閑話ターニングポイント
風呂入ってる時に思いついた話です
私の意識はたまに飛ぶ。
比喩でも暗喩でもなく。どこか、とてもとても遠い場所へと飛ぶ。
意識が戻ってくるとだいたいは体の痛みに呻く。
多分意識が無いことを良いことにあいつに良いようにされてるんだと。いつもの思っていた。
「クレア?クーレーアー?」
またあいつだ。私を両親から買い叩いた貴族。私に暴行を振るう貴族。私という弱者を陵辱し、自らが強者であると誇示し、愉悦に浸る醜い貴族。
「おいクレアぁ!」
何時しか私の体は痣を隠すことが困難な程になった。フード付きのローブでも着れば隠せるかもしれないけど、私のような奴隷と扱われる物にそんな高価な品が買い与えられる事など無い。あってせいぜい顔全体を覆うマスク位だ。それだと首筋の痣は隠せないし、前を見て歩くこともできない。襟の有る服も高価でとてもではないが、下級貴族であるこの家に奴隷の分を購入する余裕など無い。
「はっはっはぁ!クレアぁ!この間の威勢はどうしたぁ?」
貴族に殴られる痛みに悶えつつも、私はその言葉を聞き逃すことは無かった。いつもの威勢?私は何時だって無抵抗だったはずだ。奴隷は抵抗すればいとも容易く殺されてしまう。私はこの醜い貴族が買ってきた奴隷が何人も殺されていくのを見ていた。彼ら彼女らは力を持たないが故に殺された。地位が無いために殺された。この男に目をつけられたがために殺された。
今、私が殺されないようにするためには無抵抗で居るしかないのだ。威勢を見せる事など無い。
「何とか言ったらどうだぁ?」
下腹部に強い痛みを感じたのと同時に意識が飛ぶ。気絶ではない。意識は覚醒したまま、どこかへと飛ばされていく。
「・・・い・・・よ・・・」
遠くから言葉が聞こえる。女の子の声だ。遠くてはっきりと聞き取れない。
「・・・いた・・・よ・・・」
少しずつ声が近づいてくる。
「・・・い・・・いよ・・・」
声の主とすれ違う。誰に言われるまでもなく理解した。これは魂なのだと。
「痛いよ」
これは魂の訴えなのだと。
「痛いね」
「痛いよね」
魂と言葉をかわす。そのまま魂は遠ざかっていく。
私はその魂が来た方を向いて進む。この空間に居ると心が貪られそうな気がした。だから動かなければならなかった。
「痛い」
「苦しい」
「助けて」
回りからは様々な声が聞こえる。男、女、老人、子供。皆一様に私に向かって手を伸ばそうとしていた。
「助けて」
「助けて」
「助けて」
私は必死に逃げようとした。必死に、必死に逃げようと足掻いた。少しでも先に進むために。
でも、進む速度は変わらない。でも、声は私以上の速度で追いかけてくる。
声に捕まった私は必死に腕を伸ばそうとした。逃げることはできない。私は必死に叫んだ。
「助けて!」
それは私が今まで発したことの無い高い声と共に発せられた。
知らない天井。奴隷部屋とは違う、質素ではあるが清潔で整えられた部屋だ。
自分が伸ばしていた腕を無意識に眺める。その腕に有るはずの痣は無く、糸で編まれた輪っかが付けられていた。ミサンガ?ミサンガって・・・何?
「椎名!」
「麻衣!」
しいな?まい?私の名前?
「どうしたの麻衣?大丈夫?」
三十歳程の女性が呼び掛けてくる。私は上げていた腕を下ろす。
「大丈夫。お母さん」
お母さん?とっさに口をついて出た言葉は私にとっても意外な物だった。私は彼女を母親と認識しているのだ。
「本当に大丈夫なのか?椎名?嘘ついてねぇだろうな」
「大丈夫だよ・・・翔太君」
その言葉もまた、意外であった。私はこの二人を知らないし、この二人も私を知らないはずだ。
それでもお互いを知っているような気がした。
翔大という少年がとても悲しい目でこちらを見ている。こんな時にどうすれば良いのか私は知らなかった。
でも、体は勝手に少年に微笑みかけてこう言った。
「本当に・・・大丈夫だから」
再び意識が飛ぶ。先程の回廊ような場所ではなく、ちょっとした広間に飛んだ。
広間の真ん中には一際大きく輝く魂が居た。その魂はそこで椅子に座ってこちらに背を向け、優雅にお茶を飲んでいた。
「綺麗・・・」
そんな言葉が口をつい出た。その魂の放つ輝きはあまりに美しく、貴族の館に飾ってある美術品など、素人細工に思える程であった。
「あらやだもう来ちゃったの?」
その魂が語りかけてきた。依然、背を向けたままで。
「まぁまぁ、とりあえずこっちに来て座りなさいな。今珍しくあちらのお茶が入ったのよ」
言われるがままに動いてしまう。口調から察するに女性ではあるが、何故か男装をしていた。
誘われるがままに向かいの椅子に座る。目の前にはいつの間にか用意されていたお茶とお茶菓子であろうと思われる物がある。
「リョクチャって言うらしいのよこれ。あとこっちはネリキリって言うらしいわ。中々手に入らないけどとっても美味しいのよ」
ネリキリと言うらしいそれを同じ皿に乗っていたナイフの様な物で小さく切って食べる。
それは今まで食べたことが無いほどに甘く、美味しかった。リョクチャと言うお茶も飲んでみる。少しの苦味がネリキリの甘味と合わさってとても美味しい。暖かいお茶を飲んだのは何年ぶりだろうか。
「さてと。落ち着いた?」
私は頷いた。最初に広間に来たときは驚いて回りを見る余裕が無かったが、落ち着いた今、見回してみると様々な植物や花が有り、見たことの無い鳥が飛ぶ温室の様な場所だった。
「じゃ、まずは自己紹介ね。私はランツェルフェイル。聞いたことある?」
聞いたことは無かった。だが、高貴な外見と身のこなしで有るにも関わらず一節の名前。そしてこんな場所に居るという事からいずれかの神ではないかと推測した。
神とは、世界を見守る存在であり、時に干渉し、秩序を守る者と言われている。その外見は人に良く似ている者から人とは似ても似つかない化け物の様な外見の神も居る。そして神は一様に一節しか名前を持たない。人は地位が高いほど名前が長くなる。家が継ぐ名前、親がつける名前、自ら名乗る名前。最大でもその三節である。
「まー聞いたことないよね。マイナーだもんね」
彼女は結っていた長い髪をほどいた。その動作に何の意図があったのかはわからないが、気がつくと男装ではなく、膝丈のドレスとなっていた。中級から下級の貴族がよくやっているとにかくドレスを盛る事によって自らの富を誇示する行為が有るが、それは逆に品が無いとされている。昨今は盛りすぎない様に盛るのが主流なのだが、ランツェルフェイルと名乗った彼女は上級の貴族でさえ妬むであろう、美しいドレスを身に纏っていた。
「ま、あれだ。なんか偉い人とでも覚えておいてね」
幼い様で大人らしい、とても不思議な微笑みを浮かべて笑いかけてくる。思わずティーカップを落としそうになる程に見いてしまった。
「さて・・・本題に入るけと。君は欲しいものとか有るかい?」
コクリと頷く。欲しい物はそれこそたくさん。考えれば考えるほどある。
でも、一番欲しい物と言えば一つしかない。
「・・・それが君の欲しい物かい?」
再び頷く。ランツェルフェイルが何処までの願いを聞いてくれるのかわからないが、望むだけならば何も問題は無いし、神頼みなんて信用できるものでもない。
「ならば与えよう。その望みに応えるこの力を。・・・出来れば使わない様に気を付けなさい」
ランツェルフェイルの言葉を皮切りに意識が飛ぶ。今回はいつもと違う事が多かったが、概ね問題はない。
いつも見ていた奴隷部屋の壁と床が目に入ると同時に腹部を蹴りあげられる。
「クレアぁ?っはっはっは!」
二度と見たくなかった醜い顔が視界に入る。今、願うならば。ずっとあの広間に居たかった。ずっとあの部屋に居たかった。
ずっと。ずっと。ずっと。
ずっと居ることができないのならばせめてもう一度。その時が来るまでこの貴族に嬲られるのなんて御免だ。時が来る前に私の体が持たない。
彼を排除しなければならない。
「はっはっはっ!さっきまでの威勢はど・・・お・・・し・・・」
排除・・・。そうだ。排除すれば良いんだ。
邪魔なものは排除すれば良いんだ。貴族だろうとなんだろうと排除してしまえば良いんだ。
「や、やめ!クレア!わ、私が悪かった!許してくれ!」
私の体が硬質化していく。鱗の様なものが生え、背中と尾骨の辺りから何かが生える感触がする。目が充血し、視界は真っ赤に染まる。力が漲る。何もかもを壊し、破壊し、排除する力。
「やめっ!あ!がっ!」
口の中に血の味と鉄の臭いが広がり、部屋には赤色の塗装が広がる。
血の臭いが充満した部屋の扉を吹き飛ばす。まずはここを出る事を目標にしよう。
「!?貴様!何者だ!」
騎士だ。邪魔だ。殺そう。
「ぬっ!?」
騎士が私の爪を剣で受け止める。剣は欠けて、私が圧し勝っている。このまま首を落として食べよう。
左手の爪を反対側から振りかぶる。
「がっ!?」
騎士鎧の隙間をついて爪が入る。そのまま左に振ると首が裂け、動脈から血が吹き出る。
剣を持っていた手から力が抜けて崩れ落ちる。
殺してから気がついたけど鎧が邪魔で食べにくい。放っておこう。
「ふむ。奴隷が何らかの力を持っていたのか」
後ろから声がする。後ろを振り向くと甲冑を着ていない騎士が居た。カモだ。鎧が無いから食べやすいし何より帯刀もしてないから殺しやすい。
全力を込めて右手を振るう。
「おっ・・・と。結構速いな」
受け止められた。それも何処からともなく出てきた剣によって。
しかも先程の騎士の剣と違って欠けることはなく。逆に私の爪が欠けていた。
「幻影術式。起動」
騎士がそう言うと目前から姿を消した。
直後、首の後ろに強烈な衝撃が走った。鱗を無視する衝撃に驚きながらも反撃を試みる。左手を後ろに振り抜いて攻撃する。手応えは無い。左手に従い体を後ろに向ける。
騎士は居なかった。
「大雑把な攻撃だな」
後ろから声が聞こえた。振り向くと初めと変わらない姿勢で騎士が立っていた。何事も無かったかの様に悠然と。その手には斑の光を放つレイピアが握られている。視界が赤いから色はおぼろげにしか見えないけれど。それが強い力を持っているというのは分かった。
「ほほう。炎と風で空気を操作して幻影を作るのは以外と使えるな」
「あ・・・なた・・・なに・・・」
「なんだ。喋れるではないか。・・・あー我が名はキャルレッジ。キャルレッジ・ヴァニラだ」
キャルレッジと名乗った騎士はまた消えた。その瞬間に鳩尾に正拳突きがめり込む。肋骨が何本か砕ける感触がした。その騎士は、私の知覚外の速度で接近し、懐に入り込んでレイピアでは無く拳を使った。正しく、意識を刈り取る威力の一撃だった。
・・・私は此処で終わるのだろうか。貴族を殺した罪に問われて死刑にでもなるのだろうか。
「・・・それだけの力があればきっと・・・」
キャルレッジと名乗った騎士は私が意識を手放す前にそう呟いていた。
気がつくと私は広間に居た。今はあの美しい魂は居ないようだが、変わりに大きく輝く魂が幾つか居た。
「そなたが・・・」
「ほほう・・・」
「これはなかなか・・・」
どの魂も一様に私を値踏みするような視線を投げかけてくる。でも彼らに用はない。そもそも此処に来たくて居るわけでもない。ランツェルフェルが居ないのであれば早々に立ち去りたかった。でも私は此処から出る術も、そもそも此処に入る術も無い。ただ呆然と立ち尽くし意識が戻るのを待つだけしかできない。
手持ち無沙汰に体に異常は無いか確認してみる。視界はいつも通り、手足から鋭い爪が生えているわけでもない。背中や臀部に何かが生えている感じも、皮膚が硬く感じる事もない。何もかもがいつも通りだ。
「ごめんなさいね。遅れちゃったわ」
ランツェルフェルが広間にやってきた。それと入れ替わりに先程まで居た魂達は居なくなっていた。ランツェルフェイルはこの間・・・というかつい先程と同じ様に中央の椅子に腰掛けて、向かいの椅子を勧めてきた。
私はそれに従い椅子に座る。
「力を・・・使ったのね」
コクリと頷く。彼女と私の前には赤い果実の乗ったクリームで覆われたスポンジケーキと紅茶が置かれていた。
「それはショートケーキって言うらしいのよ。美味しいわよ」
皿の側に置いてあったフォークを使って小さめに切って口に運ぶ。前のネリキリとは違い、中にも果実が入っており、さっぱりとした酸味と合わさってクリームが引き立てられて美味しかった。
「貴女に与えたその力なのだけれども・・・。使うのに代償が必要になるわ」
ランツェルフェイルが溢したその言葉には謝罪と悲しみの感情が入り交じっていた。
力と代償。その間にあるランツェルフェイルの謝罪と悲しみ。これが何を意味しているのか、幼い私には分からなかった。ただ、邪魔な物を排除するために振るうあの力を使うのに何かが必要なんだとしか理解できなかった。
「でも・・・貴女に適合する力がそれしか無かったの。私達の力量不足のせいでね」
首を横に振ってその言葉を否定する。もとより代償の有る無しに関わらず力は欲しかったのだ。それがたまたまランツェルフェイルから与えられたもので代償が必要というだけの事。ランツェルフェイルが私に対して謝罪などする必要は無いし、私もこの力を振るい、代償を払うのに躊躇いも無い。
「そう・・・。強い覚悟と決意を持っているのね」
ランツェルフェイルがそう呟くと意識が戻る感触がした。体が覚醒したのだろう。
重たい瞼を開く。
まず一番最初に目に入ったのは天蓋だった。私が今寝ているベッドから伸びる四本の柱に支えられているそれは、一目で熟練の職人による物だとわかる刺繍があらゆる箇所にされていた。
これ程の物はあの貴族の館には無かったはずだ。
「目が、覚めたかね?」
気がつくとベッドの横に男が立っていた。私を殴り倒した男。キャルレッジ・ヴァニラが。
私は咄嗟に飛び起きて臨戦態勢に入る。この男は強い。生身で勝てる見込みの無い程に。だが、無抵抗で殺されるつもりなど毛頭無かった。
「ちょっ!ま、待ちたまえ!」
キャルレッジが左手で目元を覆い、こちらを止めようとするが。そんな言葉は聞く耳を持たない。貴族は信用ならないと言うのが奴隷生活で学んだ事だ。貴族は自分よりも地位の低いものを見下す。貴族は奴隷も平民も同じように扱い、同じように使い潰す。
そんな貴族は信用できるわけがない。
「私に君を害するつもりは無いよ!だからせめて上を着てくれないか?」
キャルレッジがこちらに服を渡してくる。ベッドの上に置かれていた上等な物だ。
今の私は裸であるが。そんな事は意に介する事ではない。裸同然や、裸そのものの格好など慣れている。
だがキャルレッジはこちらから目を背けて服を渡そうとしている。これは好機では無いだろうか。このキャルレッジとい男を殺してしまえばもしかしたらここから出られるかもしれない。仮に出られなくとも、殺す事が出来れば一矢報いる事ができるのでは無いだろうか。
丁度近くのテーブルにキャンドルが置いてあった。
「着たか?着たよな?」
音をたてない様に三叉のキャンドルを手に取って振りかぶる。左から右へ、後頭部を抉る様に殴り付ける。
「・・・なんで?」
「ようやく口を開いてくれたな」
キャンドルはキャルレッジの後頭部に当たる前に右手で遮られた。左手で顔を覆ったままで。
私の手からキャンドルが奪われ、キャルレッジが別のテーブルに置く。
「何も僕は君を害する為にここに居るわけじゃない。話をするために居るんだ」
私が殺した貴族はナイニルベ・スクウェスと言う名前だったらしく、以前から様々な悪事を働いていたらしい。その一つの内が奴隷の保有だ。全ての罪状を纏め、強制捜査に踏み切った時に私が殺したらしい。
奴隷として扱われていた私に貴族殺しの罪状は無い。ただ、馬鹿な愚か者が自らの罪によって天罰を受けたとされたらしい。
何時だって人間を殺すのは人間なのに。天罰なんて馬鹿馬鹿しい。仮に天の意向だとしても決断するのは人間自身だ。
「・・・さて。事情と言うか君の現状を説明したわけだが。どうだい?私と一緒に来るかい?」
「は?」
「あぁ、勘違いしないで欲しいが。君を再び奴隷の身に落とすわけじゃない。貴族の立場に上り詰めて、奴隷とされている者達を助け出す手助けをして欲しいんだ」
キャルレッジが言うには私が上級貴族として居る事を認める書状を皇帝から頂いているらしい。腐敗した貴族の中にはナイニルベの様に奴隷を囲む貴族が少なくない数居るらしく。元奴隷で力を持つ私を抑止力として奴隷撲滅を推進するのが狙いなのだそうだ。
「了承してくれなくても構わないよ。その時は一般職の斡旋をするから。だから・・・な?とりあえず服を着てくれ」
「・・・貴方が奴隷を買ったら何処に居ようと背中を刺しに行く」
服を受け取ってそう答える。私のような悲しみを背負う人達が一人でも減るのなら、私はこの力を伴い、喜んで人柱になる。
私はこの日、貴族としてこの国に立った。
・・・・・・・・・
魂の温室と呼ばれるこの広間は、本来は神が管理し、魂を育み、育てる場所である。同じく神が管理する魂の回廊と呼ばれる場所も有るが、そこには劣化し、再び現世に生まれる事のできない魂達が数えきれない程蠢いている場所だ。
「ここに居たのか。ランツェルフェイル」
「ノーチラス。どうしたのかしら?」
魂の温室で二柱の神の会談が始まる。片方はランツェルフェイル。誕生と死滅を司る神で、もう片方はノーチラス。戦争と武勇を司る神である。
「ヴァルヴェスは少しやり過ぎではないか?」
「あら?サヴェラだって十分やり過ぎてるのでは?」
「・・・お互の眷属を擁護するのは当然か」
「それはそうでしょう?我が子可愛さってね」
ランツェルフェイルがテーブルの上に置かれていたミルフィーユをフォークで切り、口の中に運ぶ。ノーチラスはそれを見て同じくミルフィーユを口に運ぶ。クレープ生地に幾重にも挟まれている生クリームがほどよい甘さを口の中に提供してくれる。
「ノーチラス。貴方・・・」
「言わぬ方が良い。そちらとて、同じであろう」
「・・・そうね」
ランツェルフェイルがフォークを置いて天を仰ぐ。天井の見えない広間。その壁を伝う蔦の様な植物達。その植物に巣を張り、魂の卵を産む鳥達。それらを見てランツェルフェイルがため息をつく。ノーチラスは表情を変えずにミルフィーユを口に運ぶ。
「本当に・・・ごめんない・・・か弱き子達よ」
その言葉は誰の為でもなく。ただ、自らの罪を償う覚悟を確かめる様に紡がれた。
20話はもうちょっと待ってください




