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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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██の肉 100g21円

作者: 結城 からく
掲載日:2026/07/15

 暇潰しに散歩していたら、見知らぬスーパーを見つけた。

 ふらっと立ち寄ってみれば、昼間からそれなりに混んでいる。

 スーパーの精肉コーナーを歩いていると、担当者の元気な声が聞こえてきた。


「安いよ安いよー。セール中だよー。どんどん買ってよー」


 たまには肉も良いかもしれない。

 そう思った私は、精肉コーナーに並んだ商品をチェックする。


 牛、豚、鶏……そんなに安くない。

 セールと言っても一割引きのシールが貼られているだけだ。

 金欠の私にとってはかなりの出費である。


 しかしそんな中、奇妙な商品が目に入った。

 パックには「██の肉」と表示されている。

 肝心の部分は黒塗りで読めない。

 成分表を確認しても同様に黒塗りだった。

 ただ、100g21円と異常なまでに安い。

 財布事情が厳しい私にとって、これは見逃せないものだった。


 私は精肉担当の店員に話しかける。


「あの……」


「なんだいお嬢ちゃん」


「これって何のお肉なんですか?」


 私が尋ねると、店員は少し考え込む。

 それから屈託のない笑顔で言った。


「██の肉だよ」


「え?」


「だから██の肉だって。他の店じゃ取り扱ってないんだ。買うなら今がチャンスだよ」


 店員は嬉々として購入を促してくる。

 しかし、肝心の部分が聞こえなかった。

 口パクみたいにそこだけ無音になっていたのだ。


(私の耳のせい? そこだけわざと誤魔化すとも思えないし……)


 明らかに怪しい。

 でも何の肉かしつこく訊くのは申し訳ないし、なんだか怖かったので私は精肉コーナーを離れる。

 その時、背後から店員の声が響き渡った。


「よーし、出血大サービスだ! この██の肉を一キロ買うだけで、今日の会計がすべて八割引きになるよー。お得すぎるから買ってってねー」


 私はぎょっとして振り返る。

 例の肉を一キロ……すなわち210円。

 それだけで全商品の会計が八割引きになる。

 破格も破格……とんでもないサービスだ。


 そうこうしている間に、精肉コーナーに客が集まってくる。

 ██の肉の肉を取り合っているのだ。

 悩んだ末、私もその中に飛び込んだ。




 ◆




 自宅に着いた私は、キッチンでスーパーの袋を開ける。

 中にはお惣菜やお菓子と一緒に、一キロの██の肉が詰め込まれていた。

 熾烈な争奪戦に勝利し、なんとか買えたのだ。

 おかげで他の商品も大幅値引きになってくれた。

 あのスーパーは大当たりだ。

 これからも通ってみようと思う。


「さて、どう調理しよう……」


 なんせ一キロもあるのだ。

 色んな料理ができる。


 ということで、まずはシンプルなステーキにしてみようと思う。

 フライパンで油を熱し、そこにちょうどいい厚さにカットした██の肉を投入する。

 しっかり焼き目を付けて裏返し、火が通ったのを確認してから皿に移した。


 恐る恐る一口目を食べた私は少し驚く。


「あ、意外と美味しい……」


 あれだけ安いのだから、味には期待していなかった。

 それなのになかなか悪くない。

 高級肉といった感じではないものの、ジューシーで噛み応えがあってくどさもない。

 とても食べやすい肉だった。


(これなら他の料理にも合いそう……)


 買い物に成功した私はテレビをつける。

 ちょうどニュース番組が放送されており、画面には私が昼間に利用したスーパーが映っていた。


 精肉コーナーで店長の死体が見つかったらしい。

 死体の大部分が行方知らずで、警察が捜索しているのだという。


「物騒だなぁ」


 そう呟いた私は、██のステーキをぱくりと食べた。

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