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最弱ヒーローの日常

昨日も一瞬公開していたのですが、少しミスがありましたので書き直しました。


不定期で書く予定です。

「悪の秘密結社・ドゥンケル」による破壊活動が始まり、早30年。世界中が不安に包まれていた。


日本も例外ではなく、いつ巨大な魔獣や生物兵器が街に出現するか分からない、明日の命ですら保障できない恐怖の日々を、人々は送っていた。


しかし、世界の力を結集してつくられたヒーロー組織、「クラージュ」が各地に支部を増やし続け、ドゥンケルに対抗する力も、着実に増し続けていた。


ヒーローは普段、世を忍ぶ仮の姿で過ごし、ドゥンケルの襲撃や被害が発生した時のみ、変身して脅威に立ち向かっていく。


その活動と勇敢な姿は、市民から絶大な人気と支持を得ていた。


…ただ一人を除いて。


~ 神奈川県・横浜市


ピピピピ…ピピピピ…ピピッ


小さな手が、目覚まし時計のアラームを押しつぶすように止めた。


「…はぁ…。」


布団から出た少女は、時間を確認した後、スマートフォンに流れるヒーローの魔獣退治のニュースとそれを称賛する文字列を眺めていた。


“昨日のフィッシャーさんも最高だったね!”

“俺、キャプテンアンカーみたいなカッコいい人になりたい!”

“ローズも、一瞬で敵を倒しちゃってさ、強くてかわいいとかずるいよな”

“でもさ、やっぱりアイツはいらなくね?”


“は?”


“キューだよ、キュ”


「いてっ…!」


全文を読み切る直前、右腕の擦り傷がひりひりと痛んだ。


昨日の傷だ。


突然出現した魔物に立ち向かうも、彼女はあっさりと返り討ちにされた。


少女の名は佐藤こころ。

幼少期を長野の田舎で過ごしたのち、横浜へ引っ越してきた、どこにでもいる高校一年生


…のはずだった。


1年前のある夏の日、彼女はどんな運命のいたずらか、突然ヒーローになったのだ。


コンコン


「こころ。朝ごはんできたよ。」


母が声をかけに来た。


「うん。ありがとう。」



机を囲んで朝食を食べる佐藤家の空気は実に重たかった。母にとって、子供のけがは自分のものより何倍もつらい。


「ねえ、こころ。やっぱり、ヒーローを辞めるつもりはないの?」

「…ごめん、お母さん。いつも心配ばかりさせて。…でも、なんか、やめちゃいけない気がするの。」

「父さんも不安だ。…できるだけ、家にいてほしいよ。」

「…。」


彼女には、他のヒーローと明確に異なる点がふたつあった。

正体が周りに知られていること。そして、全てのヒーローの中で最も弱く、魔獣を退治した功績が全くないということだ。

何度も懸命に敵に立ち向かうが、結果はいつも同じ。


吹き飛ばされ

たたきつけられ

渾身の攻撃も通用しない

最後はいつも誰かに助けられてばかり。


“足手まといだ” “ヒーローを辞めるべきだ”


と言われる毎日だった。


雑念が食欲を阻害し、出発の時間になっても、白米と味噌汁がほとんど残っていた。


こころは沈んだ気持ちをごまかすため、ヘッドホンで耳をふさぎ、お気に入りの曲をかけて家を出た。



教室につき、席に座ったこころ。


そこへ


「こころー!無事だったんだね!」


声をかけたのは中島莉彩。新学期が始まって間もなく、こころと仲良くなった女子バスケ部のエースだ。明るくおてんばだが、友達想いで情に厚い。


「莉彩…。うん。なんともないよ。もうテーピングしてあるし。」

「えー!なんともなくないじゃん!それ、バッチリ怪我してるよ!」

「そ、そうだよね…。


…!莉彩、ちょっとどいて!」


「えっ!?」


こころはカーテンを払いのけ、窓を勢いよく開ける。


ドドカーン!!!!!


爆発が起こった。


「(間違いない…!ドゥンケルの仕業だ…!)」


こころが教室から出ようとすると 「待って、こころ!」


莉彩がグッと腕をつかんだ。


「また怪我しちゃうかもしれないよ!」

「…でも、私が遅れたせいで、誰かが死ぬかもしれない…行かなきゃ!!」

「あっ!こころ!」


こころは莉彩の手を振りほどいて外へ駆け出し、変身。


「マジカルクラップ!! スパークルエボリューション!!」


次々と体が衣装に包まれ、まばゆい光を放つ。


「ヒーローナンバー42! エージェント・キュー、 ただいま参上!」


キューは街の人々へ避難の合図を出しながら、目の前に現れたカンガルーのような巨大生物兵器と対峙した。


「ようよう。また来たのか弱虫さん。俺様のカンガロイドにかかれば、お前どころか、フィッシャーたちもひとひねりにできるぜ!」

「街を壊すのはやめて!」

「いまさら何言ってやがる。いけっ。カンガロイド!!」


ドゥンケルの幹部、ゲーデの命令に合わせてカンガロイドは地面へと鋼鉄の拳を振り下ろす。キューは間一髪で躱したがアスファルトにひびが入り、信号機が一瞬で光を失った。


「ほれ、もう一発だ!」

「ひゃぁっ!?」


最初の一撃を躱したキューだったが、もう片方の拳による追撃を喰らってしまう。オフィスビルに激突し、ガラスの破片が体中に突き刺さった。


「うぅっ…!まだまだ…!」


キューは力を振り絞り、空中へ飛び出して右手を突き出す。


「マジカル・キューパンチ!!」


カンガロイドの鋼鉄の体に打撃を当てることに成功するも、傷一つつかない。


「おい、大丈夫なのかよ!」

「フィッシャー様!早く来てー!」

「キューじゃ勝てないって」


「…!」


市民からの声を聞いたキューは、一瞬力が緩んでしまう。


「今だ!」

「きゃぁぁっ!!」


カンガロイドが目からミサイルを発射。キューに直撃してしまう。


「へっ。相変わらずザコだぜ。」


「そこまでだ!」

「あぁん?」


ゲーデが見上げた先にいたのは、虹色の羽根を輝かせて突進してくるカワセミの姿。 クラージュ横浜支部のリーダーで、市民からの人気も絶大なエリートヒーロー、キングフィッシャーだった。


「おお!来てくれたぞー!」

「フィッシャー様ー!!♡」


「クリスタル・デルタ・ウィング!!」


彼はカワセミの姿に変身するヒーローだ。空を旋回しながら、3枚の羽根を超高速で飛ばし、カンガロイドの両腕、首を一瞬で切り落とした。


「な、なにっ!…くそーーっ!!覚えてろよ!」


ゲーデは捨て台詞を吐いて姿を消した。 そして、ドゥンケルの脅威を退けたキングフィッシャーに、市民から拍手喝采が送られた。


キューは、その輝かしい姿を見つめ、血だらけになった四肢を引きずりながら、静かに変身を解くことしかできなかった



最後まで読んでいただきありがとうございます。


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