13一番有望なのは風かな
風邪引いたりして遅くなりました
そのうち別視点とかも上げます
「・・・で、そいつを連れてきちまったのか?調査をほっぽって」
「あぁ」
「はぁ・・・。まぁ、岩龍の同族も何体か居るし、今さら一匹増える位は問題ねぇだろ」
「すまないな、ハヴェル。迷惑ばかりかけて」
採石場跡地から帰って来た俺は岩龍の事をハヴェルに相談していた。なにせ龍だし、俺の手に余ると考えからだ。
「ま、手持ちの札が増えてなおかつそれがジョーカー足り得るなら貰っておいて損はねぇさ」
「お、おう」
さて。ハヴェルに岩龍を任せることができたし、少し地下室での実験をしようと思う。何せ新しく使えるようになった魔法の検証が必要だ。どんな風に使えるのか考えたり、やってはいるもののやはり実際に使ってみなければわからない。机上の空論では凄い物でも実際にはポンコツなんて事になったら色々と洒落にならんからな。
「まずは一番微妙そうな氷魔法からだな」
早速氷魔法の魔方陣を展開する。
魔力を注ぎ込むと氷の霧が魔力量に応じて出てくる。それを軽く操作してみる。
まるで俺の手足の様に動いてくれるが、集めても固まってくれない。ある程度空間密度をあげると一ミリ~五ミリ程の間隔を開けて密集するだけだ。無理やり近づけようとすると粒子が反発しあって制御を失って変な方向へすっ飛んでいく。
「ん~・・・やっぱりだめかー」
同時展開していた炎も似たような感じだ。ただ、こちらは固形ではなく、魔力その物を燃料としているようで適当に組んだ魔方陣では燃費が悪すぎる。
・・・そういえば最近の小説やらゲームやらだと炎魔法でバフができるんだっけな。
「・・・やるか?」
流石に自分で実験はしたくないので土魔法で作り上げた人形に魔力装甲を纏わせ実験する。
適当に作り上げた保温の魔方陣やらなんやらこれまた適当に魔力装甲にエンチャントしていく。
・・・失敗かもしらんな。
エンチャントしたは良いものの三つ目辺りをエンチャントしだしたところから土人形が赤熱し始めたのだ。土でこれなのだからいくら魔物の体とはいえ無理なものがあるだろう。
「氷も雷も同じかな・・・土はちょっと防御力が上がりそうな位で、一番有望なのは風かな」
氷と炎半分半分でメド◯ーアみたいなこともできないかなとか考えてみる流石に魔力装甲で実験してみようとは思わないが攻撃には転用できるかもしれない。
まあ、その前に魔法の魔力密度を上げてみたり量を調節したりで試す前にやることが山積みなわけで。
片手間に炎以外の魔力装甲へのエンチャント実験をする。
氷は内側から生えた霜柱によって魔力装甲が膨らむだけだった。雷はまぁ、土人形だと分かりにくいよなぁ。そりゃそうだよなぁ。土もまぁ・・・な?パッとしないんだわこれが。なんか魔力装甲の内側の土人形が削れて外側に砂になってパラパラと落ちてくるだけだった。ちょっとわけがわからない。
そんでもって風だが・・・。これも土人形だと分かりにくい。何となく魔力装甲の外側に向かって風が扇風機の弱より小さく吹いてる位だ。少なくとも中身への被害は他のエンチャントほど無さそうだ。
「一回実際に纏ってみるのもなぁ・・・。いやいや、まだ中身にどんな影響が出るのかわからん。今のところは要検証と言う所にしておこう」
つまりは保留である。明日できる事は明日しておけ。今日にしかできない事を優先するのだ。
まぁ、別に今日にする必要がないわけでもないし、今日でしかできない事も特には無いんだが。
「まぁ先にメド◯ーアをやってみるか。面白そうだし」
実際炎と氷の複合魔法とか凄くかっこいいしな!
早速魔方陣から出した二つの魔法を混ぜ合わせてみる。
ものの見事に相殺された。
・・・ふむ。やっぱりぶつけ合うだけじゃだめか。じゃあ次は魔方陣を混ぜて発動してみよう。
炎の魔方陣と氷に魔方陣の間に干渉の魔方陣と不干渉の魔方陣を組み込む。何となく勘で選んだ二つだがうまく行ってくれるだろうか。
「ええい!ままよ!出でよ!メド◯ーア!」
・・・あー・・・うん。なんか氷と炎のハリケーンができちゃった。
どうしようもなくメド◯ーアではない別のなにかになってしまった。まぁ、魔法があって氷と炎のある世界なら誰しも一度は炎と氷が合わさり最強に見えるとかやりたいよね。もしかしたら光と闇の魔法もあるかもしらんが。
まぁ、とにかくこの魔法は灼凍の魔法とでも名付けよう。スクロールにするにも魔力がえらく持ってかれるから実用化やまともな運用には炎の魔方陣の効率化が必要だろうが。
やはりこの世界の魔法体系を知識でしか知らない俺にとっては経験が無いからゼロからとなんら変わらない。やはりここは人間なり、居たらエルフなりから魔法知識を学んだ方がいいかな?
「たのもー!」
地下室に事務的だがでかい声がする。女性の声だ。
なんだろ。またなんか依頼でもあったのかな?いやでも俺の所に直接来るか?普通ならハヴェルこと事務所的なそういうのを通して依頼を出すのではないのかね?自称魔物使いの所有する魔物に直接依頼をいいに来るとはなんたる世間知らずなものか!
「こちらにアガマというクレイヴはおられるか!」
「あぁ、俺がアガマだが。お前は?」
「すまない。自己紹介がまだだったな。私はクルハ・クレアスフェル・シャルル。クレアスフェルと呼んでほしい」
「お、おう。よろしく、クレアスフェルさん」
「うむ。こちらこそ、よろしく頼むぞ。アガマ殿」
なんだろこいつ。急にやって来て何言ってんだこいつ。新手のス◯ンド使いか?というかこいつなんか貴族っぽい。なんというかこう、雰囲気が貴族っぽい。ボロ服着てるハヴェルと違ってかなり身なりがいい。しかもいかにも宝剣って感じのする装飾過多な鞘に収まったレイピアの様な剣を帯刀している。そして背中にも大剣を背負っている。刃の周りだけを覆う鞘に収まっているが、パッと見どう見ても危険人物。良くてバーサーカーだ。
「所でアガマ殿。貴方は一体何ができるのですか?」
「はぁ?」
「いや、ですから」
何こいつ。馬鹿なの?死ぬの?それともそんなバーサーカーみたいな外見してるから脳筋なの?剣いっぱい持ってりゃ強い的な思考回路なの?
「あんた馬鹿じゃないのか?初見の相手に言われて手の内を見せる奴が居ると思うのか?」
「いえ、思ってません」
「だろ?」
「正直言いますと魔物がここまで流暢に人の言葉を話すとは思っていませんでした。せいぜい片言か、ハヴェル殿に従っているだけかと思っていたのです」
「ずいぶんと低く見られてたもんだな」
「えぇ。たかが魔物と、私も侮っておりました・・・ので」
ので?
「少しお手合わせねがいます」
はぁーなんなのこいつ。いきなり現れて会う前から相手を種族的差別してて、手札を見せろと要求してきて、それであっさり侮りを認めたと思ったら今度は手合わせぇ?
冗談じゃねぇよ。俺はこんな脳筋と殴り合い宇宙するためにここに居るわけじゃねぇっての。いやそもそも好きで異世界転生したわけでもねぇしな!
ってかこいつ剣抜きやがった。しかも両方。レイピアは鞘の装飾ぶりとは違って赤と緑が斑っぽく不規則に混じった刀身をしている。柄は鞘に比べればおとなしめであるが、それでも俺から言わせれば十分な装飾過多だ。大剣の方は無骨と言うか単純というか、とにかく鉄の塊という第一印象だ。刃の部分だけがこれまたレイピアと一緒で色が赤と緑では無く黄色と水色っぽい色の斑だ。
「マジでやんの?」
「えぇ。大マジです」
クレアスフェルが一歩踏み込み大剣で一閃する。
まぁ、この地下室は天井高いし飛べば問題なく避けられるんだが。
とか思ってたら大剣がすこし放電した。少し飛んだ雷が着弾した場所には氷の棘が生える。それが一気に二十本ほど生えたわけだ。
クレアスフェルは次にレイピアを生えてきた棘に向かって一閃する。生えていた棘の根元が切れてこっちに飛んでくる。
「ひょわ!?」
「これを避けるくらいできてもらわないと困ります」
そういやガレッドの情報検索すればこいつの身元とかわかるんじゃね?
ってことでさっそく検索検索ぅ。・・・やってる間に棘飛ばしてこないでくれる?・・・っとあったあった。え~なになに?イジスタリウス帝国の西七番街スラム出身?いきなり暗いな。え~で?同帝国の貴族に売られて?その貴族にえらい目に合わされて?いかに暗殺するかを考えて?計画を進める上でその貴族から金品を少々くすねて?その金で装備や道具を買って?アサシネイションに成功したは良いもののバレて?今の上司にその手腕を買われて?今の名前を貰って?スラム出身という身を生かしてレジスタンス発生の抑止力になって?アサシンなのに白い装束着てるから一部じゃ帝国の白いクレイヴとか呼ばれてて?まーなんやかんやあって?帝国直属の諜報部隊の隊長やってて?で、カグマがやられてて「だが奴は四天王の中でも最弱」とかじゃなくて「カグマやられたの?マジで?やべーじゃん」とかなって?情報得るために派遣されたって感じかぁ。
「どうした?避けてばかりだな。反撃はしないのか?」
なにこいつ。煽って手の内晒させたいの?さっきから魔力推進してるけど奥の手に見えないってわけ?っていうかこの程度の話術で諜報部隊の隊長やってんの?ちょっとポンコツすぎない?それともこの娘が特別脳筋なだけ?暗殺できるだけでそんな偉くなれんの?
まぁ単純にさっきから同じ攻撃ばっかしてくるからだけど。自機狙いなんて時間差つけられなきゃ避けるのは簡単だしな。
「攻撃が強力で避けるので精一杯だからだよ」
俺ってなんて悪い大人なんだろう!堂々と小娘に嘘をついていくスタイル!嫌いじゃないぜ、そういうの。
「それにしては余裕があるように見えますが?」
「わーよけるのでていっぱいだーはんげきできなーい」
「まじめにお願いします」
真面目にっつったってなぁ。手の内が何となくわかる相手に本気出すのは何か可哀想だしなぁ。
まぁ、その手の内にかかってあげて適当にあしらって帰って貰えるなら御の字かな?
丁度クレアスフェルの技も完成しそうだし。
「貴方・・・わかっててやってますね?」
「えーなんのことかなーおれわかんないなー。うわー氷にかこまれるー」
クレアスフェルがひたすらに射出していた氷の棘は時間差が無い故に、目標。つまり俺の居た場所に集中してそれぞれが当たって砕けていた。その砕けた氷の粒子が未だ空気中に漂っていたのだ。その氷の粒子は棘が発射されるごとに量を増して、今や地下室の三分の一を埋め尽くす程の量となっていた。
それが俺に向かって集中してくる。外側に張っている魔力装甲に接触すると小さな氷の結晶がへばりつく。装甲越しとはいえ、ちょっと冷たい。・・・保温の魔方陣一枚位なら問題無いよな?
「もういいです。凍ってください」
大量の粒子が囲む様に迫ってくる。保温の魔方陣がなければ凍死していた・・・。
粒子が密集して外が見えなくなる。これは好都合だ。こちらから見えないと言うことは恐らくあちらからも見えないだろう。
という訳でこの隙に灼凍を用意させてもらおう。実戦テストにはちょうどいい。
「存外、あっけないものですね」
「そうだな。とてもあっけない」
「え?」
氷の粒子が構築していた壁を突き抜け灼凍の魔法がクレアスフェルのすぐに横に突き刺さる。ちょっと地面が抉れたが・・・まぁ、あとで土魔法で直せば良いだろう。当てるつもりは無かったが少し近すぎただろうか。
「か・・・」
「か?」
「感服いたしました。まさかクレイヴがこれ程の魔法を操るとは思ってもいませんでした」
「いや、操ってるわけでもないんだがなぁ」
実際俺は魔方陣を力で作り出して無理やり魔力を流し込んで発動させているだけだ。操っているとは到底言い難い。そもそも俺にとっての魔法は魔方陣を作るにも発動するにも魔力を使うからぶっちゃけ魔力剣の方が効率がいい。
それでも度々使うのは奥の手を隠すためのカモフラージュの部分が大きい。勿論、相手にダメージを与えられるに越したことはないが。
・・・というか俺が今やってる事ってヴァルヴェスにされた事に似てないか?
「貴方に依頼をします。是非、我が国へ来ていただきたいのです」
「あ、帝国?」
「なぜそれを?」
「なんとなく?」
嘘つきは泥棒の始まりと言うが、もう既に色々と盗ってるので問題はないだろう。多分。
「ご存知でしたら話は早いです。率直に言いますと、我が軍の西征に加わっていただきたいのです」
「ハヴェルに相談してからでも問題ないか?」
「ダメです。西征の事は軍事機密ですので」
いやそれ言っちゃっていいのかよ。お前本当に諜報部隊かよ。こんなわけのわかんねぇ魔物にそんな事喋っちゃっていいのかよ。




