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渡り烏の異世界渡航  作者: JINGoo
大陸動乱編
22/58

17倫理的に必要だから着てなさい

「ご主人。名前。欲しい」

「あーあー今考えてっから揺らすなー」


岩龍がロリっぽくなって一日が経ちました。名前はまだありません。魔物の不思議現象はガレッド情報にも殆どなくて、俺がでかくなったりカグマのような半魔物が生まれたり岩龍がロリっぽくなったりするのは前例が少ないのだ。というか半魔物の件以外はそれこそ古今東西前例が無いらしい。

つまり俺達イレギュラー。・・・やだ、排除されちゃう。


「ご主人」

「あーこらこら乗るな乗るな」


なんやかんや少しでかくなって今や全長は百五十はありそうな俺よりも少し低い岩龍が背中に乗っかろうとしてくる。ちなみにクレアスフェルが少し厚手の服を持ってきてくれたので、ハプニング的なラッキーも起きないだろう。なぜか刺身のような物まで出されていた。なにそれうらやましいんですけど。


「ご~しゅ~じ~ん~?」

「揺らすなー考えがまとまんねぇだろー?」


さて先程・・・と言うか寝てるとき以外は名前をねだってくるが、確かにこんな姿になったんだしいつまでも岩龍だのお前だのじゃ分かりにくいしな。クレアスフェルからもつけてやれって言われてるし。そのクレアスフェルはリューなんて名前をつけようとしたが拒否されていたけどな。


「・・・お前はどんな名前が良いんだ?」

「ん。ご主人がつけてくれるなら。なんでも」


そういう答えが一番困るんだよなぁ。

やれなんでも良いと言われて焼き鳥屋に連れていったらムードが無いだの、やれなんでも良いから映画を見たいと言われてコマンドー見せたら恋愛物が良かっただの。

昔からなんでもっていう言葉にろくな思い出がない。ネットで発言すればたちまち大量の返信が来たりするし。


「・・・まだ?」

「・・・まだ」


この国を出られるまであと二、三日はかかりそうだしその間にゆっくり考えていこう。

・・・っていっても日がな一日魔物用に魔力封印の檻の中に居るからできる事なんて頭の中でシュミレートするかこいつの名前を考えてやる位だ。


「んー・・・英訳するとロックドラゴンだろ?・・・いや、ロックワイバーンかもしらんしな・・・」

「ご主人。エイヤクって。なに?」

「あっあっあっ気にするな」

「わかった。気にしない」


まぁ、そりゃ英語自体が無いんだから英訳も何もないよなぁ。

確かドイツ語じゃ龍はドラッヘン・・・だったか?そっから取ってロラッヘンかクラッヘンってのはどうだろうか。そのままドだけ取ってラッヘンでも良さそうだよなぁ。


「ドラッヘン、ロラッヘン、クラッヘン、ラッヘン。どれが良い?」

「・・・ラッヘン」

「そうか。じゃ、今日からお前はラッヘンだ。よろしく頼むぞ、ラッヘン」

「うん」


命名、ラッヘン。

ガレッド情報に岩龍もとい、ラッヘンの個別ページの様なものが開設された。

アガマの影響により人化した岩龍種の一個体。岩龍の力と特性、人の知能をあわせ持つ魔物と半魔物の間に属するもの。準亜人。種属名、ロックドラゴノイド。

だそうだ。

準亜人というのが少々気にはなるが、名前をつけたら変なことになった。ロックドラゴノイドでガレッド情報に検索をかけてもヒットするのはラッヘンの事だけだ。

あまりにも個体数が少な過ぎて人目についていないだけなのか。それとも突然変異したラッヘン以外に個体が居ないのか。有力なのは後者だろう。クレアスフェルもわからなかったみたいだし。


「ご主人」

「あー・・・そのご主人っての止めてくれないか?」

「じゃあ。なんて呼べば良い?」

「アガマだ。一応な」

「アガマ。アガマはご主人。でも。ご主人はご主人」


やだなー。俺ご主人って言われるような事してないよなー。カグマ倒した後に拾っただけだしなー。


「ご主人。魔力。ちょうだい」

「魔力?・・・あー・・・ほれ。トネリコ結晶だ」

「違う。ご主人の魔力。ちょうだい」

「えー・・・」


なつかれたと思ったら今度は魔力ちょうだいときた。しかもトネリコ結晶ではなく俺の魔力ときた。別に与えるのが嫌なわけじゃない。ラッヘンが変異してしまったから俺の魔力を欲するのか。生き物経由で魔力を欲するのか。そんでもってどう与えるのか。いろいろとわからんので手出しのしようがない。


「ごーしゅーじーんー?」

「あー待て待て待て。俺の魔力じゃないと駄目なのか?」

「駄目じゃない。でも足りない」

「うーむ・・・。ちょっとクレアスフェル呼ぶからちょっと待ってちょっと。な?」


何とかラッヘンから離れてクレアスフェルが設置してくれた簡易版の通話魔術導具を展開する。檻の少し外側にあって檻から出た部分には魔力が通るので、翼端を格子の隙間から出して魔術導具を引き寄せる。


「はい。なんですかアガマ殿。強襲でもされましたか?」

「冗談でも止めてくれ」

「じゃあ何です?今東側へ抜ける手続きをしてるので忙しいんですよ」

「いやなんかな?岩龍にラッヘンって名前をつけたら変異して魔力をせびられておいちょっ!切るな!おい!おい!」

「ご主人。まだ?」


なんだよ丸一日以上かかる手続きって。長引きすぎだろ。

・・・しかし。うむ。どうしようか。

頼みの綱のクレアスフェルが現在仕事中なので長々禁酒しているせいか少し苛立っているようだ。そんなんで本当に諜報師団団長なんてできんのか気になるが、出来てるんだからそんな肩書きを持ってるんだろう。

しかしどっちにしても魔力を与えるってどうやったらっあっあっあっ。


「勝手に吸うんじゃねぇ!」

「だめ?」


めっちゃ吸われた。半分か三分の二位吸われた。そりゃ足りないわけだ。急激な脱力感と気だるさに襲われるがトネリコ結晶を使って何とか耐える。

吸った本人は特になにか変化したわけじゃないが、内包魔力がとてつもなく上がった気がする。スカウターがあったらもしかしたら数値に驚いていたかもしれない。


「・・・きつい」

「おいおい急に服を脱ぎだすな」


ちょっとこの場面を誰かに見られたらとてつもない誤解が起こるかもしれない。いや、絶対に起こる。

実際にはラッヘンが自分から服を脱ごうとしているのだが、端から見れば俺がラッヘンの服を脱がそうとしているのをラッヘンが抵抗している様に見えなくもない。


「アガマ殿。魔力をせびられたと聞いて魔力を多く含有した食料を・・・。なにしてるんですか?」

「あー・・・その・・・だな」

「ご主人が服を着せたがる。でも生えてくるからきつい。脱ぎたい」

「ラッヘン・・・でしたか?だめですよ?いくら自分でご主人と思う相手でも嫌なことは嫌と言えるようにならなければ」


うーん。このお約束。俺悪くないよね?

っていうか生えてくるとかきついとか何が生えてきてどこがきついんですかねぇ。龍だし羽とか尻尾とか生えてくるんですかねぇ。

とか思ってたら本当に背中の辺りと腰下あたりの服がそりゃあもうはち切れんばかりに膨らんできたわけですよ。しかもビリビリバリッて音までしてるし。


「・・・やっぱり。きつかった」

「あー・・・新しい服を用意しないといけないですね」

「これ、俺悪くねぇよな」

「元凶はアガマ殿なんですから責任逃れはできませんよ」


ラッヘンに羽と尻尾ついでと言わんばかりに小さい角が生えました。やったね。余計人外っぽさが増したよ。

いやこれほんとどうすんだよ。出国手続きが終わってもこんなん檻の中に入れてたら前の世界だと人権戦隊!ジンケンガー!とかね。はいはい、面白くないね。

まぁ、羽と尻尾と角に目をつむれば人に見えなくも・・・。ダメだわ、目立ちすぎるわこれ。


「・・・ラッヘン?その羽で胴体を覆う様にして、尻尾はどっちかの足に絡ませてみてくれ」

「うん」

「アガマ殿。一体何をさせるんですか?」

「出国する時のカムフラージュを考てる」


ラッヘンが言われたとおりに羽で胴を囲って尻尾を右足にくるくると絡ませる。

後はさっき背中から大きく破れた服を着せてやるだけだ。

こうするともともと服がブカブカなのも相まって不自然さは無くなり、ちょっと角の生えた亜人っぽく見えなくもない。これなら檻じゃなくて馬車の中に居ても問題は無いだろう。


「なるほど。これならフードや外套の様なものがあればただの人に見えなくも無いですね」

「だろ?」

「ご主人。きつい」

「少しは我慢しなきゃいかんぞ?」


流石にクレアスフェルがいる前で服を作り出す訳にもいかないので、クレアスフェルが持ってきた刺身の様なものを置いてまた手続きをしに行ったのを確認してから魔力を絞り出して作り出す。何故か檻の効力が和らいでいる様な気がするが気のせいかもしれない。

なんやかんやで服ができた。もともとあった服を少しサイズを上げてちょちょいと弄る。もとが結構きつかった場所を少し余裕を持たせてゆったりとした感じにする。ちょっと頑丈さもあげてぬののふく+1って感じだ。


「どうだ?多少寸胴に見えなくもないが、無いよりましだろ?」

「動きづらい」

「倫理的に必要だから着てなさい」


ラッヘンを宥めて少し落ち着く。さっきラッヘンのために服を作った時に檻の魔力封印の魔術式による抵抗が少なかった気がした。実験のために今度は尻尾と羽をとおせる様に穴開きの服を作ってみる。

案の定抵抗が無いわけではないが少ない。何らかの理由で魔術式が弱まったりしたのだろうか。


「ま、いいや。今のうちにちょっと試してみるか」

「ご主人。なにするの?」

「ちょっち実験」


先程トネリコの結晶を使ったので魔力には余裕がある。今のうちにやっておきたい事があったのだ。

まず、魔力で人型の塊を作る。ベースはラッヘンだが、流石に羽や尻尾や角を生やしたりはしないし肌の所々にある岩みたいなところも再現はしない。フィギュアの素体みたいな感じにしていく。勿論人の肌の感触を出すのに魔力は惜しまない。

そうしてできたロリっ子等身大魔力フィギュアを少し微調整していく。背を高くしたりなんだりしてこねくりまわしていく。

身長が160位ある疑似魔力装甲ができあがる。勿論固さを持たせていないために装甲としては貧弱だが、重要なのは外見だ。

今はまだ実験段階なので防御は二の次。最優先は見た目で仕上げをしていく。


「よし。かんせーい」

「ご主人。これ。わたし?」

「いやいや。俺の・・・あれ。なんだろ。えーっと・・・ほら、あれだ。こんな姿で喋ってるのも不自然だからな?」


なんとも説明し難い物が出来上がってしまった。まぁ、実際にどう使うか見ればわかるだろう。


「実際に見た方が早いか」

「うん」


なんやかんや見学会みたいになってしまったが、まぁ、始めてしまったのだから最後までやろう。

疑似魔力装甲に入り込む。力を使って魔力で組み上げたので外見は人間だが、中身は魔力が詰まっているだけだ。その魔力の中に溶け込む様に入っていく。中は俺が羽を広げても少しの余裕が残る程度まで空間が歪めてある。体内魔力流路を解放して疑似魔力装甲と半融合する。これで疑似魔力装甲を感覚にリンクできた。


「ご主人。すごい」

「だろ?」


今、魔物用の魔力封印の檻の中では外見だけなら美少女と言えなくもない者が二人居る。片方はラッヘンでもう片方は俺だ。作り上げるのが大変だったから出るにしても緊急時に脱出という形で出る事にしようと思う。服は勿論着ている。質感に拘ったとはいえ裸というのも問題なので同時進行で簡単にこの国でよく見られる服装を作り上げておいたのだ。


「ふんふん・・・。うむ。上々上々」


手足を動かして動作確認する。まだ魔力封印の魔術式がほんの少しだが機能しているので、魔力を使いすぎると疑似魔力装甲が崩壊してしまうかもしれないので、他の実験ができないのは残念だが、この疑似魔力装甲が完成しただけで十分な成果と言えるだろう。

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