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渡り烏の異世界渡航  作者: JINGoo
大陸動乱編
14/58

11じゃあ行きますか

カグマとの戦いから3日経ちました。疲れて暫く動けなかったりしましたが、私は元気です。

勿論動かないと言っても全く動いていないわけでもない。ちょーっと寝床のあるロフトから地下室までいってバスタービームの応用とか魔力の上手い扱いについて考えて実験したりしてました。

えぇ、もう。魔力推進の研究だとか俺の力で生成できる物の限界とか何を作るとどれだけ魔力が減るかとか、ね?大事でしょ?そこんとこ。


「調子はどうだアガマ」

「上々だ」


実際このお休み期間に色々と改善した部分もある。ちょっとエキゾチックなマニューバができるようになったり、生成する時の精度がほんの少し上がったり、効率が良くなったりした。あとバスタービームを固定する事もできたりした。


「色々できるようになったし、わざわざカグマを急いで倒す必要もなかったかな?」

「いや、カグマの活動範囲は少しずつだが広がっていたんだ。いずれクルベも本格的な被害に遭っていただろうさ」


実際今なら油断さえしなければカグマに苦戦する事は無いと思う。あの時はぶっつけ本番とは言え無理して魔力推進を試したり、ただでさえ急造で魔力効率の悪いステルス魔方陣を予定より多く作ってしまった。予定では最初の六本で仕留めるか、無理ならばバスタービームのオールレンジ攻撃を叩き込んでやるつもりだったのだ。

しかもそのオールレンジ攻撃でさえ、仕留めきる事はできなかったのだ。最初に刺した二本と追加の二本が刺さっていなければ負けていたのはこちらかもしれない。

今では魔力推進も使いこなせるようになり、魔力剣に適応して音速を越えさせる事もできた。


「そりゃ三日も暇だったんだからな。気になることは調べるよなぁ」

「自分の体だからな。いくら人から烏に成ったからっていつまでもわかりませんとは言ってられないからな」


最早烏と呼べる大きさでは無くなったものの、黒いから俺の中ではやたらでかい烏となっている。

たしかアイヌにはフリだったかフチだったか言う馬鹿でかい鳥の伝説があった様な気がしたが。まぁ、カグマが四メートル近くあったので、もう前世のサイズ感はほとんど役に立っていないと言える。


「それはそうとアガマ。動けるようになったんなら採石場跡地に行ってみたらどうだ?」


この三日間、出来なくてもやもやしていたのはあの採石場跡地の調査だ。

もし、何らかの目的でカグマをあの地に配し、オベリスクを渡し守護させていたのなら何か目的があるだろうと思っていたからだ。あの神聖魔法の事もある。

もし、カグマが倒され、オベリスクが持ち去られたとしたら、それをカグマに渡したヴァルヴェスとやらがなんらかのアクションを起こすのではという打算もある。ハヴェルの口から聞くことはできなかったものの、もし本人なり部下なりが来たとしたらその人となり位は知ることができるのではと思っていた。


「行くんならほれ、もしもの時のための備えだ。持ってきな。」


ハヴェルからトネリコの結晶を二十個渡された。こんなに作り出してしまって良いのだろうか。

ちなみに俺の力でトネリコの結晶を作り出そうとすると体内どころか他の場所からも持ってこないと足りない程の魔力を要求された。やはり楽はできそうにない。

だが、そうは言っても作れない訳ではないので丸一日かけて作った試作品の結晶が一つある。

丸一日かかったと言うのはそれだけの魔力を要求されたという事だ。三食の追加でおやつとばかりにトネリコの漬物をつまんでギリギリ足りたのだ。それだけ詰め込んでようやく一個をハヴェルは二十個も用意した。


「いやなに。三十年物までの一部のトネリコ酒が一部結晶化してたからな。蒸留室は品質を保つために高濃度の魔力で満たされた状態なんだが・・・その影響かな?」


どうにもトネリコの結晶は実から絞り出した品質の良い純粋な魔力の塊らしく、生成するときにも高濃度の魔力に晒しつつするのだそうだ。そのため、トネリコ酒の蒸留室が生成に適した環境になっているらしい。つまりそんな環境で保存されているトネリコ酒だ、アルコールが発生しているとはいえ、魔力の含有率は高い。それが結晶化してもおかしくないという事だ。

こんど地下室も魔力で満たしてみようか。


「こりゃあ二十九年物も怪しいなって思ってな。二十年物まで遡って確認してみたが、その全てに結晶が生成されててな。年によって度合いは違うものの、古い物ほど結晶化の割合が高くてな。こんどからトネリコ酒を作るときには魔力の品質保持に頼らない方が良いかも知らんな」


飲める酒が減ったハヴェルの愚痴は放っておいて、採石場跡地へ向かう準備をする。この三日間で俺が考え、不承不承ながらハヴェルに作って貰ったベルトに付いているアイテムパックに先程貰ったトネリコの結晶を入れる。あまり使いすぎると体に良くなさそうなのでできれば使いたくない。

今着けているベルトは魔方陣を写したスクロール二十枚を持ち運びできるスクロールパックと回復薬やトネリコの結晶などのアイテムを入れられる某猫型の四次元なポケットみたいなアイテムパックが付けられている。勿論許容量はあるが。スクロールパックにはバスタービームの魔方陣と雷、炎、氷、風の魔方陣を四枚ずつ入れている。こうしておけば緊急時に魔力を使わずに魔法を行使できるというわけだ。

まぁ、スクロールを作る時には俺の力を使うからどのみち魔力を使うのだが。

雷は言わずもがなカグマ戦の時に使ったあれだ。炎はまぁ・・・言わなくてもなんとなくわかるだろう?氷はなんかイメージと少し違った。氷のトゲとか柱とかを作れるのかと思ったらダイヤモンドダストだった。つまり氷の霧を作り出しただけだった。要研究だ。風は・・・なんというかまぁ、風だったかな?扱いが難しそうだけどその分使いこなせば強そうだ。


「ハヴェルも来るのか?」

「いや、俺は酒蔵を見なきゃいけないし結晶化しないように改善もしきゃいけない。まぁ、できなきゃ売るだけなんだがな。何せ酒は百年物まであるし結晶は採り放題だろ」

「商魂たくましいな」

「なにかと金のかかる職業だからな」


まぁハヴェルが来ないなら移動時間が減るので調査をするのに丸一日働いたとしても二日で帰ってこられるわけだ。こういうときこの体だと魔力の補給だけで活動できるのがうれしい。疲労を感じないわけじゃないがな。


「さて、じゃあ行きますか」


カグマ戦の時にはハヴェルも居たので荷馬車を使ったのだが、今回はベースキャンプを建てる必要も無く、ましてハヴェルが居ないので荷馬車を使う必要がない。荷物なんて無いに等しいベルトのみなのもあって、のんびりと空の旅を楽しむ事ができる。

更に風の魔法を使うことにより魔力推進よりも効率よく、長距離を飛ぶ事ができていた。魔力推進はその名の通り、魔力を推進力として後方任意な方向に高圧放出する事で加速する方法なのだが、その分魔力をそのまま使用するので効率が悪く、急な加速には問題ないのだが、長距離を飛ぶなら魔力推進よりも効率の良い風の魔法を使う方が良いのである。


「あの時はぶっつけ本番だったからなぁ。威力が高そうだからって真っ先に練習した雷撃の魔法だけしか使えなかったからなぁ」


風魔法の力もあって予定よりも早く到着できた。もしかしたら一時間もかかってないかもしれない。


「さてと・・・まずは仮拠点だな。流石に見えやすい所に作るのは忍びないからな」


オベリスクのあった横穴のすぐ隣に仮拠点を作る。たしかハヴェルがレイラインが通ってるって言ってたけど当たったらその時はその時だ。

横穴のすぐ隣に新しい横穴を作る。オベリスクの横穴ほど大きくは無いものの入り口は直径二メートルの穴を堀、中に入って少ししてからで少し広げて直径四メートルのドーム型の洞窟を作り上げる。即席の土魔法だが、案外役に立ってくれた。


「ふんふんふふーんふんふふーん」


鼻歌混じりに仮拠点を作り上げている。細かい所まで土魔法で作り上げるから練習にもなるし、魔力腕でやらなくてもいいので魔力の節約にもなる。


「装飾はこんなもんかねぇ・・・」

「いいじゃんなかなかのセンスだと思うよ」

「そうだろそうだろ~?」

「やっほ、ヴァルヴェスです」

「・・・はぁ!?」


ちょっと気づかなかった。なにこいつ。ヴァルヴェス本人?どうみてもただのロリっこなんですけど。なに?こいつをカグマは神とか勘違いしてたの?馬鹿なの?死ぬの?あ、もう死んでたわ。


「いや~カグマ君まで倒してくれちゃったんだねぇ」

「なんでいきなり現れたんだ?」

「こっちからすれば君がいきなり現れたんだよ?僕の結界が破られたから来てみたらカグマ君は居ないしガレッドも持って行かれるし」

「ガレッド?それがあれの名前なのか」

「そそ、力のガレッド。カグマ君にはただのオベリスクって言ってあったけど正しくはガレッド。君は既に力も含めて二つも持っているようだね」


ヴァルヴェスと名乗ったこいつは本人の可能性が高そうだ。影武者や、偽装だとしてもなんらかの関係性はあるだろう。

それにこいつはオベリスクの事をガレッドと言った。そしてその口振りからカグマでさえ圧倒する力の持ち主だとわかる。

外見は普通の少女だが、油断はできない。結界を張り、半魔物を圧倒できると思われる力があるとすれば、今は勝てる時ではない。不意を突こうが寝首を掻こうが無理だろう。


「そう警戒しないでよ。何も君を始末しに来たとか気に入りの玩具を壊されたから復讐しに来たとかそう言う訳じゃないよ?ただ、君の事が知りたかったんだ」


やべぇ。怖ぇ。今まで目を開いてなかったのだが、それが開かれた。なんの変哲も無いただの瞳。なのだが、その瞳に恐怖を抱かずにはいられなかった。

訳のわからない恐怖。例えるならクトゥルフ混じりの日本ホラーと言うか・・・なんというかとても形容し難い恐怖だった。悲鳴さえ上げられない。金縛りの様な恐怖。


「君は恐怖を感じたのかい?」


そう問われた。声を出す事も首を振る事もできずにただ立ち尽くす。

今の俺ではこの化け物に敵わない。


「ま、いいさ。僕は君の事を知るために君と話がしたくて来ただけだからね」


ヴァルヴェスが眼を閉じると恐怖心が無くなる。これがヴァルヴェスの力なのか。それとも単純な恐怖なのか。


「さ、話をしようか」


そう言ってヴァルヴェスは酒樽を取り出した。

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