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俺がワガママ王子なわけがない! ~交通事故で転生したら、評判最悪の王族になっていた件~  作者: 角砂糖
第二章 え、誰だよお前ら!? 城外で無名の三人と遭遇!
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繋がる糸、僕らのクロニクル

夜、王城の一室。

机の上に灯りをともした倫太郎は、一人で紙片を並べていた。


「……渚、理人、そして静香さん」

三人の名前を書き出しながら、深く息をつく。


「全員、俺が元いた世界のソシャゲ――《霊糸のクロニクル》のキャラなんだよな」


あの世界で何度も遊んだ画面。

召喚ガチャで苦労して手に入れた高レアのキャラ、ストーリーで支えとなった仲間たち。

その存在が今、現実に隣にいて、自分と同じように戦っている。


「……ゲームの中の存在だったはずなのに、今はこうして一緒に笑ったり怒ったりしてる」

倫太郎は胸を押さえ、少し照れくさそうに微笑んだ。


「……もし、次に誰かを呼ぶなら……」


紙片に名前を書き連ねる。

まだ呼んでいないキャラクターたち。

支援型、攻撃型、特殊役職――ゲームでは頼りにした仲間たちが脳裏に浮かぶ。


「ユリウスたちを支えるなら……防御寄りのキャラか、回復系も欲しいな。

でも遠征に強い探索役もいい……いや、火力不足ならアタッカーも必要か?」


真剣に考えながらも、ふと笑みを漏らす。

「ソシャゲの編成会議を、現実でやることになるなんてな……」


彼は一人、仲間を増やす可能性と、その未来を静かに思い描いていた。



そんな時。


「――倫太郎?」


不意に声がして、倫太郎は飛び上がった。

扉口には、静かに佇む渚の姿。


「な、渚!? いつからそこに……」


渚は歩み寄り、机の上の紙片を見下ろした。

そこに並ぶのは《霊糸のクロニクル》のキャラクターたちの名前。


「……これは?」


倫太郎は言葉を失い、やがて観念したように苦笑した。

「……ごめん。実は……君たちが元いた世界、“霊糸のクロニクル”ってソシャゲのキャラクターだったんだ。

俺は、プレイヤーとして……君たちをずっと見てきた」


沈黙。

渚の瞳が揺れ、ゆっくりと瞬きをする。


「……わたしが……ソシャゲの……登場人物……」

彼女は小さく呟き、しばし言葉を失った。

しかしすぐに微笑みを浮かべる。


「……なるほど。少し驚きましたが……今はこうして、この世界で生きている。

でしたら“ゲームの存在”だったことなど、どうでもよろしいことです」


「渚……」


渚は優しく続けた。

「このことは私と倫太郎だけの秘密にしておきましょう」

渚の微笑みを見て、倫太郎はふっと肩の力を抜いた。


「……助かる。なんか、胸のつかえが取れた気がする」



渚は軽く頷き、卓上に用意してあった茶器に手を伸ばした。

「せっかくですから……お茶でも飲みながら、続きをお話ししませんか?」


湯気の立つ茶を二人の前に置くと、部屋の空気が和らぐ。

倫太郎は湯呑を手に取り、口に含んだ。

「……ああ、落ち着くなぁ」


渚は湯気越しに倫太郎を見つめる。

「……私は“ソシャゲの登場人物”だったと聞いて驚きましたが、不思議と嫌ではありません。

むしろ……あなたにとっては、長い間の“知り合い”のようなものだったのですね」


倫太郎は苦笑し、頷いた。

「そうだな……何度もガチャで狙って、やっと手に入れたときの喜びとか……ストーリーで救われたときの感覚とか。

今こうして、同じ空間でお茶を飲んでるのが嘘みたいだ」


渚は目を細めて微笑む。

「……でしたら、もう少しだけその“奇跡”を楽しんでもよろしいのでは?」


二人はしばし黙り込み、ただ茶の香りを味わった。


やがて渚がぽつりと付け加える。

「倫太郎……次に召喚石を手にしたとき、誰を呼ぶか迷うでしょう。

ですが――どうか一つだけ覚えていてください。

“仲間を失わないこと”。それさえ守れれば、きっと選んだ答えに後悔はありません」


倫太郎は目を見開き、そしてゆっくりと頷いた。

「……ああ、約束するよ」


静かな夜。

二人の言葉は湯気とともに溶け、温かな空気を部屋に満たしていった。



湯気の立つ茶を口に含みながら、渚はふと問いかけた。


「……倫太郎。《霊糸のクロニクル》というゲームで、あなたにとって“推し”は誰だったのですか?」


「ぶっ――」

倫太郎は危うく茶を吹き出しそうになり、慌てて咳払いした。

「お、おし!? そ、それは……えっと……!」


渚は不思議そうに首を傾げる。

「ええ。ゲームなのですから、きっと特に思い入れのある仲間がいたはずでしょう?」


倫太郎の頬がみるみる赤くなる。

心臓が早鐘を打ち、頭の中で警鐘が鳴り響く。


(やべぇ……! ここで“渚”って言えるか!? いや、言えねーだろ!!

本人目の前にいるし! 絶対バレるし! 死ぬほど恥ずかしい!!)


「え、えーと、その……! ひ、秘密ってことで……」

必死に視線を逸らす倫太郎。


渚はそんな彼の狼狽を眺め、ふっと口元を緩めた。

「……ふふ。答えられないということは、それだけ特別だったのですね」


「~~~~っ!!」

倫太郎の顔はさらに真っ赤になり、茶をがぶ飲みしてごまかすしかなかった。


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