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渡り烏の異世界渡航  作者: JINGoo
大陸動乱編
32/58

25これはお約束みたいなもんだ

遅くなりましたが完成しました。

「・・・と、言うわけでアガマ。君にはある小隊の新兵教育をしてもらいたい」


クレアスフェルの家兼キャルレッジの館の応接間でそんな事をキャルレッジに言われた。

曰く、新設の実証試験部隊だが、志願兵が能力や気力等の理由で選別されて小隊規模、つまり四人しか集まらなかったそうだ。


「それ・・・まじで言ってんの?」

「あぁ。真面目な話さ。そもそもクレアスフェルに君を連れに行かせてしまったのは私の責任でな。どちらにせよ役割を持たせろと皇帝からのお達しもあって、私の管轄であった新機軸の魔導術兵装の実証試験をする小隊という名目で場は整えておいた」


こいつ口調安定してねぇな。

ま、それは置いといて、だ。西征が始まるにしてもだいぶ後の事で、それまでに義勇士官として新兵教育をさせてその実力やら手腕やらを見ようと言う魂胆だろう。

いや、にしても新機軸の魔導術兵装の実証試験のための小隊を新兵で構成するもんかね。普通は前線帰りの仕官とかエースっぽい立ち位置の奴かそういうの専用の奴らにやらせるもんじゃないのか?それにそんな機密じみた事を外様にやらせるのか?帝国上層部は馬鹿じゃないのか。


「ふむ。なんで俺なんだって顔だからもう一度説明するが、要はただ飯食らいに用はない。働かざるもの食うべからず。だ」

「うんなるほどよく分かった。俺は帰らせてもらう」


即決だ。そんな面倒な事してられるか。俺は自由にさせてもらう。ここまで連れてきてくれたクレアスフェルには悪いが、俺は適当な場所でのんびり暮らさせてもらおう。うれしい誤算で同行者は全員魔力が食事だ。基本的に食事は必要無く、太いレイラインのある所ならだらだらと生きていける。


「まぁ待て。新兵のケツを引っぱたくだけで金が貰える仕事だぞ?こんなに良い条件の天下り先は無いぞ?」

「っても天下り先だろ?」

「うむ。天下り先だ。だが、適当な高官を放り込んでもゴミの様な能力しか持ち合わせていない奴だとそもそも実証試験小隊の意味が無い」


つまるところある程度頭があって適度にサボっても問題は無いが、隊を蔑ろにしたり自らの懐を潤す事しか考えて無い様な奴には任せられないと言う感じだ。

・・・と言うかそんな高官ばっかりって大丈夫なのかこの帝国は。

そんな感じで、ある程度頭が働き、師団長と同等の給与で満足し、仲間は大事にしそうな庶民派の俺がクレアスフェルからの報告も相まって選ばれたと言う事らしい。


「まぁ確かに新兵のケツを蹴飛ばすだけで高給取りに成れるってんならまぁ満更じゃない」

「そうだろ?」

「だが俺がここでやりたい事は誰かを育てる立場に居ることじゃない。知識を吸収できる立場に居ることだ」


実際イジスタリウスに来た目的はとりあえずこっちの世界の知識を集めたりするためだし、この体だと基本的に餓える事も無いから別に金目当てで働く必要もない。

つまりこっちなら前世で叶わなかった夢や、やりたかった事を多少時間はかかるができない事はないのだ。


「あれだ。もし別の事がしたいなら給料ですると良い。いくら小隊長と言っても大隊や中隊の直轄ではない独立した隊だからな。暇を作ろうと思えば作れないわけではない」

「なるほど。必要最低限働けばそれなりの給料がでて、それで何をしようが俺の自由ってわけか」

「あぁ、そのとおりだ」


手のひらドリルとか言われようが旨い話だと俺は思った。どの道何をやるにも金はかかる。持っているに越したことは無いし、所持金は多ければ多いほどいいし、その分使いがいがある。

なにせ前世でやりたかった事なんて金のかかる事ばっかだった。こっちの世界では出来ない事を除いてもどちらにせよ金はかかる物だ。いやはや俺はいつのまにこんなに強欲になってしまったのか。少年の頃のワクワクを思い出せる日は来るのだろうか。


「ま、確かに悪い条件じゃないわな」

「あぁ。一応監察官兼連絡員としてクレアスフェルを付けるが、まぁお飾りだな」

「私がやるのですか?」

「当然だろう。俺は貴様に真偽を確かめて来いとしか言っていないのにお前は証拠どころか本人を連れてきているんだ。その後始末位はしなさい」


確かに俺がここに居るのは多少金が欲しかったからというのもあるが、クレアスフェルが返答をする前から機密事項らしい西征に加われ、断れば・・・と言わんばかりに退路を塞いだからだ。半分位は責任を持ってもらってもいいかも知れない。


・・・とまぁ、そんなこんなで現在第一実証試験小隊の駐屯地兼試験地のちょっとしたグラウンドに居るわけだが。


「え~・・・じゃあ小隊長さん。自己紹介を」

「はっ!私はアイルネ・セルネイと申します!第二師団傭連所から参りました!」

「傭連?・・ま、後でいいや。はい、じゃあ副隊長さん」

「はっ!私はレゴラウス・ルニアルヌであります!第一師団訓練校より参りました!」

「あ~エリートさんかな?固っ苦しいのどうにかなんない?はい次」

「サーレイフラであります!義勇将兵訓練校から参りました!」

「義勇・・・一般ね。はい最後の人」

「ハイルラであります!徴収仕官校よりまいりました!」

「はいおつかれさん」


うむ。非常に固っ苦しい。俺こういうのあんま好きじゃないんだよなぁ。

ま、ともかくエリートさんっぽいのが小隊長と副隊長でその下に一人ずつ一般徴募の二人が付いて分隊二つって感じか。後ろ二人はともかくセルネイとルニアルヌは頭が固そうだ。

って言うかどいつもこいつもとにかく名前が言いにくい。正直噛みそうになる。


「四人はどういう集まりなんだっけ」

「はっ!我々は」

「あ、すまん。これはお約束みたいなもんだ」

「・・・そうでありましたか」


う~む・・・これはきついぞ?最初っから冗談は通じないとは思っていたがまさか真面目に答えようとするとは。

これは徹底的に頭をやわらかくする訓練が必要かもしらんな。やるかどうかはともかくとして検討しておこう。


「しかし傭連所・・・ねぇ。どういうとこなの?セルゲイ君」

「セルネイであります。傭連所というのは・・・」


セルネイ君によるとあらゆる場所を放浪するハンターや冒険者の中にはどこかの国に定住して安定した暮らしを営みたいと考える者は少なからず居るらしい。そんな彼等を自国の戦力として運用すべく訓練する部署が傭連所なのだそうだ。

多くは荒くれ者である冒険者やハンター達を纏め上げるために練度の高い士官が教導をしている上に往々にしてその士官達も元々冒険者であったりハンターであったりした者達なので馬が合う事が多いらしく、上手い事回っているらしい。


「あ~うん。なかなかにホワイトそうな部署だねぇ。・・・というかそんな場所から来たにしては言葉使いが成ってんな。貴族崩れだったりすんの?」

「いえ!私は元々クスサビを拠点としていたハンターであります!両親はクスサビ出身の平民であります!」

「根っからの平民じゃん。じゃあその言葉使いは?」

「教練士官殿に教わったであります!」

「崩す事は?」

「できるでありますが・・・よろしいので?」

「固っ苦しいのは好きじゃ無いんでねぇ」

「はっ!・・・あ、いえわかりました」


まだ固いが、最初はこんなもんでいいだろう。後々でやわらかくしていけばいい。それこそ突いた所から腐る位にやわらかくなってくれればとかも思うが腐られたら腐られたで面倒だと気付いた。のでゆっくり丁度良い感じになる位にやわらかくしていきたい。

しかしクスサビ出身か。あそこには数日しか居なかったし、また行ってゆっくり温泉に浸かりたいものだ。


「で、セイレン君。その装備は?軍の支給品じゃないのか?」

「セルネイです。この装備は昔、エルフの国に迷い込んだ時に作ってもらったのです」


エルフの国とな?いやいやいや。ファンタジー物で彫金冶金といえばドワーフが定番だろ?何故エルフが軍の標準支給品よりも良い武具を作れるんだ。わけがわからん。

後でクレアスフェルに教えてもらった所エルフ族は近接戦闘を得意とする武闘派の種族らしく、その戦術上武具の製造能力は高いのだそうな。

ちなみにドワーフ族は魔法による多属性砲撃魔術を主戦力としていて、冶金技術はそれなりだが、エルフには及ばないらしい。


「まぁ装備に関しては後でいいか。・・・え~ルニアルヌ君、第一師団訓練校とはどういった所だったんだ?あ、言葉使いは同僚とか同期に対する感じでいいから」

「はい。第一師団訓練校はその名の通り第一師団へ配属される予定の将兵士官を調練する場です」

「なるほど・・・様はエリートさんか?」

「いえ。私はエリートなどではありません」


めっちゃ言いにくい名前のルニアルヌによると第一師団は近衛騎士団と同じく帝都の守りを任される部隊で、実力主義な所があるらしい。故に貴族の息子であろうと平民の老兵であろうと教官は分け隔てなく接する。が、それ故の問題もあり、貴族のぼんぼんが平民を愚弄しても教官の前でなかったり証拠が挙がらなかったりで問題に上がらないという問題が起こっているらしい。

要するに貴族のちっさいプライドが平民が自分と同じ場所に立つ事を許せないのだ。

そんな場所でルニアルヌは優等生であったが平民の出であったらしく、貴族の根回しによりこんなところに左遷させられたらしい。


「ルニアルヌ、お前はそれでよかったのか?」

「はい。私は、私としてここに居ます。どの様な形であれ、国に貢献できるのであれば本望です」

「・・・ま、良いなら良いんだけど。・・・じゃあ、サーレイフラ君。義勇将兵訓練校はどんな場所だったんだ?」

「我輩・・・でありますか?」

「あぁ。一応全員の素性を知っておきたくてな」

「・・・では、僭越ながら・・・」


で、サーレイフラによると義勇将兵訓練校は、まぁ読んで字の如く志願兵や義勇兵を訓練する学校だそうだ。基本的にはそこで能力を見極め、この部隊に配属するのが良いだろうって感じで推薦してくれる場所でもあるらしい。まるで日本の高校みたいだぁ。

・・・んで、サーレイフラは義勇兵にしては珍しくダントツで高い魔導適正と魔術適正両方を備えていたから教官から第四技研の膝元であり、その有り余る適正を有効活用できる場所として推薦され、サーレイフラ自信もそれを望んでここに来たらしい。


「んじゃあ出身は?」

「出身でありますか?ここでありますが」

「まぁそりゃ志願兵とか義勇兵とかを訓練する学校から来てるんだからそりゃそうだな・・・。じゃあ、ハルイラ君。もうなんとなく分かるけど一応聞くと、徴収士官校って?」

「え?あ、私でありますか?」

「うん」

「あっえっちょっはっはい!徴ちゅう士か・・・」

「あぁうん。落ち着いて、な」

「は、はい。ありがとうごじゃい・・・」


なんだこのドジっ子・・・ドジっ子か?いやドジっ子なんだろう。

えらい噛むから何故か手元に置いてあった水をコップに注いで渡し、落ち着いた頃に話を聞く。

話の内容は読んで字の如くって名前をしている徴収士官校についてだ。まぁ、予想通りだよね。

軍や各医療機関等で丁度良い人材を同意の下で徴収し、教育する機関で、まぁやっぱり読んで字の如くだね。

で、ハルイラはとりわけ回復系の魔術適正が高かったらしく、その類稀なる適正を生かせる場としてこの部隊を推薦されたらしい。

まぁぶっちゃけ左遷だね。ルニアルヌと同様嫉妬した奴等の働きかけもあったらしいが、この場所へ自らの足で彼女は来ている。多分問題は無いだろう。


「・・・で、これで全員か。なんか質問とかある?」

「よろしいですか?」

「うむ、言いたまえ、サルマネ君」

「セルネイです。貴方は・・・その・・・何故ここに来たのですか?」

「うん?う~ん・・・そうだなぁ~・・・」


考えてみれば私にもわからんという回答が出るのだが、ぶっちゃけると成り行きと気まぐれとしか言い様が無い。

クレイヴとかいう烏みたいな魔物に転生させられて?勇者に保護されて?魔物使いを名乗るおっさんに行き成り大事任せられて?カグマを倒して?ヴァルヴェスに会って?クレアスフェルがやってきて?そんでお前に拒否権ねぇからときたもんだからな。

一部利害の一致があったにせよえらく長い道のりを経てここに居るわけだが、何故ここに居るのかと聞かれると確かに殆ど自分の意思ではなく成り行きの行きずりである。


「ぬ~ん・・・まぁ・・・な?いろいろあったんだよ」

「はぁ・・・」


セルネイ以外からは質問が無かったので今日の所はこれでお開きにして各自は帰宅させた。

まぁ帰宅と言ってもすぐ近くのちょっとした小屋に男女二組に分かれて住んでるわけだが。

そんな事はどうだっていいんだ。重要な事じゃない。

本題は俺が観光したかったからそそくさと終わらせたのだ。

あぁそうだとも!観光したかったからさ!中世っぽいがちょっと現代っぽさの混じる洋風建築かと思えば高い店だとか金持ちの屋敷のちょっとしたところに和室っぽい部屋があったりするこの世界のこの国のこの街を観光したかったのさ。


「・・・で、なんで私なんですか」

「他に案内役がいねぇだろ」


というわけで普段から頻繁に内政調査とかで国中を走り回っているクレアスフェルさんに来ていただいたわけだ。

なにしろクスサビにだってあったんだからそこより賑わってそうなここに温泉だのなんだのが無いわけがない。

あの時はまだ猛禽類ボディだったから存分に楽しむ事はできなかったが、今は違う。

真昼間から、仕事もせずに、だらだらと湯船に浸かる事のできる体と立場を手に入れたのだ。楽しまない道理は無い。


「無いです」

「は?」

「ここに、温泉は、無いです」

「なんで」

「あれはクスサビの中心地近くに源泉があるからできる事なのです。そういうことが可能な魔術導具が無いわけではありませんが、所詮は紛い物です」


おうしっと。

楽しみが一つ減った。心なしか後ろを歩いていたセレイムとラッヘンが落ち込んでいる様な気がする。俺だって若干落ち込んでる。

まぁそれも無理は無いかもしれない。クレアスフェル曰く、あの源泉には様々な効能があり、たとえ足湯程度であろうとその効能を実感できる程だとか。

さらに、魔術導具で再現しようとしてもまったく同じものが出来ることは無く、ただのお湯やちょっと腰痛とかに効くお湯が出せる程度に止まっているそうだ。


「んだよそれ」

「一部では女神の齎した聖水だとか源泉は聖なる国に繋がっているだとかいう話がありますが、まぁ噂話程度ですね」

「あぁ~くっだらねぇなぁ」

「ご主人。ご主人ならその気になれば」

「セレイム君。その事については黙っていたまえ」

「ご主人。また一つ。秘密を増やした」


うん。まあ出せないわけじゃ無いと思う。うん。その源泉の性質にもよるけど出せる可能性はある。一応。

まぁ出したところで冷えたのが出てきたらそれはそれで悲しいし、なにせ水を沸騰させるにはかなりのエネルギーがいるらしいからあったかいのとつめたいのじゃ消費量が多分かなり違うと思う。

クレアスフェルの酒を出した時もかなり魔力を持っていかれたし、年代や成分、その他諸々の関係でどれだけ魔力を持っていかれるか分からないクスサビの温泉を出すのは今の所は止めておこう。


「ご主ンン」

「ん?どったのラッヘぇ!?」


いきなり口元に布があてがわれた。慌てて回りを確認しようとする。

どうやら適当に歩いていた内に何時の間にか人通りの少ない路地に入って来ていたようで横ではラッヘンとセレイムとクレアスフェルが同じ様に捕縛されていた。

それを確認すると同時に意識は途切れてしまった。

運転の練習とかをやらされているのでまたかなり間隔が開くかもしれません。

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