3依頼、受けますか?
速報。俺を拾った奴等はお飾りの可能性有り。
まぁ、だとしてもどうしようもないけど。
「さてと・・・アガマ。お前はなにができるんだ?」
「さぁ」
「さぁってお前・・・自分の能力くらい把握しとけよ」
「そんな余裕はなかった」
実際そうだろ?俺が俺の体について知ってる事と言えば簡単に死ねない事と損傷した端から再生する事。その時に凄く腹が減る事ぐらいだ。
「ま、これからじっくり調べれば良いさ」
調べるってもどう調べるんだろうな。なんかこう鑑定的なスキル的なのが有るんだろうか。魔物とか魔術導師とか居る訳だしきっと魔法はあるだろう。ならそういうスキル的なのがあってもおかしくない。
「たのもー!」
おおっと?類い稀なる転生なんて事したから主人公認定されてハプニングが向こうから転がり込んでくるってやつかなー?
「おーおーレヒド!久しぶりだな!」
「ハヴェルのおじいちゃん!久しぶりー!」
なんだ知り合いかよ。これじゃハプニングなんて期待できないな。どう見たって何かを頼みに来た様子じゃない。
「あのねー。トネリコが育たないんだってー」
「おーそうかそうか。そいつは一大事だなぁ!」
トネリコってあれか?世界樹とか言われてるあれ?
「よし!おじいちゃんがなんとかしよう!育たなくなったのはどこの村だ?」
「北西の漁村」
「そうか。よし!」
世界樹とか聞くとヤバい案件な気もするけどこんな気軽なものなのか?それとも普通にトネリコって種類の植物なのか?
「行くぞ、アガマ」
「は?」
「は?じゃねぇよ。ちょうど良い所に試金石が転がり込んで来たんだ。力の有る無しを調べるには良い機会だろ?」
まじでいってんのこいつ。
いやいやいやいやいや。無茶言うなよ。そんな重大なのか軽少なのかわからん事をやるのに試金石とかまじか?
「あぁ、勿論バックアップはする。心配はしなくて良い。ここで何も出来なくたって他に何も出来ないってわけじゃないんだ」
口調が軽いしそこまで重要な案件じゃないのか?
「アガマさん?」
「はい?」
「私の依頼、受けますか?」
さて、どうする?
この選択は結構重要じゃないのか?
ハゲの知り合いらしいレヒドちゃん?くん?はどういう立ち位置なのか。ハゲもそうだしまるでわからん。
「どうするの?」
「どうすんだ?」
正直きつい。いきなり訳のわからん世界に飛ばされたと思ったら転生したさきの同種族に拷問を受けるし勇者一行とやらに誘拐?拉致?救出?されるし。自分の順応能力が高いのか低いのかわからなくなってくる。
しかし、受ける理由は少ないが受けない理由はそもそも無い。ならば。
「受ける」
これしか無いわけだ。元々後ろ楯も何もない魔物だし。行動しなきゃ前には進めない。どっかの海賊団だったかはありったけの夢をかき集めて探し物を探しに行くらしいが、残念ながら俺にはありったけと言える夢も探しに行くようなものも無い。
なら、あとはやるだけやって成るようになれ。だ。
「そうか!よく決断してくれた。バックアップとサポートはまかせろ?」
「たのんだよ!アガマさん!」
どうやらハゲは俺の他にも何体かの魔物を連れていくらしい。先輩方や社長のような立場の人達の前で赤っ恥をかくわけにはいかない。
そう思うと俄然やる気が湧かなくなる。
なんで前世でやってた頭を下げる外回りを今世でも似たようなことをやらねばならんのだ。
「準備ができしだいすぐに出発するぞ。今のうちにイメージトレーニングでもしとけよ?」
「あ、あぁ」
イメージトレーニング・・・ねぇ。
イメージ・・・イメージ・・・何をイメージすればいいんだ?
こう、力の流れ的なそういうのか?それとも異世界だし魔力の動かしかたとか使い方とかか?
何だったら成りたい自分でもイメージしてみるか?
う~ん・・・わからん?
「わからんのなら適当にでも良いぞ?例えば剣とか」
剣?武器?イメージすれば良いのか?
う~ん剣・・・剣ねぇ・・・。剣と言えばやっぱりロングソードとか?マイナーなところでジャマダハルとかショーテルとかか?
でも僕は王道を行くロングソードだな。
「ん?それがお前の力か。なかなか面白い力だな」
「え?うわ!?」
あーびっくり!羽の内側から剣が生えてきてやがんの。
「ふんふん・・・剣の生成、いや模造?投影?なかなか面白い力じゃないか。研究のしがいがありそうだ」
研究とか止めろよ?ナニカするんじゃないぞ?
しかし。なんとなくわかった。
剣を生成したとたんに一気に腹が減った。からだの再生と同じ原理っぽい。再生も剣も同じ原理とわかれば色々作れるのかそれとも制限があるのか。
確かに研究のしがいがありそうだな。
「ま、準備ができたし行くぞ。移動はなかなかに時間がかかるんだ」
この依頼が上手く行った後、俺の処遇がどうなるのか。非常に気になるところだが。そんときはそんときだな。成るようになれ。