三話 自称少女は傷つかない
―――昼休み―――
僕は文芸部部室で、一と結城と食事の待ち合わせをしていた。
本来は一と二人で食事をしながら、一が学校へ来た理由を聞くつもりだったのだが、残念系とはいえ、一は美少女のカテゴリーに分類される。
そんな彼女と二人きりで食事なんて純情な僕にとっては負担が大きすぎる。
なので僕は、異性として見なくてすむオサレ幼女の結城を誘うことで負担を少しでも軽減しようと考えたのだ。
……しかし、遅い。待ち合わせ時刻から十分も過ぎている。
トントン
唐突に部室の扉がノックされる。
やっと来たか。遅いぞ!と文句を言おうと扉を少し強めに開けると――
イケメンがいた……。
すーっとドアを閉める。
よく見ると、後ろに一と結城も居たようだが、そんなことは些細な問題だ。
しかし、何故にイケメンがこのようなところにいるのか……?
勇気を振り絞り、もう一度ドアを開け、イケメンに問い掛ける。
「誰ですか……?」
これが僕の精一杯だった。
すると僕の目の前のイケメンは、その持ち前のイケボで……
「こんにちは♪私は工藤 湊ヨ♪あなたが黒葉さんネ? よろしく♪
もし良ければお姉さ――」
僕は扉を閉めた。
何か不審者が居たみたいだが、手に持っているメロンパンに比べれば些細な問題だ。
二人は結局来ないみたいだな。さぁ、さっさと食事を済ませるか。
ガラガラ
「閉めないでヨ; 傷付いたわヨ!」
「すみません。不審者だと思ったので」
「もう、黒葉君ったらー! おこなんだからネっ」
工藤さんとかいうおねぇと喋っていると、結城が話し掛けてきた。
「ククク、黒葉よ、工藤は我の親戚なのだ……。こいつも一緒に食事したいと言い出してな、
連れてきたのだが良いだろうか……?」
「まぁ、想定外だけど良いよ。どうせこのメンバー濃い奴の集まりだし、
一人増えたところで、変わらないしな」
「ウフフ、ありがと☆黒葉君って優しいのネっ♪」
「あら、黒葉君、あなたってオネェにまで好かれたいのかしら」
「一、お前、僕を弄るときだけ会話に乗るのやめろよ。それに工藤さんにも失礼だろ……」
「黒葉君……あなたの言葉が的確に私の心を抉ってるわヨ……」
「ククク、皆、仲が良いな……。これがディスティニーか……」
「厨二乙……」
「な、黒葉ぁー!!我にとって其の言の葉は禁句であることを知っておろう!! 」
こうして、自意識高い系と厨二病と残念な少女の残念グループに新たにオネェが加わったのだった。