10 また大きくなってないか?
落ちたカグマはハヴェルに任せて俺はカグマが守っていた採石場跡地へ向かう。外見は日曜朝にやってる特撮とかでよく出てくる採石場って感じだ。真ん中に立って変身!とか言いたくなる。
「カグマはなぜここを守っていたんだ?」
壁をペタペタと触ってみる。恐らく罠等は無いと思うが、油断せず、用心いて探って行こう。
魔力で腕を作り上げる。全ての結晶を使いきったので今は魔力が足りないので物理結界と魔力装甲は張っていない。
他にも低燃費な魔力の糸を編み上げて棒を作り、壁を叩く。透視なんかは使えないから地道な捜索になる。
「多分なにかあると思うんだよなぁ」
コツコツ、ペタペタ、コツコツ、ペタペタ。
そんな音がひたすらに響く。
「いい加減なんか見つかってくれないかな。流石に何も有りませんでしたじゃ笑えねぇんだけど・・・」
コンコン。
棒で叩いた場所の音が変わった。他の腕と棒をその周辺に集め集中捜索をする。
「・・・結構でかいな」
カグマが入って尚、余裕のある空間が隠されていた。恐らく認識阻害の結界か何かだろう。
「殴って壊れるか?」
魔力の腕で殴ってみる。腕を構築していた魔力が霧散してしまう。只の結界ではなさそうだ。
更に周囲を探索する。岩肌の所々、目につきにくい所に刻印の様なものが刻まれている。まるで今まさに起動しているように明滅している。
「・・・神聖魔法か?」
神聖魔法とは、防衛陣地の構築や強力な結界を張ることのできる魔法である。その能力は単純な結界を遥かに凌駕するほどの防御を誇る。
欠点として特徴的な魔術刻印を結界の外に幾つか刻む必要があり、それがひとつでも破壊されてしまえば結界を破るのは容易にできる。
主に大国の防衛の為や戦時中に本陣を防衛する為に使われる。物理的にも魔法を用いても破壊する事は難しいとされている。
「たしか刻印を消すなりすればよかったんだよな・・・」
棒を使ってガリガリと削る。岩に楔か何かで刻まれたようでこのままだと時間がかかりそうだ。
棒をツルハシ状にしてカツカツ叩いてみる。
数分かけて消す事ができた。
「消えないな・・・ダミーだったか」
神聖魔法による結界はその性質上、刻印のダミーをいくつも用意したり、本物の刻印を上手く隠したりして破壊を容易にさせないように運用するのが普通となっている。
この結界を張った物は中々に人並のズル賢さを持っているようだ。
「そういえば・・・神から力のオベリスクを授かったとか言ってたよなあいつ」
こんな人間臭い神様が居るもんかねぇ・・・。そういやだいたいの神話の神様人間臭ぇな。日本神話も北欧神話もだいたい人間臭かったような気がするぞ。
「まぁ、イタズラ好きの神様だっていたしな。人間臭い神様が居たってなぁ」
もしかしたらカグマの死体から力のオベリスクがゴロっと出てきたりしねぇよな。早いとこ本物の刻印探して消さなきゃならんな。
思ったが吉日、善は急げだ。・・・と言ってもカグマとの戦闘で結晶は使いきったから急ぎようもないが。
「これでいくつめだ?六個目ぐらいか?」
この結界を構築した奴は随分と用心深い奴なんだな。あからさまに本命と思われるような隠し方をしておいて偽物でしたーとか。仕掛けた奴に殺意が沸くと共に絶対に解除してやると言う決意に満たされる。
「はーイライラする。確かにこれだけの規模の神聖魔法を維持するなら大量の刻印が必要に必要になるしな。ブービートラップが無いだけありがたいと言うべきか。しかし魔力の供給はどうしてるんだ」
ぶつぶつと独り言を言いながら十三個目の刻印を潰す。バチッという感触と共に結界に穴が開く。どうやらやっと当たりを引いたようだ。
開いた穴はそこを起点に他の刻印のあるはずの場所へ向かって収束していく。
「今までの全部当たりってわけかよ・・・。まてよ?確か神聖魔法の結界はひとつでも当たりの刻印を消すと消えるんじゃ・・・」
オベリスクの情報や知識を検索してみる。例外ありとの事だ。特殊な術式や魔方陣を組み込む事により全ての刻印を消さねば結界が消失しないタイプにできるそうだ。ただ、その分普通に張るより防御は下がるらしいが。
「もう少し情報をしっかり確認しておくべきだっな」
結界が無くなった今、直径七メートルを越えそうな大穴が開いていた。その奥にこの間レイラインを塞いでいたオベリスクの上半分が削れ、半実体化している様なものが刺さっていた。
「これが力のオベリスクか?にしては今にも消えそうな感じすんな」
レイラインに刺さっていたオベリスクはもう少し光っていたと言うのに、力のオベリスクは今にも消えそうな鈍い光が遅い間隔で明滅しているだけだ。
「これを吸収しても大した力は得られそうにないよなぁ・・・力のオベリスクとかいう名前の癖に・・・」
そう言って触れてみる。別に力が欲しいかとか聞かれなかった。代わりになんの警告も無しに大量のエネルギーが流れ込んでくる。魔力ともなんとも言い難い。生命力と言われてもおかしくない膨大な力が流れ込んでくる。純粋なる力。今にも消え入りそうだったオベリスクからこれ程のエネルギーが得られるならば既に無かった部分を吸収した者は一体どれ程の力を得ることができたのだろうか。
「・・・あぁビックリした」
オベリスクは消失した。レイラインを塞いでいた時と違い、深い穴は開いていない。
もしかしたらレイラインから魔力を吸い上げていたからあれだけ力強そうなオベリスクになったのだろうか。そもそもこのオベリスクは周囲の魔力量によって何か変わるのだろうか。
カグマは力のオベリスクと言っていたな。レイラインを塞いでいたオベリスクと違って力のオベリスクは純然な力だけ譲渡してきた。そしてレイラインを塞いでいたオベリスクは力は微々たる物だったが、情報と知識を譲渡してきた。さしづめ今吸収したのが力のオベリスクならレイラインのオベリスクは叡知とか知識と言えるのではないのだろうか。
「おいおい。大丈夫か?こんな横穴有るなんて聞いてな・・・おわっ!」
丁度オベリスクを吸収し終わったタイミングでハヴェルがやってくる。人の顔見ていきなり驚くとは何事かね。
「お前・・・また大きくなってないか?」
ハヴェルの疑問を聞き、背伸びをしてみたり翼を広げてみたりして簡単に確認してみる。
・・・でかい。全長はよくわからないが翼を広げきって翼端から翼端まで二百五十センチはありそうだ。前の鳶ほどの大きさから一回り以上に大きくなっている。
「そんな事はどうだっていいんだ。重要な事じゃない」
「いや重要だろ!?」
「ヴァルヴェスという名に心当たりはないか?」
そう。ヴァルヴェスだ。これはオベリスクの情報にも載っていない事なのだ。もしヴァルヴェスと言うのがカグマの言う神ならば色々と知っておかなければならない。
「ヴァルヴェス・・・ヴァルヴェスねぇ・・・。どうしてその名を?」
「カグマがそう名乗った。カグマ・ヴァルヴェスと」
「そうか・・・」
「何か知っているのか?」
「知っている・・・と言えばどうするんだ?」
はて。どうすると聞かれれば何も考えてなかった事に気がつく。ヴァルヴェスを知り、知ってどうする。なぜオベリスクをばらまいているのか聞き出すか?問答無用で殴りかかるか?何故俺はヴァルヴェスの事を知りたがった?本当の事を知りたいからか?
「今は・・・まだわからない」
「だろ?知らなくても良いことは知らなくていいんだぜ」
「・・・喋る気があるなら聞かせてほしい・・・どういう関係だ?」
「はぁ・・・。ただの恩人。それだけだ」
ハヴェルはきっとこれ以上喋りたがらないだろう。聞くだけ無駄、ということだ。
「実験場は確保できたんだ。今日は帰るぞ。レヒドも待ってる」
「あぁ、すまない」
とりあえず今日はこれまでにしよう。まだ昼時だがカグマとの戦闘で魔力と体力を使いきっている。いくら力のガレッドを吸収して回復したとはいえ疲労は残っている。今日はゆっくり休む事にしよう。
神聖魔法は結界専門のルーン魔術みたいなもんです
一応攻撃魔法もあります




