page3 嘘吐き少年Xは鍵を見つける
「それじゃ、手分けして情報を探して、整理しよう。」
「ああ。わかった。」
そう言って矢弥からちぎられたメモと鉛筆をもらう。これにメモれってことだな。
「ウチは矢弥たんと一緒に聞き込みをしてくるねーっ♪」
「ああ。じゃあ僕は聞き込みしながら色々手がかりになりそうな物を探してみるよ。」
「うん。……よし、それじゃあ犯人探し、スタートォ!」
矢弥のその一言により、僕達は二手に別れた。
手がかりと言ったが、一体どう探せばいいんだ……? やっぱり警察の方が……。……いや、焦るな……。まずは状況……。状況を見るんだ。
ここは、さっき癒雨子がいたベンチ……。この近くに必ずあるはずだ……。犯人の手がかりなるもの……。
そうして周りを見渡す。すると、いくつか違和感を見つけた。
あそこの草だけ、生え方が不自然だな……。そう思い近づいてみると、更に異変に気づく。
「……っ!?」
切れてるっ……!? まるで鋏で切り荒らしたような……っ。葉っぱも切れた半分だけ落ちている。……だが、切れてるのはほぼ一直線に……一回だけ……? 一回だけザッとここを切……。
「……何かがここを通った……!?」
はぁ、きっと野良猫か何かが通ったのだろう。……変なところに時間を喰ってしまった……。
しかし、そう思い振り返ると、土はそんなに硬くはないのに、猫の足跡のようなものは微塵もなかった。その代わりに、
「これは……傷?」
……に、してはちょっと太い……。しかも傷というより丸みのある跡と言った方が正しい。……だが、この跡……。
ベンチの方まで見て確信する。この跡は、あの傷からベンチの方へ続いている。
犯人は、恐らく自ら盗りに来たんじゃない。……おそらくあそこからああした。
しかし、何を使った? あの傷、この跡……刃なる部分と、丸みのある部分がある。……これさえわかれば、犯行現場が、見えているのも同然なんだけど……。
凶器。これがわからない限り、何でもありえてしまう……。何か、何かないか……。
そう思い、あたりを見渡すが、何も見つからず。最後に、傷を、跡を追う。そしてベンチまで見渡す。
……この傷も、同じくらいの大きさ……。これも関係がありそうだ。その傷をじっくり見る。それにしても、小さいな……。まるで先の尖った、恐らくこんな形の……
「あ!? まさか……!?」
凶器はあれ……! そして今あそこにあるはず……。……ははっ!! 犯人、凶器片付けるの忘れてやがる!!
……まぁ、それでも、助かった。これで犯行現場がわかる!! おそらくああして、ああしてこうなって、奪った!!
あとは、犯人探しだが……。それは矢弥達が帰ってきたときになるか。とりあえず、あの凶器は、犯人が取りに来るかもしれない。見張っておこう。
そして矢弥達が聞き込みを終えて帰ってきた。
「ただいまー。どう? 解斗の方は。」
「犯行現場は想像がついたよ。凶器もわかった。だけど、犯人がまだかな。そっちは?」
そう聞くと、矢弥は手に持っていたメモを僕に渡す。
「えーっと……。」
癒雨子の周りには誰もいなかった、不自然な動きをしている人もいなかった、不自然な物もなかった、武器を持ってる人もいなかった……。武器って……。せめて刃物だろう。武器ってそりゃあいないわ……。
「犯人の手がかりになりそうな物は無いな……。」
「何から聞けばいいかわからなくてさ……。」
えへへ、と矢弥が答える。
「じゃあさ、じゃあさーっ! まず、その解斗の推理を聞きたいなーっ♪」
「ああ。それもそうだな。……犯人の凶器はあれだ。」
すると、二人は驚いて
「えっ! 犯人は凶器を持ち帰ってないの!?」
「恐らく忘れ物だ。……そして犯人はそれをあそこからああして、こうだ。これがその跡。」
二人とも頷きながら、僕の推理を聞く。
「なるほど……解斗、すごいよ。探偵になれるかも……。」
「ねーっ!! 本当にすごいよーっ♪ あ、そうだ、そこまでわかってるなら、犯人も、捕まえられるんじゃない?」
癒雨子がらしくないように巧みに笑う。
「どうやってだ? 犯人もわからないんだぞ。」
それを聞くと癒雨子が真面目な顔をして考える。
「解ちゃんが犯行現場を一番わかってるなら……解ちゃんが行った方がいいかなー……。」
「捕まえにか? 犯人は?」
「来るよ。でも、普通の捕まえ方じゃ、嘘をつかれるかもしれない。だから、上手く墓穴を掘らせるんだよ。」
犯人についてはその一言でわかった。だけど、癒雨子がその後に言った言葉がまるでわからなかった。
「は? 全くわからないんだけど……」
すると癒雨子は振り返って言った。
「解ちゃんが嘘をつけばいいよ。」