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嘘吐き少年Xと狂言少女Yの事件簿  作者: 憂ブロ
ファイル1:4月1日、癒しのバッグは桜の花びらのように消え行く
6/13

page5 嘘吐き少年Xは鍵のかかった扉への階段を登る

「あんた……。何でわ」

「何で私の名前を知っているのかとでも言いたそうだね。ま、簡単なことだけど後で教えてあげるよ。あなたのよく知る人で……って、」

 草のカサカサとした音が聞こえ、そこに立ちはだかる人物を目にしたのか、目の前の女性、井川みずきが愕然とした顔で身を引く。その人物が誰なのか、半分わかりながらも、わざとらしく驚いて振り返る。

「見てたの?」

「ちょっと解ちゃんが心配でさーっ♪」

 その声の主はウインクをして答えてみせる。その呼び方と語尾は言うまでもなく、この事件の被害者、相田(あいだ)癒雨子(ゆうこ)である。


「心配って……。信じてくれてたわけじゃないんだ……。」

 てっきり完全に任せてくれてたのかと思っちゃったよ……。

「ま、解斗なら仕方ないよね。」

「お前には何も聞いてねえよ!!」

 矢弥が僕のことを信じるはずがないのは百も承知だよ!!

「私はどうすればいいのよ?」

 僕と矢弥、そして癒雨子の漫才のようなやり取りを見て、もう一人の女性は身を引いたまましらっとした目をして呟く。まあ、ごもっともなんだけどさ……。

「どうすればいいのよじゃないよっ! みずきっ!」

 一見華やかな場のように見えた空気が一瞬にして氷のように戻る。


「何でっ……ひっく……こんなっ……!」

 笑顔満開の女性が見せるその涙に井川みずきは更に言葉を詰まらせる。それを何とか飲み込んだのか強気かつ、冷静ではない狂った表情で彼女は言う。

「あ、あんた!! 勝手に決め付けないでよ!! 私じゃないんだって!!」

 あんたとは、癒雨子ではなく恐らく僕のことだろう。本当ならキレられるのはお門違いなのだが、まあこの状況なら仕方あるまい。

「でも、他に誰がいるんだよ?」

 さっきも仕掛けはしたのだが、これでも認めないならもう一度仕掛けるまで。相手が冷静じゃないのがわかればあとは単純。冷静さを失えば大きな穴すら気づかない。普段なら逃げられるようなことも、この状況じゃ束縛されているも同然。


 そうして、わざと馬鹿らしく、馬鹿らしいことを言ってみせる。それに対して、逃げ場のなくなった彼女は、どうにか逃げようと頭を捻らせているんだろうけど、

「そう簡単にはいかないねっ?」

 目を細くして嘲笑うような表情をして言うのは、癒雨子だった。

 心読まれたっ!? こわいよ……さっき泣いていただけに、することも表情もさ……。そして井川みずきはぐっ……とこれでもかというくらいに僕を睨みつける。

「睨んでも何もないよ?」

「何もないことはないわ。」

「何か探してるってことは犯人ってことだよね。やっと認めてくれるの?」


 小学生並なことだが、焦っているとそんな穴にも気づかずに自分も狂っていく。それがこの穴。嘘は他人だけに吐くものでもない。むしろ、他人に嘘を吐くなら、まず自分に嘘を吐かないと。

「犯人が私とは限らないじゃない。」

「まだそんなこと言うの?」

「あんたの言ってることは不十分だわ。」

「何かな、言ってみなよ?」

「そうだよーっ♪」

 僕と井川みずきの睨みながらのひたすらな言い合いに癒雨子が肯定し、そして沈黙。

「ほら、君の番だよ。何も言えないの?」

 そう挑発するが、空いたのはほんの数コンマで、


「違うよっ♪ 解ちゃんの番だよーっ♪」

「……は? 癒雨子、何言ってるんだ……?」

「解ちゃんの説明は不十分だよっ♪」

 不十分? 何がだ? 不十分なところなんてあっただろうか……? すると癒雨子は片目を閉じて裾を引っ張り、解ちゃん解ちゃん、と続ける。

「す・い・りっ♪」


 すい……あ、あぁ、そういうことか。納得し、再び井川みずきに向かい合い、言う。

「わかったよ。説明してあげる。君が思うままに、君が望まないことを、君が納得するまでさ。」

「そうよ。ちゃんと説明してちょうだい。」

「そう急かさないで。……えっと、君はまず何を知りたい?」

 冷静さを保つようにしっかりと頭で整理し、問う。

「そんなの、私が犯人じゃないことよ。」

「わかったよ。じゃあ逆に、君が犯人じゃない状態ならどうなってたか、説明すればいいのかな?」

 そういうと、井川みずきは更に僕を睨みつけてくる。

「ありのままを説明すればいいだけじゃない。」

 そう言うと思ってた。


 それじゃあ、と得意げに笑ってみせて続ける。

「ありのままを説明しよう。」

 そして思い出したように人差し指を立てて井川みずきに近寄る。

「あ、そうだ! 君も一緒に考えよう。よし、こっちに来て。」

 それを聞くと、何か言うと思ったが、彼女は自分の無罪の証明の為か、無言でついてくる。随分と自分を犯人じゃないことを通すのに自信があるんだな。そう思いながら、ギザギザに切れた葉っぱのあるところへ案内する。癒雨子と矢弥もついてきているようだ。


「じゃあ、順を追って説明するよ。まず、最初はここ。ほとんど君の言う通り。ただ一つ、凶器だけ違うけどね。」

 意味深に笑って話を続けようとするが、

「凶器はハンガーじゃないの?」

 井川みずきは、驚いた表情をしたつもりなのだろうが、追い詰められて表情が固くなっている。

「白々しいね。ま、犯人であることを認めないのなら仕方ないか。」

「だから私じゃないって」

「わかったわかった。」

 落ち着いた声音で話す僕に対し、相変わらず冷静さのない焦った声音で彼女は否定する。もうこれだけで犯人だってバレバレなんだけどなぁ。ま、感情論だけではいかないこともあるので、ちゃんと説明はしておこう。


「凶器は君が欲しがってた釣り針だよ。」

 その一言だけで彼女は歯を噛み締めながら冷や汗をかいていた。それを目に入れながら僕は続ける。

「そしてその釣り針を釣り糸に通し、このマンションの2階ぐらいかな、そこの窓から、正に釣りの如く投げ入れた。」

「だから何だって言うのよ……!」

「説明してって言ったの君じゃーん。」

 ブー、と文句を言うが、それはさておき。更に僕は続ける。

「そのとき、犯人の考えが甘く、恐らくバッグの重さからかな、下の方を引きずって、地面に跡はつき、この草木にも引っかかり葉っぱはブチブチちぎれて、釣り糸も切れて、傷だらけ。これじゃあ釣り師でも欲しがらないのに、君はこの釣り針をもらって、感謝した。」


「ぐ、偶然、欲しかったのよ……。」

 井川みずきの表情はどんどんどんどん絶望的になっていく。そしてどんどん否定が甘くなっていく。

「何でも偶然で通ると思わないほうがいいよ? ま、それはともかくさ、聞いてよ。」

 彼女の聞く体制が整ったのを確認して話を続ける。聞こうとはしてくれるあたりはありがたいものだ。

「釣り糸が切れて、ここにあったはずのバッグと、釣り針を、犯人は回収しに来るはず。そう思って待機してたんだ。そして僕が会ったのは、君と、君の前に来たこの男性。」

 そう言って僕は紙を取り出し、彼女に見せる。

「その男ではないわけ……?」

 矢弥や癒雨子からも聞かれるだろうと思った予想通りの質問に僕はまんざらでもない顔で答える。


「男は、別に癒雨子に嫉妬したりしないからね。」

 時間帯、そしてこの広場の人の多さからして、犯人が無関係者ではないのはわかっていた。そして、紙に書いてあった3人は癒雨子と仲の良い、男性2人にこいつ、井川みずき。その条件の中、話しかけた時の様子を見て、やはりこの人だと更に確信した。

 一方、僕の一言を聞いた井川みずきは、やっと納得したのか、困ったというような笑顔で言う。

「はぁ……本当に全部お見通しね。なるほど、負けたわ。……癒雨子のバッグを盗んだのは私よ。」

 そう言って認めた後、暗く、儚く、遠くを見るような、でもどこか優しい、そんな表情をして続ける。まあ、追い詰められたとはいえ、ちゃんと認めてくれるあたり、根は良いんだろうな。

「あんたの予想通り、友情、お金、美貌、明るさ……何でも持ってる、癒雨子に嫉妬して、困らせてやりたいと思ったのよ。」


「なるほどな。でも、偶然癒雨子は優しかったからよかったけど、他の人だったら、こんなもんで終わらないからな。」

 それに対し、さっきからは想像もつかないような優しい笑顔で言う。

「ええ。わかってるわ。……それに、何でもは持ってないものね。」

「……? まぁ、何はともあれ、認めてくれてありがとな。」

 彼女がその言葉を受け取ったのを横目に、終わったよ、と言わんばかりに癒雨子に視線を向ける。癒雨子はそれに頷き、井川みずきの方へ歩み寄る。

「みずき、ありがとうーっ♪ バッグはちゃんと返してねーっ♪」

 すると、意外にも井川みずきは複雑そうな表情をして言う。

「ええ、ごめんなさい。あ、あと、そのことについて、少し話があるの。」


「話?」

 聞き返すが、彼女は「あ、その前に」と続けた。

「あんた、名前、何ていうの?」

 視線は僕の方に向いている。

九州真(くすま)解斗(かいと)。」

 不思議な名前なのは仕様です。突っ込まないで。

「九州真君……さっき、嘘にハマってくれて、と言っていたけれど、気付かなかったわ。吐いていたの?」

 言われてふと気づく、そういえば、吐いた嘘について説明してなかったな。


「ああ、吐いたよ。どこか、教えてほしいって言うんだね。」

「ええ、このままじゃスッキリしないわ。」

「それじゃあ、あの時の会話を振り返ってみようか。」

 悪い部分を認めて、反省しようと聞いてくるのに対し、それなら、と僕もなるべく優しめの声音で話しかける。そうして、僕はまず、数少ない記憶を蘇らせる。その中で、そういえば、最初はあんな言葉から始まってたんだな。とかたくさんのことを思いながら口を開く。

「……君は、僕との会話の中でたくさんミスをしていたよ。所謂、墓穴というやつかな。」

 上手い具合にハマってくれたから、嘘を吐いた甲斐があったというものだ。すると井川さんはきょとんとして言った。


「墓穴……私が? ……有り得なくはないけれど、全く記憶にないわ……。」

「そりゃあ、あの時は、焦ったり、追い詰められたり、心に余裕がなかったりして、冷静さを失っていたんだよ。」

「そういうものなのかしら……?」

 わかりにくかったみたいなので、もうちょっと詳しく説明することにした。

「悪いことをすると、大抵の人は罪悪感に追われ、バレないかとソワソワするもの。そんな状況じゃ、普段なら気づくことにも、頭が回らなくなる。別の言い方をすれば、相手の言っていることと自分の考えていることの矛盾に気づかないものなんだ。」

 すると、彼女は納得したようで、ほんの少しの疑問をぶつける。

「なるほど……。そういうことね。……それにしても、私は一体どんな墓穴を掘ったの?」


「1つ目は、最初僕は、『犯罪があった』としか言っていなかったのに、君は『物騒ですね。』と言った。盗まれたとは一言も言ってないのに、君は殺人などではなく、盗みを想像した。」

 説明すると、井川さんは目を丸くしていた。

「……そんなに、意外だったかな……?」

 すると井川さんはぷっと吹き出して

「物騒ですね、って言ったら普通殺人の方でしょ。推理任されてる人が、そんなんで大丈夫なの?」

「え……? いや普通物騒って言ったら盗みじゃない?」

 するとまだまだ井川さんは笑い続けて言う。

「ふふっ。九州真君、常識外れよ。今までどんな風に生きてきたのか気になるわ。」

「え、そこまで……?」


「ええ。……それで? まさかその常識外れな解答がまだ続くの?」

「えーっ……」

 常識だと思ってることが常識じゃないと言われると、自信をなくしてしまう。だが、それは杞憂だったようで、まあいいわ。と井川さんは続ける。

「最後まで聞くだけ聞くわ。」

「う、うん……。わかったよ……。」

 こほん、と咳払いをして、スイッチを切り替えると、再び説明に入る。

「2つ目は、僕は盗まれたのは『肩掛けのカバン』に似たものだと言ったのに、君は推理するとき、ハンガーを『紐で縛って引っ掛ける』と言った。」

 すると、今度は大丈夫だったようで、井川さんはあっと口に手を当て驚く。


「ね。君は僕の言葉が耳に入らずに、自然と癒雨子のトートバッグを想像していたんだ。紐の長い肩掛けカバンじゃ、」

「遠くから投げて引っ掛けるなんてできない……。」

「そういうこと。」

「なるほどね……迂闊だったわ……。それは本当に墓穴という名の墓穴ね……。……あ、最後はさっき説明してくれたけれど、私が釣り針をほしがったことよね?」

「そうそう。……僕の嘘はだいたいこんなところ。」

 それを聞いて矢弥と癒雨子は「解斗の癖に……。」とか「まぁまぁな嘘だねーっ……。」とか何とかぶつくさ言っていた。もうちょっと素直に褒めてくれてもいいんだけどなー……。


 一段落終わると、さて、と癒雨子が井川さんに歩み寄る。

「バッグについての話があるって言ってたけど、どんな話なのーっ?」

 すると、井川さんは今日一番の真面目顔になって言う。

「そう、そのことについてなんだけれど……私は確かにさっき彼が説明した方法で盗もうとしたわ。」

 確かに? 盗もうと? 気になる言葉を捉えながら話を聞く。

「でも、さっき九州真君が言った通り、あそこの草に引っかかって」

 そこまで言われてはっと気づく。井川さんだけではなく、僕も、穴に気づいていなかったことに。

「釣り針と一緒にあるはずのバッグが……なかった……!!」

 そう言うと、井川さんは頷き


「流石推理担当君ね。そう、私は釣り糸がちぎれたあと、回収しに行ったわ。凶器の釣り針と……バッグをね。」

 すると矢弥と癒雨子も気づいたようで、息をつまらせていた。井川さんは続ける。

「私が行った時は、九州真君が持ってるのかと思ったわ。でも九州真君の話によると、九州真君も釣り針しか持ってない。とすると……。」

 ここで矢弥が話に乗ってくる。

「第三者……。他にもゆうちゃんのバッグを狙った犯人がいるってこと……!?」

「そういうことになるな……。」


 しかも最悪なことに時間が経ちすぎてしまっている。何より、僕が見つけてない時点で、恐らく癒雨子が気づき、僕が推理したり矢弥や癒雨子が聞き込みをしている間に、既に盗られていたとしか考えられない。そして、もう癒雨子が僕らに話しかけてから一時間以上立っている……。

「そっちの犯人については、もう手遅れだな……。」

「……。」

 そして、全員言葉を詰まらせてしまう。しかし、数秒経ち、井川さんがそれを破った。

「私が、宛てを探すわ。元凶は私なのだから、せめてこれぐらいさせてちょうだい。」

「宛てを探すって言ったってどうするんだよ?」

 沈黙を破ってくれたのはありがたいが、簡単にできることではないはず。その宛ては果たしてあるのだろうか。


「私の盗みの動機……もう一つあるのよ。最近話題の盗賊。ほんの少しのっかってみたいと思ったのもあるの。その盗賊がいるのは、ここの付近だと聞いたことがあるわ。それに、私だって、簡単なことして償うわけにはいかないもの。相当の努力はするつもりよ。」

 しっかり罪を認めて、償おうとするあたり、やっぱり、本当に根は良い奴なんだと実感した。しかし、策というのもあるかもしれないし、あまり深くは聞かないことにしよう。

「じゃあ、任せるか。癒雨子はどうだ?」

 いくら僕がいいと思ったところで、やはり一番通すべき意見は持ち主の意見なので一応癒雨子にも聞いておく。

「ウチはバッグが戻るならそれでいいよーっ♪」

 OKだな。癒雨子がいいなら矢弥に聞く必要もないだろう。

「じゃあ、頼んだよ。井川さん。」


「ええ、任せてちょうだい。」

「じゃあ、僕達は行くか。」

 すると矢弥はえっとした顔をする。

「どこに……?」

 ……。

 ……?

 ああ……!

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


 そうだった、僕、帰る宛てなかったんだった……!! どうしようこのままじゃホームレス直行……!? つか、どうやって学校通うんだよ。その前に家があんなんで学校通えるのかよ……。うわああああああ僕の未来が……。輝かしいこれからが……。

「うわあああああぁぁぁぁあああぁぁぁっっっ……。」

 すると、肩に手が置かれ、涙目のまま振り向くと、

「まぁまぁーっ♪ 落ち着きたまえよ~っ♪」

「お、落ち着いて、られるかよおおおおおおお!!」

 お前には、きっと大富豪なお前には僕の気持ちなんかああああああああああああ!!

「ウチの家に来ればいいんだよーっ♪ これからお世話になるんだしーっ♪」

 ……え?


「えっ?」

 流石にそれは僕も矢弥も驚きの一言だった。矢弥のえっは何かニュアンスが違う感じがするけどまあ置いておこう。

「あっ、なんなら矢弥たんもウチの家に住んじゃいなよーっ♪」

 それは対してあまり問題ではないし、問題はそこじゃない。

「あっ部屋については気にしないでーっ♪ ウチ、執事と二人暮らしだけど、余ってる大きい部屋10個ぐらいあるからーっ♪」

 は、はあ……。……え?

「むしろ寂しいから来て欲しいなーっ♪ って感じーっ♪」

「さ、さっきからビッグすぎる話されてる気がするのは僕だけなのか……!?」

「私もだよ……。」


「まあ、ゆっこは本当にどこを見てもすごいものね。」

 井川さんは見慣れてるからですかね……。何でそんなに「え?凄いのは普通だよ?」的な感じになってるんですか……! それがあなたの言う常識なのかよ、おい。

「ま、私はいち早く犯人を見つけるためにこれで失礼するわ。それではね。ゆっこに、九州真君に……矢弥さんと言ったかしら。」

「うんっ♪ じゃーねーっ♪」

「ああ。」

「うん、またね。」


 去っていく井川さんを見送って、癒雨子が音楽を聞いていた携帯でメールを打ってから、話し始める。

「それじゃ、執事の黒澤呼んだから待っててーっ♪」

 おい待て。

「本当に、いいのか?」

「こんな二人一気に押し込んじゃって。着替えもお土産もお金も何もないんだよ? 特に解斗は。」

 うるせぇ。だが、言ってることは本当なので、突っ込まずにそのまま話を聞く。

「いいからいいからーっ♪ 黙ってついてくればいーのーっ♪」

 ぷんすかぷん。に♪がついたようなわけのわからない怒り?なのか知らんが、それを見せて、返事を求める。ま、まぁ、そこまで言われて断るのも癪だしな……。

「わ、わかった。じゃあ、頼むよ……。矢弥もいいだろ?」

「う、うん……。」


「よぉーしっ♪ じゃあ、キミ達は苗字は違えど今日から家族じゃ~っ♪」

「お、おう……。そうだな……よろしく……」

「よろしく……」

 何だか、異常な日常になりそうな気がする……。

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