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渡り烏の異世界渡航  作者: JINGoo
大陸動乱編
20/58

16貴方にも責任の一端は有ります

日本人としてね。俺ぁできれば風呂に入りたいんだ。

こうゆったりとした広さの湯船いっぱいに張られたお湯にゆっくりと肩までつかって窓から覗く月を眺めていい湯だなぁっとしたいわけだよ。

この世界に転生してこのかたろくに水浴びすらもしていない。出会い頭にハヴェルに水魔法をぶっかけられたぐらいだ。

だが今は違う!湯船がある!風呂がある!テルマエなロマエじゃない!東洋風の木風呂がある!

まぁ、流石に檜風呂というわけではないが。それでも木の香りが籠る風呂というのは良い。銭湯位でしかお目にかかれない広さの木風呂というのはやっぱり最高だ。


「ふむ・・・湯加減よし!体洗いよし!では、参る!」


まぁ、ゆっくり入るんだが。飛び込むのはマナーが悪いし危ないだろ?端から見たらでかくて黒いひよこが湯船に沈んでいるようにしか見えないがそんな事は知った事ではない。今は貸し切りなのだから。


「てんてれんてーてれっててんてれんてーてれっててんてれんてーてれっててててんてんてんててんふんふんふーんふーんふーんふーふーふーふっふっふー」


鼻歌を歌い湯船にどっぷりと浸かる。今この至福の時を味わえる事をクレアスフェルに感謝しなければなるまい。

事の発端は俺の体臭だった。火のない所にはなんとやらと言うか。クレイヴが病気や伝染病を運ぶ逸話はその体臭が原因となっていた。一体一体では大したことはないが、繁殖期等になると一ヶ所に集まり、何とも言えない異臭を放つと言う。

そしてそれは体格の大きい個体ほど強い異臭を放つと言うらしい。つまり普通のクレイヴではあり得ない大きさになったおれはそれだけ強い異臭を放つ様になっていたらしい。

ここに滞在して二日目に発覚した出来事だ。


「ふぇーきもちぃー」


久し振りの風呂をゆっくり堪能する。肩が何処にあるのか若干分かりにくいがまぁ首下まで浸かれば問題ないだろう。小さい頃母さんと一緒に入った時に肩まで浸かって百まで数えるとかやってたなぁ。


「しっかし風呂っていう文化はあるんだなぁ」


異世界ということで少しながらも文化レベルが低い可能性を考えていたのだが、これならばわりと期待が持てるかもしれない。風呂があるという時点でかなりの好感が持てる。もしかしたならば和食ないし似たようなものが出るがもしれない。

聞いた話によればこの国は二百五十年前の転生者が作り上げた国らしい。なんでもエドと言う遥か遠い国から来たとされているが、どう考えても江戸だろう。そいつは人によく似た鬼人と呼ばれる魔物になったらしく。建国した後、職人に作らせた羽織袴と反りを持った刀を愛用していたらしい。

ちなみにその羽織袴と刀はこの国の国宝とされている。


「三人目の転生者。おそらく江戸時代の武士階級の人間だろう」


ガレッド情報によると転生者の話は伝承や口伝として話されていて一人目が海に沈んだと言われていた大陸を引き上げ、二人目が魔王となり大陸に人と魔人や亜人と呼ばれる種族の複合文化を作り上げたが、勇者と呼ばれる人間に討伐され、一人目が引き上げた大陸に三人目が国を立ち上げた。

まぁー後になるほどにどんどん成果が小さくなっているわけだが、それでも国を作ったり魔王になったりしている。


「まぁ、だからって俺が何かしなきゃいけないってわけでもねぇだろうがな」

「そうだな」

「どうわぁお!?」


・・・なにこのおっさん。なんかいきなり現れたんだけど。ちょっとめっちゃ怖いんですけど。


「どーも、アガマ君。私はサイレス・キャルレッジ・ヴァニラ。キャルレッジと呼んでくれ。シャルロットの上司だ」

「あぁ、劇団の?」

「いや。本職の方さ」


クレアスフェルの本職というとやっぱり諜報師団の事だろう。

ということはこいつは少なくとも諜報師団をまとめる立場にいるのだろう。そんな奴がいきなり敵かどうかもわからない奴の前に丸腰の文字通り裸一貫で出現したのだ。クレアスフェル同様魔物と侮っているのか。それともこちらを圧倒する余裕を持っているのか。いきなり隣に出現したことを考えると後者の可能性が高い。


「あーまぁ、そんなに警戒しないでくれ。今回はただ話をしに来ただけだ。男同士、裸の付き合いと行こうじゃないか」

「話ってなんだ?」

「まぁ、いろいろだが・・・まず始めに。カグマ・ヴァルヴェスを殺したのは君かね」

「そうだ・・・と言ったらどうするね」

「やはりか・・・と、答えさせてもらう」


カグマの事をフルネームで呼び、しかも殺した事を知っているのだ。やはり諜報師団関係の人間。イジスタリウス帝国の士官に違いはないだろう。だが、そんな事はどうだっていいんだ、重要な事じゃない。

問題はなぜ俺に会いに来たのか、そして情報の出所だ。俺に会いに来た理由は先程キャルレッジ本人が言った通りに俺と話をしに来ただけなのか。危険分子と断じてクレアスフェルに黙り始末しに来たか。情報の出所だが、恐らくはクレアスフェルが俺に会った後の八日間の内に何らかの通信手段を使ったのだろう。だが、ガレッド情報にはそんな手段は無いとされている。遠話の魔術導具はあるものの、帝国からクルベまでの距離で使用できる物ではない。しかもそれなりに高価なために、中継を設置するにしても多額の資金が必要になる。


「何を勘ぐっているのかは知らんが、俺は本当に話がしたかっただけさ。カグマを殺してガレッドを奪った奴がどんなものかしりたかったからな」


うーむ。ガレッドに関してはやはり力のガレッドの事だけしか知られてないようだ。叡知のガレッドは融通の効かなさもあるが、それなりに役立ってくれている。力のガレッドはバレても多少問題はないが、創造の力と叡知のガレッドについて知られるのは少しまずい。


「俺はただ平穏に暮らしたいだけさ」

「そうか。それならいいんだ。本当にな」

「そりゃまた意味深な言葉だな」

「いやなに。伝承では三人共ただ平穏に暮らしたいだけと言っていたのでな」


伝承、三人。やはり転生者の話は地方民話的な物ではなく、どちらかというと神話に近い扱いの様だ。

ただ、転生者とバレて、それからどうなると言われれば、まるでわからないというのが回答だ。なにせ三人共、最初に割りと大都市の近くに転生したから人との接触が多く、実は人間だとカミングアウトする機会が多かったらしく、カミングアウトしたらしたで特に何もなかったり騎士団に追われたり神と崇められたりと、三者三様である。


「ま、人の言葉を解するってだけでそういう答えにたどり着くのは自然だろうがな。・・・いや、クレアスフェルはまぁ、あれだな。うむ、あれだ」


どうやらこのキャルレッジとかいうおっさんは俺が転生者だと確証が無いながらも推測を立てているらしい。ガレッド情報にはイジスタリウス帝国近衛騎士団副団長という肩書きの他に表向きの人柄程度しか記されていない。このおっさんは信用できない上に侮れない。


「この国の風呂とか建築様式とか食文化とかは三人目が持ち込んだ物だ。アガマ君にもぜひこちらの利となる行動を取って欲しい。特にニホンシュという酒はなかなかに美味であった」

「俺があんたらイジスタリウスの利になるかどうかはあんたらの対応次第だ。それ以上は今のところ何とも言えんな」

「私が欲するのはイジスタリウスの利ではない。こちらの利だ。そこのところは間違えないでくれ」


・・・これは裏切りと取って良いのだろうか。いや、単に私利私欲に走っているのかもしらん。前の言葉から単純に愉悦を欲しているだけとも取れなくもないし、帝国を裏切るから協力しろともとれなくもない。

これは非常に判断に困る。言質を取られたり言葉尻をとらえられたりしたらたまったもんじゃない。返答を濁すにしてもどう答えたものか。


「・・・まぁ、直ぐに返答が欲しい訳じゃない。風呂に入ってる時に表情の分かりにくい奴と腹の探りあいは面倒くさいからな。先に上がるとするか」


キャルレッジが風呂から出ていく。それを見送りながら湯船に浸かる。見知らぬおっさんの出現に少々驚いたが、まぁ今は深く考えずに風呂を楽しむのが吉だ。面倒くさい事は上がってから考えればいい。


「い~いゆっだっなっばばばん」


中途半端に覚えている歌を口ずさみながらぱしゃぱしゃと湯をかぶる。案外何とかなるもんだな。魔力で編み上げたマニピュレーターみたいな腕で体の各所を洗った時は力加減がわからなくて少し魔力流路を圧迫したり痛めてしまったりしたが、慣れてくると軽々頭も洗える様になっていた。


「さて、久し振りの風呂も楽しんだし、上がるとするか」


体を拭くときも魔力腕を使って拭いていく。

流石に体重計や扇風機、ドライヤーなんかは無かったが、体重計以外は似たような魔術導具が置いてあった。ちなみに牛乳はぬるいのがカウンターで売っているのを見かけた。

回りをキョロキョロ見回しながら魔物使いが保有する魔物が入る部屋に着く。勿論魔物に配慮する奴なんて例外はあるがそうそう居ないので、埃だらけだ。魔物は一昔前のアイドルの様にトイレをしないので臭い自体はそこまで悪くはない。

自分の檻を無事見つけて入り込むが違和感・・・というか一緒に入っていた岩龍が居ない。代わりと言わんばかりに体の所々が岩みたいな肌をしている十五位の女の子が居た。

魔物使いという名目上風呂を出てからいつの間にか一緒に居たクレアスフェルは表情を崩していない。


「・・・ご主人?」

「はえ?」


女の子がいきなりご主人とか言って歩いてくる。え、なにこの子知らないんだけど。なに?認知してとか言われんの?身に覚えがないんですけど。


「え、なにこの子。クレアスフェル?」

「知りません。・・・と言いたいですが、貴方にも責任の一端は有ります、聞く義務はあるでしょう」

「いやいやいやいやいや身に覚えがないんですけどぉ!?」

「それはそうでしょう。あの風呂は隣にあった女湯、混浴と水路で繋がっているんですよ。あの後お湯を調べてみたら通常よりも多い上によくわからない性質の魔力が検出されたんです」

「そ、それで?」

「あの子、湯船に入れたとたんに変化し始めてああなったんですよ」


今来た三行。

俺が浸かったら風呂に魔力が溶けていた。

その魔力が何らかの影響を与える性質を持っていた。

女湯でクレアスフェルと一緒に居た岩龍を浸けたらああなった。


「まるで意味がわからんぞ!」

「あの子は岩龍、貴方が飼い主。いいね?」

「あっはい」


もうやだこのわけわからん世界。

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