ユニコーンとぬいぐるみ
フィナンシェは巨木のうろの中に動く象のぬいぐるみ「プリン」を突入させた。
暗闇の中、「プリン」は伸びる鼻で少しずつユニコーンの位置を探りながら、すやすやと眠るユニコーンらしきものに触れ、その存在に気付いた。
「プリン」はユニコーンを捕獲すべく、眠っているユニコーンの首に伸びる鼻を巻きけた。
しばらくして、うろの中から激しく暴れる音が聞こえてきた。
「パオーン(ニヤ)」
「ヒヒッ、ヒーンッ(動揺)」
「パオ、パオーン(喜)」
「ヒヒーンッ(怒)、パカッ、パカッ」
「パオーーーン(涙)ズザーーー」
うろの前にいるシュトレンたちは薄暗い中の状況であったが、ユニコーンに引きずられる「プリン」の姿を確認した。
「来るぞ、投網の用意だ」
「了解なの」
「わかってますわ」
三者ともユニコーン捕獲の準備ができた。
うろの闇の中からユニコーンが飛び出してきた。
バサ! バサ! バサ!
タイミングよく3連続で投網がユニコーンにかかる。
3つの投網の端にはロープが付けられ、反対側のロープの先にはうろのある巨木に結び付けられていた。
「フンガ、ヒヒーンッ(激怒)ブチー」
「ダメなの。ロープが切れそうなの!」
マカロンが悲鳴を上げる。ユニコーンの角は既に網を突き破っている。このままではロープが切られるのも時間の問題だ。
「くそ、ロープではなく鎖にしておくべきだったか」
シュトレンが眉をひそめて渋い顔をする。
「パオーン、ブシュー」
引きずられていた「プリン」が巻きつかせていた長い鼻を離し、勢いよく真っ黒な墨を噴き出した。
ユニコーンの顔面に墨がかかる。せっかくの白馬が微妙なシマウマになってしまった。
「こいつはタコか。何で鼻から墨が出るんだよ」
「ただの墨ではありませんことよ。眠り薬入りの墨ですわ。もうすぐこのユニコーンも大人しくなるはずですわ」
フィナンシェのいう通りユニコーンは眠気にとらわれ、大人しくなり始めたかに見えた。
「フン、ヒヒヒーン!」
ユニコーンは力を振り絞り、ロープを切った。投網も外れ、墨で汚れたユニコーンの顔があらわにになる。
「まずいぞ、角を突き立てこっちに来るぞ。三人とも別々な方向に逃げろ!」
「作戦変更なの!」
「おとりは、シュトレンにお任せしますわ。もっと、ユニコーンを挑発して引きつけてくださいまし」
「やっぱり、そうなるか。ユニコーン、こっちに来い。いや、この偽シマウマ!」
ユニコーンはシュトレンの大声から、そちらに振り向き、シュトレンに目掛けて走っていった。
「やはり、早い。追いつかれる!」
「ダーリン、任せるの!」
シュトレンの危機に、マカロンがユニコーンの背後から叫んだ。