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渡り烏の異世界渡航  作者: JINGoo
大陸動乱編
26/58

20クレアは気にしなくても良い事だよ

「頼む!助けてくれ!ここから出してくれ!私が悪かった!だからな!金ならいくらでも積む!そ、そうだ!いくら欲しいんだ?金が目的で私を拐ったんだろ?なぁ頼む!お願いだ!」

「黙れ小童が!金なんぞで買えるほど人の命は安くはないわ!」


現在、モルベス麾下の中隊が持ってきた国境監視官のネビヌスを尋問中です。

第四技研の持ってきた闇檻と読んでいた魔術導具に放り込まれて隙間から槍でつつかれる尋問を受けております。尋問じゃなくて拷問?アイアンメイデン?そうだよね。俺もそう思った。途中でメグファインが面白がって槍に炎上の魔方陣をエンチャントしだした辺りから尋問から拷問に変わっていった。

おー可哀想に。同情できねぇわ。

なんでも本人曰くクレアスフェルを何としてでも奴隷におとしてやって弄んでやりたい欲に駆られたそうな。まぁ、わからいでもないよ?クレアスフェルなんか平坦な事を除けばなんか女騎士とか戦乙女とかもうなんかオークとかゴブリンとかに囲まれてくっ殺状態になってそうな外見してるからな。


「アガマ殿?今一体なんの事を考えていたのですか?」

「明日の天気」

「クレアの。体型?」


おうふ。とうとうラッヘンまでもが読心術を会得してしまったと言うのか・・・。私は悲しい。

ちょっと俺がクレアスフェルに背中からシュッと刺して捻るされてそうになってる時にはネビヌスが燃え尽きていた。

メグファインが闇檻を回収するとネビヌスだった物が風に飛ばされていった。無茶しやがって・・・。


「ふぅースッとしたわい。苛ついた時には焼き討ちに限るのぉ」

「おー怖。とづまりすとこ」


さっきからクレアスフェルがナイフを使って刺そうとしてくるが刺さらないので気にしない。疑似魔力装甲の靭性は伊達じゃぁないね。

・・・あ。どうでも良いけど伊達巻食べたくなってきたな。俺あれ好きなんだよなぁー。ふわふわしてて甘くて美味しいあの伊達巻がなー。でも作り方知らねぇしこっちに同じ材料があるとは限らんからなー。悲しいなー。


「さて。ゴミの焼却処理も終わったし、イジスタリウスへの帰路につくとしようかの」

「ちょっ!?先生!?ちょっ乗せっあっあっあっ・・・」

「情けない声を出すなと言うておろうがアルネイル!そなたはそこの馬車を使って帰還するが良い」

「そ、そんなー」


メグファインが潰れた円錐に乗って東へ飛んでいく。まぁ、どのみちモルベスが倒れたまま麾下の中隊に運ばれていったので御者が必要だったのだ。それが人かアラクネかの違いはあるが、まぁ、問題無いだろう。メグファインもそのために置いていったのだろうし。


「僕御者なんてできないですよ?」


あぁ、どうしようか。馬車にはクレアスフェルお気に入りの酒が積んであるから少なくともこの馬車を無傷でイジスタリウスまで動かさなきゃならんのだが・・・。俺だって馬なんて扱った事無いし、引っ張れない事もないけどそれじゃあ俺が楽できない。ラッヘンに引かせる事も考えたが・・・外見だけは小さい女の子に馬車を引かせるなんてさせるわけないだろ?

背に腹は代えられんが。致し方ないのでちょっと馬車を改造した。

いや、魔改造と言っても良いかも知らん。

魔力式でエンジンを造り上げる。燃料の爆発を魔力爆発で代用してうまい具合に調節する。四輪だった馬車の前にエンジンを付けた車輪を追加する。二輪駆動の六輪車輌の完成だ。


「リミッターなんて贅沢な物の無い急造品だが、ま、しかたねぇよな」


エンジンに魔力を流し込んで起動する。ポンポン情けない音をたてながら坂道を下る自転車位の速度で走り出した。一次大戦時代の戦車かな?

クレアスフェルがそわそわしだしているが気にしないが、アルネイルが驚いた様な表情をしているのは少し気になる。その驚愕は未知の物に対するものではなく、あり得ないと言う驚愕だった。


「あの~・・・アガマ・・・さん?」

「あー・・・アルネイル君・・・だったか?どうした?トイレか?」

「ち、違います!」

「じゃあなんだね。答えられる事だけ答えてやろう」

「偉そうですねアガマ殿は。まったく・・・ひゅいっ!?」


地面の凹凸に跳ねて馬車が大きく揺れる。だがある一部は悲しい事に揺れることは無かった。

それはとっても悲しいなって。ね?だから首掴むの止めてくれないかな?こっちに来て二回目なんだけどね?首絞められて嬉しがるのは自殺志望者かドMかネクロフィリアの変態だけだよ?俺どれにも該当してないからね?首絞めんの止めてくんない?あとその笑顔も止めて?口は笑ってるけど目は笑ってないよねそれ。


「ク、クレアスフェル様!?」

「アガマ殿は一体どういう神経をしているのでしょうかねぇ。少し興味が湧いてきましたよ」

「ご主人。逆さ鱗に触るの。良くない」


ラッヘンにまで叱られてしまった。ちょっとこの子クレアスフェルの影響受けてない?大丈夫?

ちなみにラッヘンは逆さ鱗が有るようで。背がそこまで高くないせいで少し見にくいが顎の下に何枚か小さめの鱗が生えていた。なんで知ってるかって?疑似魔力装甲を作るときに軽くスキャンしたからだよ。


「・・・って!そんな事はどうでも良いんですアガマさん!」

「どうでも良いとはどういうことですか!アルネイル!」

「はっひっへっす、すいません!」


段々アルネイルが不憫に見えてきた。なんてったってアラクネだから馬車ん中にはいんねぇんだもん。野晒しなのは仕方ないよね。と言うかアルネイルのためにちょっとした台車を作ったけど存外にアルネイルが重くて馬車がこんだけの速度しか出ないんだよなぁ。・・・え?馬はどうしたって?そりゃぁねえ?俺馬刺しとか桜鍋とか好きでねぇ。しょうがないよね。エンジン付けたら邪魔になるんだからね。


「で、なんだね?アルネイル君」

「えーっと・・・ア、アガマさんはどうしてディーチェの知識を知っているのですか?」

「ディーチェ?」

「この馬車の前に付いている魔力機関の事です」

「あぁ、あれの事か」

「ディーチェは第二技研で研究されていた機密度がそれなりに高かった技術です。それをどうして貴方が・・・」


ディーチェがエンジンの事を指しているらしい。ガレッド情報を検索してみるとヒットした。

ディーチェ。エンジンとは少し機構と言うか理論と言うかが似ている魔力機関。まるっきり内燃機関と言うわけでも無いがかなり似ている。ただ、俺の作った奴と違って魔力暴走による爆発ではなく、爆裂の魔方陣を連用する事によって高めた爆圧を一気に解放してシャフトを回転させる内燃機関と外燃機関を混ぜ合わせたような代物だったらしい。なんでも第二技研での事故とは機関内の空間を制御するための空間隔離の魔方陣と爆裂の魔方陣が過剰干渉を起こして暴走し、研究員の五分の二を消し飛ばした大事故らしい。


「あー・・・あれだ・・・。その・・・な?」

「何故貴方が知っているのですか!」

「えー・・・あ、ほらほら!イジスタリウス側の国境監視局が見えてきたぞ!」

「とぼけないでください!」


君のような勘の良いガキは嫌いだよ。

構造が似ているとは言え内燃機関を即座に見破るその洞察力は侮れたものではない。これ以上アルネイルと居ると言葉狩りに会いそうだし、さっさとイジスタリウスに入ってさっさと別れるに限る。

と言うか一緒に居る義務も義理も無いし、国境を越えたらさっさと別れるべきだな。


「あ」

「ラッヘン?」

「・・・なんでもない」


国境監視局に到着した。クレアスフェルが通行書を提示する。今回は自陣営のイジスタリウスへの入国であり、変装の必要も無い上に、アルネイルも居るからほぼ事務的な物で半ば顔パスみたいなもんだった。

クスサビと同じ様に越境の際に擬似魔力装甲の表面が少しピリピリした。流石に越境の度にこれだと外的な問題は無いものの非常にうっとうしいのでそのうちクレアスフェルに聞いてみる事にしよう。


「では私はこれで。後ほど第四技研で」


アルネイルが言葉を残して離れていく。後ほどという事はやはり行く事になるのだろうか。

まぁアルネイルの事は置いといて。監視局を出るとそこは・・・。ま、ただの森だね。国土全部が都市の国なんてバチカン位だろうしね。まして最前線とも言える国土西端に都市を配置するとしたら城塞都市だろうし。実際イジスタリウスの国境付近にある都市はほとんどが城塞都市らしい。もちろんガレッド情報だ。

ちなみに馬車は置いて行くらしいのでここから最も近い街までは徒歩での行軍となる。そこからは馬を使うらしい。ちなみに例の酒は後ほどクレアスフェルの所へ届けられるそうだ。


「アガマ殿?ボーっとしているのは構いませんがしっかり維持してくださいね」

「えー?俺は別に困んねぇんだけどなぁ」

「貴方は困らなくても私は困るのです」


どーにも徒歩になるとこういう問題が出てくる。特に女性が同伴している場合にな。

まぁ簡単に言うと虫である。蚊とか蝿とかそういうのね。森の中を藪を掻き分け進んでるんだからまぁそうなるよねってね。

ちなみに今俺が維持しているのは擬似的に再現した虫が好きそうな樹液とか二酸化炭素とかの塊だ。作ってはポイ作ってはポイしているとそっこらじゅうから蟻やら蝿やら全長三十センチのカナブンやらカブトムシみたいな奴らが集まってくる。地元で虫取りのために森の中に白いシーツはって蜂蜜塗ったくって懐中電灯で照らして早朝回収しにいった時の事を思い出すな。こいつらこっちじゃ夜行性じゃないのかね。


「なんで馬車返したんだよ。そのまんま乗ってきゃ良かったじゃねぇか」

「あの馬車は国境監視局の備品だったんです。だから返さなきゃならなかったんです。次の街まで行けば第一中隊が待機しているので、そこで馬を確保します」


第一中隊とはクレアスフェル麾下の諜報師団の内、戦闘行動が可能の者達を集めた中隊だ。モルベスが指揮している第二中隊が商人や旅人に偽装して情報収集するのに対して第一中隊は傭兵や一般兵に偽装し、酒場や兵士間との関係を伝手にして情報を集めているとの事だ。

そんでもって目立つ馬車をそんな奴らが抑えるとそれこそ目立つので遠征という名目で複数の馬を確保しておき、それを使って本国へ向かうのだそうだ。


「私としては早く帰って報告を済ませたいんです」

「酒の為に?」

「アガマ殿は黙っていれば外見は美しい少女だと言うのに・・・」

「おっなんだその言いぐさは」

「言葉通りの意味です」


クレアスフェルを弄って道中の暇潰しをする。弄ってない時は擬似魔力装甲の改良をする。どっかの恒星間航行決戦兵器みたいに手からビームだしてみたりもする。流石に星をぶった切る程の威力は出ないが。まぁ、魔力とマイクロブラックホールじゃエネルギーの格が違うだろうしな。

いや、やりようによってはできなくもないのかね。

そもそも叡知のガレッドの中にあった星崩魔法とか言うのを下方修正したのがバスタービームだしな。


「ご主人。暑い。脱いで良い?」

「まー森ん中だし湿度が高くてムシムシすんのはわかるし、気温も高いから余計暑くなるのもわかる」

「じゃあ・・・」

「だが駄目だ」

「ご主人。酷い」


まぁ、ラッヘンが脱ぎたがるのもわからないでもない。なんてったって正に日本の夏と言わんばかりの暑さなのだから。最早暑いでは無く熱いに片足を突っ込みかけている。

だが、ラッヘンに脱がれてはこちらが困る。何時、何処から誰が見ているかわからない以上、下手にラッヘンの事が知れて珍獣ハンター的な奴らに突っかかられたらめんどうだ。ただでさえハンターと言う公認グレーの職業が有るのだから下手に情報を晒すのは面倒極まる。


「もうちょっとで街です。待機している第一中隊と合流して首都へ向かいます」

「よーう!アーガマくーん!」

「へあっ!?」

「ぬお!?」

「こんにちはこんばんはお早う御座いまーっす!いつも皆の隣に這い寄るケイオス。ヴァルヴェスだよー!」


出た。いや、文字通り出た。なんかこうぬるっと出た。出てきた。

しかもヴァルヴェスが現れた隣には採掘場跡地に置いてきた例の樽があった。何故かラベルは剥がされていたがなんとなくわかる。あれはあの樽だ。

まぁそんな事はどうだって良いんだ。問題は何故ヴァルヴェスがここに現れたかだ。


「アガマ君!」

「は?」

「君は私をほんのりと侮辱した!よって私刑とする!」


ヴァルヴェスがいつの間にか持っていたハルバードで樽を叩き割る。きついアルコール臭と共に中身がぶちまけられる。

ちょっとクレアスフェルがプルプルしてるのはこの際気にしないでおこう。

ヴァルヴェスの細腕に似合わぬ膂力と速度でうっすらと白く光るハルバードが大上段から振り下ろされる。


「まず左腕!」


避けきったと思っていたが左腕が根元から断たれていた。

さらに返す刃でハルバードが上へと振り上げられる。


「左足!」


左足が切り飛ばされる。やべぇ・・・これじゃラストシューティングできねぇ。

下らない事を考えていると左からの追撃が飛んで来る。


「これで両足!」


右足も切り飛ばされた。足が飾りな訳ないだろ?ここ重力圏なんだから。

そんなこんなでほぼ達磨状態の俺に更なる追い討ちがかけられる。


「よい・・・っしょぉ!」


残っていた右腕がはねられて完全に達磨状態になった。ヴァルヴェスに足蹴にされながら無心になる。いやはや、神は全て見ているというわけかな?


「ふふん。これに懲りたら二度と私の事をクソ神とか言わない事ね」

「・・・あ、え、あの。ヴァルヴェス殿?」

「お?クレアじゃーん。ちゃおちゃおー」

「あ、いえ。あの。何故アガマ殿を?」

「クレアは気にしなくても良い事だよ」


ヴァルヴェスめ。達磨にしたらしたでしに来ただけかよ。傷口が薄緑に光ってる前衛的なオブジェクトにされた俺をほっぽってクレアと喋り始めやがった。

まぁ、ラッヘンが手足を回収してきて俺の側に持ってきてくれたから構わねぇんだけど。これだけ見たら変な儀式の生け贄にでもされた様に見えるからなー。

早いとこ修繕しなきゃな。


「おいこらクソ神」

「その減らず口は死なないと治らないほどなのかなー?」

「どうでも良いから要件を言いやがれ」


ラッヘンが頑張って手足をくっつけようとしているが右腕が左腕だったり左足が右腕になっていたりしている。最終的には全て反対の状態になった。

つまり両腕が両足で両足が両腕と言うわけだ。悲しいね。

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