必要だから
この章では倫心が学生時代から経験を積んで辿りついた想いを
佳純に伝える場面が描かれてます。よろしくお願いいたします。
「佳純ちゃんはね。必要なの」
倫心の突然の発言に佳純は驚いて、ストレッチの動きを止めた。
佳純と倫心は、いつもの体育館でバドミントンの前にストレッチをしている。
二人は前足の膝を曲げて腰を落とすランジの姿勢を取り、
太ももの前面をしっかりと伸ばしていた。
「突然、必要って、何の話?」と佳純が尋ねると、倫心は続けた。
「ちゃんと言わなきゃって思って。部活の謎のルールを変えてくれたよね、佳純ちゃん」
「ああ、あったね。1年生は髪を結ぶゴムの色は黒っていう謎のルール…」
佳純は腕を組んで上に伸ばしながら答えた。
「そう、みんなわざわざ部活前に結び直してて…
佳純ちゃん、先輩に言ったでしょ、
『校則で決まってないのになんで駄目なんですか。
先輩だけが自由なのはおかしいと思います』って」
倫心が佳純の口調を真似ると、佳純は「黒歴史…」とつぶやき、照れた。
「全然、黒歴史じゃない。新たな歴史を作ったよ。格好良かった」
「大袈裟だよ」
「佳純ちゃんだから言えたんだよね。佳純ちゃんは必要だよ」
「必要って、そういうこと…」
「今日は勝つからね」
倫心はラケットの準備を始めた。
佳純はここにいて良いんだなと思えた。
読んで頂きありがとうございました。