2つまりあれは勇者一行?
勇者一行の名前はまだわかりません
わけがわからないよ。
っていうか本当にわからん。
「・・・」
なんでこいつこっちずっと見てるの?何?烏好きなの?
「で?」
ようやく口開いたなこいつ。
「お前何?」
開口一番お前何?じゃねぇよ。こっちが聞きてぇよ。
「いやわからんならわからんで良い。俺もあんまりわかりたくない」
いや、そっちはそれで良いかも知らんがこっちは困るんだよ。
「なぁ・・・」
なんだよ。
「なんか喋れよ」
うるせえ紙寄越せ紙!筆談してやるから!
「なんだ?喋れないのか?あいつ等喋るクレイヴとか言って置いてきやがって。うんともすんとも言わねぇじゃねぇか」
喋れるけど喋らんのだよ!何が悲しくて烏みたいな姿で言葉を解する妖怪にならにゃならんのだ。安全策を取るならここで保護してもらうのも手だが、あのイケメンの施しだと思うとヘドが出る。
「あーまー。喋らんのなら喋らんのでいいんだ。あの自称勇者のやるとこは一々わけがわからん」
勇者とな?イケメンで勇者とな?あーイラつく。なに?イケメン勇者の英雄譚でも作りたいのバカなの?死ぬの?」
「なんだ喋れるじゃないか」
「・・・あー」
しまった。つい口をついて出てしまった。勇者を侮辱したとかで処分されなきゃいいな。
うん。まだ死にたくないしな。
「・・・よし。喋れるってこともわかったしまずは自己紹介だ。俺はこの辺りで魔物使いみたいな事をしているハヴェルだ。これからは短い付き合いにならないようにしたいと思っている」
なんか自己紹介してきたよこのハゲ。シャンプーハットが意味を成さなそうな髪型してる癖にえらいガタイがいい。下手したら自称勇者よりも強いかもしらんな。
「で、あんたは?」
「名前なんてない」
「そうか。まぁ、魔物に名付けの習慣は無いだろうな」
しょうがないだろ?こちとら烏の巣のなかで延々啄まれてたんだから。習慣があったとしてもただの食料に名前なんて付けないだろ。
「よし。じゃあ俺に名付けられるのと自分で名前を決めるの。どっちがいい?」
これは困った。自分で名前を付けるのは考えるのが面倒くさいし何より自分で考えた名前を名乗るってのが恥ずかしい。
だがつけてもらうとして変な名前をつけられるのはゴメンだ。まして俺は魔物らしいしそういう偏見もあるかも知れない。
非常に困った。
「思い付かないならいくつか候補をだそうか?」
「・・・お願いします」
「えらく下手な言い方だな。まぁいい。ちょっと待ってろ?」
ハヴェルとか言ったか?まぁ、ハゲでいいか。なんか木の板持ってきたな。それにいくつか文字を書いていく。勿論日本語じゃない。
「ほれ、左からアガマ、ウグレマ、サドガシマ、アツマだな。ん?どうした?」
なんとか吹き出すのを堪えられた。なんだよサドガシマって佐渡島まんまじゃねぇか!
「じゃあ。アガマで」
よぉし!堪えた!堪えきった!流石に口を開くのはヤバいかも知らんが選ばない訳にもいかないし。危なかった・・・。
「よし。じゃあ今日からお前はアガマだ。よろしく頼むぞ」
「こちらこそ」
さて。名前をもらった事で出きることが増えた訳でもない。俺はこのハゲの言いなりになるのかもしれない。魔物使いとか言ってたし魔物を使って興業収入を得るとか消耗品として戦争に放り込まれるか。
「まぁ、そう身構えるなって。悪いようにはしねぇよ」
お、おう。顔に出てたか?いや烏の表情は分かりにくいがクレイヴだっけ?どうなんだろうか。そもそも魔物に表情筋ってあんのか?
「俺たちの仕事はまぁいろいろだな。見世物はやってないが召集があれば普通に戦争にも行く。ただ今は戦争なんざやってないからもっぱら適材適所を依頼に応じて派遣するぐらいだな」
ほほう。なかなかに楽そうな仕事だ。戦争とかはやっぱあるんだな。出来れば出たくはないな。
「これからよろしく頼むぞ、アガマ。家の稼ぎ頭になってくれよ?」
「期待されるとやりにくいな」
「ハッハッハッ!まるで人見たいな言い草だな」
「元人間だしな」
「ハッハッハッ・・・は?」
こいつ。信じてないな。
「元人間って・・・」
「あぁ」
「するってぇとおめぇ・・・転生者か?」
ここだと転生は一般的なのか?それとも珍しいだけで無いわけじゃないのか?うむ・・・謎だな。
「こいつはえらいもんを寄越してくれやがったなあいつら」
「問題があるのか」
「大有りだな。なんせ転生者なんて確認されてるだけでも歴史上三人しか居ないんだ」
三人も俺みたいな境遇のが居るのか。かわいそうに。
まぁ、人を思いやる余裕があるわけじゃないが。
「その三人は全員人ではなく魔物として生まれて元人間だと主張したらしい。そしてアガマ。お前は四人目だ」
「その三人はどうしてるんだ」
「全員墓の下だ。なんせ最初が千年前で次が五百年前、そんで三人目が二百五十年前だからな。いくら人より長命の魔物に生まれ変わっても二百年から百五十年が限界だな」
なんとまぁ!この世界では俺は初めての事例じゃ無いらしい。しかも最も最近でも二百五十年前とか生きてる気がしないな。全員墓の下ってのは本当の事だろう。
「所でどうでも良いけど俺を拾ったあいつ等は?」
「あいつらか?あいつらは・・・まぁ、その、なんだ。ここから東へ行った所にでかい王国があるんだがそこの魔術導師の選定で決められた勇者・・・らしい」
「つまりあれは勇者一行?」
「公式にはそうだな」
まじかよ。あのいけすかないイケメン勇者だったわ。
まずいなー。これはまずい。何がまずいって色々まずい。まず初対面でいろいろやったのがまずい。
「公式にとは?」
「あぁ。噂だと非公式に発表された勇者パーティーがあるらしいってな。あくまでも噂だが」
下手したらあいつらとその裏勇者も相手にリンチされなきゃならんってことか?命の危険を感じますなぁー。