26混浴にでも入ってて下さい
長らくお待たせしました。
時間が無い故の誤字脱字があるかもしれませんがご容赦下さい。
「ええい!離しなさい!」
「そういって素直に離すと思ってるのか?」
「覚悟するがいいわ。貴方達が誰を敵に回したのか、後悔するなら今の内よ」
なんだこいつめっちゃ小物っぽいな。ほんとに師団長なのかよ。しかもこんなのに簡単に捕まるとか諜報をする部隊としてどうなのよ。クレアスフェルさん。
「まぁいいさ。四人とも中々の上物だしな。せいぜい売るとなれば高く売らせて貰うさ」
「くっ!殺せ!」
「テンプレだぁねぇ」
「アガマ殿!目がさめたのですか?」
「そうだね。ちょっと前にね」
こう・・・あれだ。クロロホルムっぽい何かで眠らされたのか、知らない間に知らない場所へ運ばれていた。正にいかにもって感じの地下室感溢れる場所だ。部屋の支柱であろう四本の柱の内、俺とクレアスフェルが縛られている柱の対角線上にラッヘンとセレイムが縛られているようだ。
「あぁ、話が分かりそうな奴がやっと起きたのか」
「少なくともこっちよりかは分かると思うぜ」
「そりゃぁよかった」
クレアスフェルがこっちを割りと本気で睨んでくる。縛られていなければ殴られていたか蹴られていたか。はたまた刺されていたか。
まぁそれは放っておいて俺達を監視する目的でここに居るのであろう男と話す。
「なんで俺達を誘拐したんだ?」
「ん?ん~・・・そうだな。俺は秘密主義で依頼人の情報を守る男なんだが・・・。まぁ理由位ならかまわんだろう」
「依頼人って事はあんた傭兵かなんかか?」
「まぁそんなもんだ。・・・で、だな」
男が言うにはフードを被った男性と女性にクレアスフェルを少し痛い目に合わせてやってくれと頼まれたらしい。その際にその女性からいくらかの前払い報酬と魔術導具を渡され、断りづらくなったらしい。
頼まれたら断れない性格らしいが、ちょっとそれは無いんじゃないかな。
一応名前は教えて貰ったが偽名の可能性が高いらしい。
「・・・何しろ魔王の名前だ。おいそれと使える人間は居ねぇだろうさ」
「それは言って良いのか?」
「おっと。喋り過ぎちまったな。話はこれまでだ。今他の連中がクライアントとお前等の処遇について話してるところだ。気長に待ってればいいさ」
「処遇ねぇ。・・・そういえばもう一人居なかったか?」
「んぁ?あそこに居たのはお前等四人だけだったが・・・それがどうかしたのか」
「いや・・・ちょっとな」
ドーフェルが居ねぇと思って聞いてみたは良いものの、聞いてる途中で小隊の駐屯地を巡回警備させていた事を思い出した。一応自立思考を持たせているとは言えまだ俺とのリンクは切れていないのだ。こちらからドーフェルに指示をする事ができないわけではない。
「なんだ、他に仲間が居たのか?」
「まぁな。・・・仮にそいつが今俺達を助けに来ていると言ったら?」
「はっはっはっ!そいつぁありえねぇな。そこの嬢ちゃんだってあんたより少し早く目が覚めた位だ。向こうの二人に至っちゃ未だに寝てるし、助けを呼ぶ所は見てねぇ。仮に誘拐だと気付かれるにしても早すぎるからな」
こいつの口振りから察するに、やはりこの世界ではまだ遠距離での通信技術は確立されていないらしい。メグファインが電気技術に固執するのも合点がいく。
確かに電気的な技術があればその技術を手にした国はこの大陸で覇権を握る可能が高くなるだろう。
まぁ対抗する国の技術レベルにもよるが。
「んでお前らにとって俺達を痛い目に合わせることは出来てんのか?」
「ん?あぁ。ご所望なら今からその豊満な物を揉みしだいてやっても良いぞ。俺もそう言うのは大歓迎だ」
「馬鹿野郎。誰が揉ませるかよ」
この男は今のところ嘘は言っていないが本当の事を言っている様にも感じられない。
この男には表面上に出る感情に起伏が無いのだ。所謂ポーカーフェイスと言うやつだ。
まぁ表情は割りとあるようだがそれでも本音を読む事ができない。こいつ本当は傭兵でも何でもないスパイ的な奴では無いのだろうか。
そう考えるとクレアスフェルを出し抜いて俺達を眠らせるなんて事をやってのけたのも頷けないわけではない。
「まぁ、痛い目に合わせたってんならそっちの嬢ちゃんには痛い目かもな」
「どういうこった」
「あんたが寝てる間に色々お話しさせて貰ったのさ。中々良い声で鳴いてくれたよ」
「ほほう。それは是非とも聞きたかったな」
「あんた・・・良い趣味してんだな・・・」
「誉めても何も出せねぇぞ」
男と会話しながらこっそり糸を伸ばす。見えないほど細くしたとはいえ、認識できないわけでない。触れれば蜘蛛の糸の様にバレてしまう。三つほど別々のルートで上に行く階段を探させる。
一つは俺達が括られている柱を伝って天井へ、二つ目は地面を這わせる。最後の糸は一か八かの男とは反対方向の壁に直線だ。
三つ目は空中を移動しているためにバレやすいが、危なくなれば地面に引っ付ければバレにくいだろう。
「それはそうと・・・あんた。人じゃないんだってな」
「本当だって言ったら?」
「特に何もしやしねぇよ」
「それは良かった。どちらにせよ、俺は静かに老後を迎えたいだけなんでね」
部屋の出口を見つけた。
俺達を監視している男の対角線上に木の扉があった。乱雑な作りで隙間だらけだったので一本だけ通す。他の糸は他に通せる場所が無いか探す。ここが地下室であるならば多分ダクトの様なものがあるはずだ。そこを通せば外に出すことが出来るかもしれない。
拘束された状態から脱出するのだ。ルートはしっかり確認しておきたい。
なんだったら二人を起こしておきたいが、話が面倒になるのはごめんなのでもうしばらく放っておく。
「ところであんたの名前は」
「聞いてどうすんだよ」
「助けが来るまで暇なんでな。逃げられても後でとっちめられる様に覚えておきたくてな」
「はっ!面白ぇな」
「だろ?」
「だが教えたくはねぇなぁ」
ちぃ、しくった。できればコイツの名前をガレッドで検索して素性だのなんだのを調べてやろうかと思っていたのだが。ガレッドさんはどうやら顔だのなんだのの抽象的なキーワードでは上手く検索してくれないらしく、クスサビに居た妙な奴等の事を検索しようとした時に顔の雰囲気だとか体格だとかで検索をかけても結果が出てこないのだ。
まぁそんな機能があったとしたらチートもいい所だしな。どっかの真名看破みたいに顔合わせた途端に正体を見破られるとかそれはそれで怖いからな。いやまぁこんな世界だし有るに越した事はないのだが、無いものはしかたない。
「おい」
不意に扉が開かれる。唐突だったので糸が切れてしまった。
入って来たのは頭に一本角を生やした男だった。
「依頼主は捕虜の引渡しを求めている」
「まじかよ。折角とっ捕まえたってのに」
「仕事だ」
「・・・はぁ~」
俺達の監視をしていた男が手を縛っていた縄を残して解く。俺とクレアスフェルは起きているため歩かされるようだがラッヘンとセレイムは未だに眠っているので先程入って来た男に担がれている。
どうやら先ほどまで居た部屋はやはり地下室だったらしく、階段を登った先の部屋の窓からは外を見る事ができた。
「はいごくろうさん。これ、追加の報酬ねー」
部屋に待機していたらしいフードを目深に被った女性と思われる人から麻袋が俺達を見張っていた男に渡された。
代わりと言うように男からは刷毛の入った空のブリキ缶の様なものが渡された。
「別に君達が持っていたって良いのに」
「こんなもん長々と持っていられるかっての」
女性はブリキ缶のようなものを受け取るとさっさと隣に居る同じくフードを目深に被った人に渡す。ブリキ缶を受け取った手の形からして男性な感じではあるがいかんせん手の感じだけでは断定できたものではない。
ブリキ缶を受け取るとすぐさま女性と同じく着ていたローブの中に隠す。
「さて。ではこれから君達は僕等の所有物だ」
「ふざけないでください!誰があなた方の様な素性の分からない方の所有物になどなると言うのですか!」
クレアスフェル殿が怒ってらっしゃる。弁明して差し上げろ。
まぁちょっと前に奴隷商人が嫌いとか言ってたし怒る理由もわからなくは無い。そもそもこいつらの目的が不明であり、何故俺達を指名して捕まえた理由もわからん。
二人共フードを目深に被っているため人相がわからず表情も見えない。
あの二人の男についてもわからない。ラッヘンやセレイムならともかく俺やクレアスフェルの感知能力を越えて接近してきていたのだ。クレアスフェルについては恐らくその事もあってキレているのだろう。俺もその気持ちはわかる。
忘れがちだが俺のボディは本体の猛禽類ボディの上に魔力を固定化した魔力装甲なのだ。その装甲は全身が筋肉であり脳細胞であり目であり耳でもあるのだ。流石に口にするのは構造が複雑化して装甲の結合が脆くなるためやらなかったのだが。
あの二人か、もしくはその仲間達はその索敵網に入る事なく俺達に接触したのだ。文字通り俺達の口に布をあてがうまで消えていた状態で。
「あぁそうだ。自己紹介をしてなかったね。僕はヒウス。ちょっとした旅人だよ。こっちは・・・えぇ~っと・・・タッキー?」
「・・・タッキーだ」
あ、偽名だなこいつ。きっと偽名だ。
「僕達は君達に協力を求めたいんだ」
「私があなたの様に顔も見せない人に力を貸すと思っているのですか!」
「まぁまぁクレアスフェルさん、まずは話を聞きましょうや」
クレアスフェルをこの調子で怒らせていては話が進まない。何はともあれ話を聞かないと解放してくれなさそうだしここはおとなしく聞くのが賢明だろう。
会話スキップとかできねぇかなぁ。早く解放されねぇかなぁ。
「君達には記憶の歪みの発生を抑止して欲しい」
「記憶の歪み?」
久しぶりな気がするガレッドさんの出番だ。
記憶の歪みで検索をかけてみる。
・・・やはり具体的な名称とか名前を検索ワードに入れると出てくるのが早い。
記憶の歪みとは。あらゆる場所から少量湧出する黒い泥の様なもの・・・らしい。基本的には大きい害は無いものの、直接触るとやべぇって感じの物体らしい。
正直言ってよくわからん物体であるが、要するにやべぇもんがいろんな所から湧いて出てくるから栓でもして止めてこいって事らしい。
まぁあれだよね。RPGあるあるなお使いクエストだよね。面倒だね。
「もちろん僕達も行くさ。ねぇたきん゛ん゛!・・・タッキー君」
「は?」
「は?」
はぇーすっごいぐだぐだ。その内片目全裸にでもなんのかな?
ヒウスとタッキーがぐだぐだしている内に更にガレッドで検索をかける。記憶の歪みの発生元を解決しなければいつまでもこいつらに連れ回される可能性がある。それはちょっと面倒なんで避けねばならない。
という訳で根本的に解決するためにガレッドで検索をかけているのだが、一向に何一つ有力な項目が出てこない。
「ま、いっか。タッキー謹製のこれも付けとくし、やらないならやらないでいいよ?代わりに首が閉まるけど」
それって比喩?それとも物理?もしかしてどっちもか。俺だって生き物だし首を閉められりゃ死ぬし、殺されたら死ぬ。
ヒウスが俺とクレアスフェルの首に手に持った黒くて丸い何かを添えるとぼそぼそっと何かを唱えているのかただ単に雰囲気を出すためなのかちょろっと呟くと黒くて丸い物が消えた。
「こいでよっし」
「作んの面倒なのにそんなにぽこじゃか使いやがって」
「ぽこじゃかって表現初めて聞いたけど、どこ生まれの人?」
「どこだっていいだろ。言語学者か何かかよ」
兎にも角にもやらないと首が絞まるらしいのでやらざるを得ない。
まぁ期限は設けられてないみたいだし小隊長をやるついでに見つけ次第対処するって形でもいいか。
というかそもそもやり方わかんねぇんだけど。見つけてもどないせぇっちゅうねんって状況になりかねねぇんだけど。
「あ、そうそう。やり方だけど見ればわかるから」
「そういう事だ。じゃあな」
そう言うとヒウスが俺達の拘束を解き、タッキーが先ほど受け取ったブリキ缶を中身をぶちまける様に動かす。
唐突に二人の姿が跡形もなく消えた。
「消え・・・た?」
クレアスフェルが絶句していると言うことはこちらの常識で考えてもあり得ない事なのだろうか。
まぁそこんとこはどうだっていい。正直こっちに来てから常識はずれな事ばっか起こっているから今さら目の前で人が消えようが別に驚くことでもない。
拘束が解けて解放されたのは良いが、もう日も落ちている様だし、観光はできそうにない。その上クレアスフェルがまるで闘牛みたいにフンフン怒ってるし、俺達を捕らえた二人を捕まえない限りどのみちな気がするな。
「・・・ふぅ。仕方がないですね。観光でもしますか」
「ええのんか?」
「いいんですよ。あれは私の手に負えません」
クレアスフェルが手に負えない程らしい。実力か、相性かは知らんが、よっぽどなのだろう。
「魔王の亡霊。勇者が切り落としたファンタズムの欠片から生まれたとされる者だと思います」
「なんかかっこいいな」
ファンタズム。ガレッドさんによると何て言うか幽霊とスライムを混ぜた様な種族だったらしい。
だったと言うのは過去に居たらしい魔王が最後のファンタズムであったらしく。勇者に討たれ、絶滅と言う事になったとの事だ。
「もう諦めです。国営のお風呂に行きましょう」
「風呂を国が運営してんのか・・・」
「私くらい常連になると余裕で顔パスなんですよ」
わぁお。タダで温泉とかマジですかい。
・・・いやまて。俺はどっちに入ればいいと言うのだ・・・中身的には男湯だが外見的には女湯になるのだろうか・・・。
「あ、アガマ殿は混浴にでも入ってて下さい」
「あんのかよ」
「ありますよ。混浴なら問題無いでしょう?」
ま、温泉に入れるならなんでもいいか。
・・・・・・・・・
「あぁ~えぇ湯やなぁ~」
「せやな~」
ゴツゴツとした岩が体の至るところのツボを押してくれているような気がしないでもない岩風呂だ。檜風呂とは違い木の匂いはしないがこれはこれでなかなかオツなものである。
「あんさぁ~」
「なんや~?」
「あれどうなん~?」
「ん~?あ~あれな~・・・あー・・・まぁえぇんでね~の~?」
「投げ槍やんなぁ~」
「風呂入っとる時位仕事の話なんかしとうないわ~」
「それもせやな~」
二人の男が風呂に浸かりながら会話をする。
不意に戸が開き更に二人、入って来る。一人は腰まで伸びる長い白髪を肩程から三つ編みにしている。もう一人は整えられていない長い白髪をそのまま垂らし、顔すらも覆っている。
「お、ノーチラスさん。おつかれさーっす」
「さーっす」
「・・・」
ノーチラスと呼ばれた男は二人に一瞥もせずに蒸し風呂の中へ入っていく。
もう一人、名前を呼ばれなかった中性的な体躯の男とも女ともつかない者は腰布をつけたまま二人の男から死角になる別の風呂に浸かった。
「ノーチラスさんもつれねぇんでなぁ~」
「なぁ~」
二人はざばざばと音を立てて風呂から上がっていく。へらへらと笑いながらコーヒー牛乳にしようかフルーツオレにしようか談笑し、飲み終わるとそれぞれの持ち場へと戻っていく。
「・・・どうだ、レーネール」
何時の間にか蒸し風呂から出てきていたノーチラスがレーネールと呼んだそれは静かにこくりと頷いた。
「そうか・・・」
ノーチラスは静かに湯船に浸かりため息をつく。
「いい・・・湯だな・・・」
レーネールがまた頷き、無言のまま肩まで浸かる。それを見てノーチラスも同じく肩まで浸かる。
ノーチラスとレーネールについてはその内詳しく出てくる予定です。




