1いいえ幻聴でしょう
一話のリメイク前です
読み飛ばしても問題無いです
カー カー カー
夕方の空によく見るあいつ。ゴミとかを漁ったりする良いイメージの無いあいつ。近所のおばさんによく追い払われてるあいつ。
個人的には嫌いじゃなかった。むしろかっこいいと思いさえする。漆黒の体に狡猾な頭脳。それでいて英語名もレイヴンとかクロウとかかっこいい。
とにかく俺は烏が好きだった。
カー カー カー
でも嫌いになりそうだ。
カー カー ガフッ
あ、また喰われた。
カー ガフッ ガフッ
これが結構痛いんだ。なんか食われる端から治ってるけど痛いもんは痛い。こいつら頭とか目とか行動不能になりそうな所は避けて筋とか羽とかばっかに食い付きやがる。
ガフッ ガフッ カー
俺は無限の食料庫じゃねぇんだぞ。治るけどその分腹が減ってんだぞ。
まだ残されている目で睨むと主張は通ったようで木の実とか動物の死骸とか俺の肉片を持ってくる
いや、自分で自分を食うとかどんな罰ゲーム・・・いや拷問かよ。
カー カー カー
いっそ発狂して抵抗した方が楽なんじゃないだろうか。
カー カー カー
ん?なんか急に食うのを止めたな。治って動けない事もないし、せめて木の実だけでも食っといてやろう。
「おい」
なんか人の声が聞こえるけど関係無いね。俺は腹が減ってるんだ。
「おい!」
妙に怒ってんな。誰に話しかけてんだろ。
「おいこら何とか言いやがれ」
ぐぇ。こ、こいつ!俺の首掴んで持ち上げやがった。
「あ、こらー!」
なんか可愛い声が聞こえた。こだまでしょうか?いいえ幻聴でしょう。
「こいつ俺を無視して何か食ってやがったからよぉ・・・仕方ねぇだろ?」
「仕方なくない!」
あー可愛い声だなぁ・・・。は!まさか天使!?
んなわけないよな。いやでも今にも俺死にそうだしお迎えってことに変わりはないのかな?
「このクレイヴは!私が見つけたの!だから私の!」
「回りのクレイヴ追い払ったのは俺だろ!?」
「五月蝿いぞ二人とも。あんまり大声出してると親が戻ってくるぞ」
おおっと三人パーティーか。楽しそうだねぇ。逆ハーレム?
「そのクレイヴもってさっさと帰るぞ」
「はいはーい」
「へいへい撤収撤収」
ちょっといい加減首から手ぇ放してくれやしませんかねぇ。なんか死なないっぽいけど苦しいもんは苦しいんですよねぇ。
「おっと」
やっと放したなこいつ!見てろよ!俺だって小学校のころアニメに憧れて空手やってたんだからな!後で覚えてやがれよ!
「相変わらず何から何まで適当だなお前は」
「いやクレイヴっつったら病気を運ぶとか言われてるし長く触ってるのもなんかあれでな」
「なにその言い草ー!ちゃんと洗えば大丈夫だよ!」
お、おう。天使ちゃん(仮)は優しいなぁ。可愛い上に優しいなんてまるで天使じゃないか。
「首掴まれて苦しかったよねー。大変だったねー」
「まじかよこいつ・・・クレイヴ撫でて良い笑顔してやがる」
フフフ・・・。死にかけてた頃より大分余裕が出てきたな・・・。
・・・しかし柔らかい。何がとは言わんが柔らかい。
「・・・はぁ。ほら、さっさと帰るぞ」
こいつはこいつで苦労人の様だな。かわいそうに。
「・・・」
おん?なんだ?こっち睨みやがって。なんか文句あっかこら?
「・・・大有りだよ」
「ん?なになに?どったの?」
「いや、なんでもない」
こいつ!俺が天使ちゃん(仮)の柔らかい所に頭を付けながらなに考えてるのかを読んだのか!?
ンン!落ち着け俺、素数を数えて落ち着くんだ1、2、さぁ~ん。
「ブッフゥ」
「ちょ!?どうしたのいきなり吹き出したりして!」
かかったなぁ!アホが!クックックッ・・・俺の策にまんまとはまりおって。やはり世界!耐性の無い者には効果はばつぐんだ!
しかしこれでこいつが俺の心を読めるっぽいのはほぼ確定だな。なんで読んでるのか知らんが。このいけすかないイケメンの顔を涎と鼻水まみれにしてやるのは成功したぜ!
「・・・いや。なんでもない」
「珍しいな。思い出し笑いってやつか?」
「ま、まぁ。そんなところだ」
っち。持ち直しやがった。これでは不十分か。しかしろくにテレビなんかつけてない俺にはもうネタがない。これ以上イケメン(仮)を笑わせて面白おかしい顔にする作戦は無理だな。
じゃあかまでもかけてみるか。
「・・・」
おっとぉ?緊張したなぁ?何か来ると思って緊張したなこいつぅ!はっはっはぁ!まぁた掛かりおったわ!プークスクスゲラゲラワハハ!
「ちょつと苛ついた。喋れるようにしてやる」
「なに?急にどしたの?」
お?やんのかこら。こちとらこっちに生まれてこのかた死線を掻い潜れなかった猛者ぞ?それでもやんのかこら?」
「・・・フッ」
「ぬぁんだぁ!?そん勝ち誇った顔はぁ!」
「えぇ・・・」
「おいおい・・・」
なん・・・だと・・・?
「クレイヴが喋った・・・」
「勘弁してくれよ・・・」
こっちだって勘弁してほしいわ。