける事も無かったが何と言うか・・・フレンチ料理特有のとも言うべき皿の端っこに飾りの如く乗っていたソースは何を付ければとか考えると訳が分からなくなる。これだから格式高い食事と言うのは今一好きにはなれないのだ。


「どうだレゴラウス、あれが料理と言う物だ。断じて食材を丸焼きにする事だけが料理ではない」

「わかりました。今後は精進していきます」

「よし、では解散だ。各自自由行動だ」


隊員全員に指示を出し、俺はアイルネの入院している町医者に向かう。途中の露店で果物の詰め合わせ的な物を調達してのんびりと歩く。明日当たりにインカム擬きをメグファインの所に持って行くのもいいかもしれない。

少し歩くと町医者の所に到着した。町医者とは言え入院設備を整えているのでそこそこ腕の良い医者なのだろう。

扉を開けると手伝いなのか制服を着た女性が居た。


「試験小隊のアガマだ。入院中のアイルネの見舞いに来たんだが・・・」

「第四技研推薦のあの・・・わかりました案内しますのでこちらへ」


女性に案内されアイルネの病室に入る。この建物では少ない個室だ。


「調子はどうだ」

「隊長・・・はい、なんとか。右腕の骨にヒビが入っていたのとあばらの骨が幾つか折れていた位ですね」

「すまないな・・・俺がもう少し気を付けていれば・・・」

「隊長のせいではないですよ。私が油断していなければ・・・」


ベッドの傍にある棚の上に果物の詰め合わせを置く。そういえば空から見たときにアイルネに水がまとわりついているように見えたあれは何だったのだろうか。あのラフテルの変異種はそんな能力は持っていなかった様に見えた。サンプルを送った第四技研からの報告にもラフテル種の異常変異個体であるとのことだ。


「なあアイルネ。お前があの時纏っていた水がなんだったんだ?」

「あぁあれですか?そうですね・・・桶に一杯の水を持ってきてくれますか」

「あぁ」


部屋に据え置かれているそこそこ大き目の桶に水を入れる為に水場に向かった。アイルネの病室が一階でよかった。幾ら膂力があるとは言え重たい桶を保持して階段を昇るのは御免だ。まだ魔力推進での飛行に慣れていないから飛んで運ぶにも羽を出さねばならない。そうなると問題や火の粉が降りかかるかもしれない。余計な事はしないに限る。


「手伝いましょうか?そこなお嬢さん」


水を入れた桶を運んでいると後ろから声をかけられた。桶を振り回して振り返るのは危ないので首だけ振り返る。

絵に描いた様なキザな二枚目といった感じの男が居た。そこそこ良い服を着ている様だが・・・どこぞのボンボンなのだろうか。そもそもこんなおっさんを捕まえてナンパのつもりか?自慢では無いが魔力装甲の外見は美少女一歩手前だと自負しているので仕方ないと言えば仕方ないのか。


「どちら様か知らないが、貴方の手を借りる程では無い。ナンパなら他の女性に当たるといい」

「あぁ・・・そんな棘のある反応も私好みです。どうかこの私にそれを運ぶのを手伝わせては貰えないだろうか」

「折角の好意は有難く受け取るが断らせて貰う」

「それは残念でした。私はミーム・マイネと言います。またの機会にお会いしましょう」


やけにあっさりと諦めたキザな男はアイルネの病室に向かう俺とは反対方向へと歩いていった。途中ナースになにやら話しかけていた様だがそれはもう見事な音を立ててビンタを貰っていた。なんなんだあいつ。

それはそうとアイルネの病室に到着した。


「アイルネ、これで足りるか?」

「十分です。・・・では」


アイルネが桶に向かって座ると桶の水面がざわめきだす。


「アールヴ、出てこられるか?」

『これだけあればなー』


桶の水が途端にスライムの様に動き出して三十センチ程の大きさで人の形を取る。直径五十センチ、高さ十五センチ程の桶一杯に入れた水が綺麗さっぱり無くなった。


『貴方にちゃんとした挨拶をするのは初めてやんなぁ。どうも初めまして、水の精霊させて貰ってます、アールヴって言います。以後お見知りおきをー』


アールヴが似非関西弁気味な口調で挨拶をしてお辞儀をする。小さい体で桶の中でお辞儀をするのは少し滑稽な姿だ。まるでグレードアップした一寸法師の様だ。


「お初にお目にかかる。私はアガマと言う。まずはアイルネの身を預かる者として彼に怪我をさせてしまった事に謝罪をさせてほしい」

『ええてええて。あんときは近くにいい塩梅の水溜りも無くて私も直ぐに出れなんだからなー。お互いの力量不足やったって事にしよや』

「そう言って貰えて有難いよ」


会話を終えるとアールヴの体が解け始め、暫くすると桶の半分程の水になった。


「これだけの水量でも長時間維持できないのが難点なんですけどね」

「それでもすごい事じゃないのか?」

「・・・精霊使いはそもそもの数が少ないんです。だからこういうのが凄いのかとかどうすればもっと精霊を上手く扱えるのかとか分からない事だらけなんです」


アイルネが半分になった桶の水を見ながら呟く。あれだけの量の水を使ってこの短時間なら戦闘に使うのは難しいのかもしれない。ただ水が大量にある場所での戦闘でなら強い味方になるだろう。

ただ精霊の種類が水だけとは思えないし絶対数が少ないとは言え敵対する勢力に居ないとも限らない。そしてそれが水の精霊であるとも限らない。

やはり情報収集が必要だろうか。

考えを巡らせていると病室のドアが開けられた。


「アガマ様」


ドアを開けて入って来た人はフード付きのローブで全身を隠していた。警戒して身構える。この街に来たばかりの頃に捕縛された事もあるし怪し過ぎる外見だ。警戒しない方がおかしいだろう。あのヒウスとタッキーとかいう奴らが直接接触してくる可能性もあるのだ。


「アガマ様、私です。そんなに警戒しないで欲しい」


ドアを閉めた後にフードを取ると見た事のあるキチン質の様な甲殻に触覚の様な物が付いた頭だ。インパクトが強いのでそうそう忘れる顔でもない。


「マステヌさんか」

「えぇ、今回は第四技研の使いとして来ました」

「またなんかあったから来いってか?」

「えぇ・・・まぁ・・・はい」


畜生!これで何回目の呼び出しだ!今日は休日にするって決めてたんだぞ!このやり場のない怒りをどこにぶつけろって言うんだ!メグファインか!?メグファインにぶつければいいのか!?そりゃそうか!呼び出してきたのはメグファインだし一回殴る位構わねぇよなぁ!俺の拳は男女平等の拳だし今の姿は女性だ、殴っても文句なんてそうそう言われねぇよなぁ!

・・・いや言われるか。


「えーその・・・例の弾頭に関する発見がありまして・・・それに関して」

「あぁ分かったよ・・・行ってやるよ・・・行って何度も呼び出した事を後悔させてやる」

「一部が魔法鋼鉄で作られている上に精巧に偽装されたエルフ文字で魔導防隔貫通術式が刻まれていたのが確認されたのと一部の内容物に不自然な点が見つかったのでそれに関する意見が欲しいと」

「エルフだとぉ!?」


エルフと来たかこの野郎・・・。エルフと言えば耳長で魔法を扱うのが上手で弓矢に秀でた種族だろ?エルフが今回のいざこざに関与しているのか?していないにしてもあのメグファインがエルフの術式だと判断したのだから間違いである可能性は少ないだろう。

ならば異種族が好きな者としてエルフの事を学べるチャンスは棒に振るわけにはいくまいて!


「凄い百面相ですね、アガマ様」

「表情がコロコロと変わっている・・・大丈夫ですか?隊長・・・」

「あ、あぁ。大丈夫だ。それよりも、エルフがあの弾頭に関与していると言うのは本当なのか?」

「術式が使われていたというだけでそこまで飛躍するのですか?」

「え?」

「エルフの術式が使われていたというだけでエルフによる魔術が施されていたとは言ってませんよ?」


なん・・・だと・・・?まあそれでもエルフの術式だ。学べる物はあるだろう。メグファインも居るだろうしこれはこの世界の魔術体系の一端を垣間見るいい機会だ。そう思うと先程の怒りも多少は留飲が下がると言う物だ。それに向こうにはセレイムも居る、丁度いいのでついでに迎えに行こう。


「よし・・・アイルネ、すまないが見舞いはおしまいだ。何もしてやれなくてすまないな」

「いえ。医者によればあと数日で退院できるそうなので問題はありません」

「そうか・・・今の所任務も依頼も無いからゆっくりしっかり治しておけ」

「わかりました」


アイルネの病室を後にして第四技研への道をマステヌさんと歩いて行く。マステヌさんは病室に来た時同様ローブとフードで全身をしっかりと隠していた。


「あぁそうだ。言い忘れていました」


ふと思い出したような声を上げてローブの隙間から一枚の羊皮紙を手渡してきた。


「貴方が森で回収した欠片の解析が進んだので分かった事の報告だそうです」


羊皮紙を受け取り開けようと思い封蝋を割ろうとしてもびくともしなかった。


「一応まだ機密扱いなので屋内の特定の人物のみが存在する場所でだけ開封できる様になっていますのでお帰りになった後で部屋で開いて下さい」

「む、その言い方だとその特定の人物というのが俺と言う事になるのだが?」

「その通りです」


それなら第四技研に着いた時にメグファインに直接聞けば早いのでは?俺は訝しんだ。

だがまぁ後でじっくり見れるようにと言う配慮なのかもしれないし一応受け取っておく。


そんなこんなで第四技研に着いた。相変わらずの面倒くさいセキュリティにまみれた出入り口だが、それなりに重要度の高い施設なのであろうしまぁ致し方ない。


「遅いぞマステヌ、何をして居ったのじゃ」

「申し訳ありません。少々アガマ様を探すのに手間取りまして」

「まぁまぁいいじゃないですかめぐっちゃん。ますっちゃんも反省してるし」


第四技研のメインフロアで俺を待っていたのであろうメグファインの隣にもう一人いた。なんか猿と狐の混ざった様な仮面を付けているが声に聞き覚えが有るような気がする。


「あがっちゃんとは初顔合わせだね。どーもセーニャイちゃんでーす。いごおみしりおきをー」


セーニャイと言えば初めて此処に来た時に部屋に籠っていた人だ。声に覚えはあるが確かに顔を合わせた事は無い。

だが仮面越しに顔合わせと言うのも変な話だと思うのだが。


「さて、まずはコイツじゃな」


メグファインがテーブルの上に乗っていた弾頭の所謂風防の部分を指差した。


「これにはエルフの刻印術式が刻まれておった。それも魔導防核に反応するタイプの物が幾重にもな」

「つまり初めから対魔導防壁用に開発された物だったと?」

「そうじゃ」


メグファインの説明によるとこの世界での戦闘では魔導防核を展開する前哨部隊をそれぞれ出し合いその後ろから魔導に魔術に物理にと色々な手段で相手の魔導防核を破る戦法が主流の様だ。

中には今回の様に魔導防核を貫通させるための刻印や魔導具を持って突入する事もあるが、刻印術式を使える者の少なさや魔道具のコスパ等が理由でほぼ使われる戦法では無いとの事だ。

そして今回の襲撃に使われたこの弾頭全てに刻印が施されていたと言うのはそれなりに準備されていた計画的な行動である可能性が高い。ただの実戦試験にしてはお粗末な結果であるし、接触信管では無く時限信管を採用し、研究機関への被害を目的にしていたと言うのも頷ける。そしてついでに帝国の部隊に多少でも被害が出れば御の字と言った所だろうか。


「つまりは・・・」

「うむ。お主が考えている通りの可能性がある」


元よりこれは一種の宣戦布告であったのかもしれない。


「西側諸国はこの帝国相手に戦争をおっぱじめる腹積もりやもしれぬ」


・・・・・・・・・


西側で最も大きく、大陸でも二番目の大国であるスヴェラニカ王国の王都王城その一室、帽子を目深に被った男と伝令兵が話し合っていた。


「準備はどうなっておる」

「はっ!各員、配置についております。連合部隊も随時作戦を説明し、前線に投入可能であります」

「よろしい。今までたっぷりと時間をかけたのだ。勝てない戦ではない」


伝令兵は部屋を出て行った。それを確認すると男は帽子を取った。


「もうすぐだ。もうすぐであの御方の悲願が叶うのだ」


短い銀髪と長い耳が露わになり眼鏡の内に秘めた碧眼を輝かせる。


「このモーリガン、その為なら命すら捧げ、あの御方への祈りを続けましょう」

家の庭に油田湧かねーかなー!とか考えながら今日も金欠に喘いで生きています

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