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移りゆく環境

この章では学生時代の倫心と佳純の思い出などが描かれてます。よろしくお願いいたします。


平日の昼下がり。

佳純はベッドに横たわり、思考を巡らせてしまっていた。

本当は何も考えたくないのに…。


「ツグちゃんは障がい者雇用の担当に向いている」

佳純は大きな独り言をつぶやいた。

そして、どれほど倫心に助けられたかを思い出す。


〇佳純の回想


失言でトラブルになることが多かった。

「相手の気持ちを考えてみて」とツグちゃんによく言われていた。

考えてみたけれど、分からなかった。

「言わない方が良いこともあるよ」とツグちゃんが教えてくれて、

言わないことが良いことリストを作ってくれた。

そのリストを覚えて、書かれていることは言わないようにした。


忘れ物も多かった。お母さんがしょっちゅう学校に届けに来ていた。

見かねたツグちゃんが毎朝、確認の電話をくれるようになった。

持っていく物チェックリストを作ってくれた。


「自分の意見を言いましょう」と先生が言うから意見を言ったら、

「発言するだけじゃなくて、人の話も聞きましょう。話が一方的ですよ」

と注意された。

話し合いが苦手だった。ツグちゃんが同じ班の時は話すタイミングを

こっそり教えてくれた。


社会人になって、ツグちゃんがそばにいなくなって、

どうすれば良いか分からなくなった。


電話対応が苦痛だった。話を聞きながらメモを取ることが

どうしてもできなかった。

「もう、お前は電話を取らなくて良い」と上司から言われた。


仕事の段取りもうまくいかなかった。

テスト勉強の計画を作るのは得意だったのに…。


仕事はいつも計画通りにはいかなかった。急な予定変更があると、

ただパニックになって対処ができなかった。

「なんでもっと早く言わないんだ」と怒鳴られた。


会社に私の居場所はなくなった。

私には根本の問題がある。認めざるを得ない。でも、認めるのが怖い。

働くのが怖い…。


「佳純、お母さん、買い物に行ってくるね」

玄関から佳純の母、千代子の声が聞こえてきた。

「分かった」と佳純は答えて、考えを巡らせてしまう。


お母さんにも未だに心配をかけている。どうしたら…。


〇倫心の回想


倫心は自室で研修の資料を見直していた。

発達障がいの特性と佳純との思い出が結びついてしまう。

思い込みもあるのかもしれない…。関係ないかもしれない…。


佳純ちゃんは思ったことをストレートに言っていたな。

それが良いことなのか悪いことなのか、判断できない…。

「相手の気持ちを読み取るのが苦手」に当てはまるかもしれない…。


お楽しみ会のレクリエーション。伝言ゲームでチームが負けてしまった時、

間違えた子を責めて、泣かせてしまった。


ニキビを気にしている子に、皆の前で「ニキビひどいね」

と言って怒らせてしまった。


相手の子と佳純の間に介入する度に、

「香山さんは優しいね」と言われることが多かった。

言われる度にモヤモヤしたが、

決まって「だってバドミントンのペアだから」と笑って答えていた。


学生時代のモヤモヤが、働き出して、経験を積んで、学習して、

少しずつ明確になってきている。


「みんな必要だから」

今はそう主張したい。


個性を活かして働く人材も、

個性を活かす場所を提供する人材も、共に働く。


きっとそれが良い。

読んで頂きありがとうございました。

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