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俺がワガママ王子なわけがない! ~交通事故で転生したら、評判最悪の王族になっていた件~  作者: 角砂糖
第二章 え、誰だよお前ら!? 城外で無名の三人と遭遇!
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口うるさい上司、ギルド長就任!?

理人のラボ、トマスの食堂、そして依頼掲示板。

ギルドは少しずつ形を整えていたが、倫太郎はふと首を傾げた。


「……でもさ。遠くから来た冒険者たちって、寝泊まりどうしてるんだ?」


セリナが小声で答える。

「……みんな野宿、ですね。宿屋は高くて……」


「それじゃ安心して依頼を受けられないじゃん!」

倫太郎は机を叩き、即座に閃いた。

「――宿泊所だ! ギルドに泊まれる施設を作ろう!」


その夜、王城。

アレクシス王子の姿に戻った倫太郎は、堂々と玉座の間で宣言した。


「余は退屈だ! ギルドに“宿泊所”を建てよ! 余の命令だ!」


文官たちが青ざめ、ギルバートは天を仰ぐ。

「ま、また突拍子もない……」


だが王子の“ワガママ”は絶対。

予算はあっさりと計上された。



翌日。


倫太郎は自分の姿に戻り、ギルドに駆け込んだ。

「みんな! 資金は確保した! 宿泊所を作るぞ!」


ユリウスが目を丸くする。

「す、すげぇ……ほんとに金を用意してきたのか!」


理人は肩をすくめ、図面を広げる。

「よし、それなら俺が設計する。寝床と物資倉庫を兼ねた“宿舎棟”だ。

お前ら、労働力になれよ?」


ガルドは無言で頷き、丸太を担ぎ上げる。

セリナは汗を拭いながら布団を干す。

ミラと渚は手際よく掃除や仕切りを整えていく。


「おーい! こっちは梁を押さえてくれ!」

「セリナ、釘はそっちだ!」

「え、えぇ!? わ、わたしまで!?」


わいわいと声が飛び交い、笑いと汗に満ちた作業が続いた。


やがて完成した宿泊所は、簡素ながら清潔な木造の建物。

大部屋と個室があり、暖炉も備えられていた。


「これで……旅人や冒険者も安心して集まれる!」

倫太郎は目を輝かせ、仲間とハイタッチを交わした。


ギルドはまた一歩、“本物”の冒険者拠点へと進化していったのだった。



一方で城内


王子が「庶民用の宿泊所」を建てさせたという知らせは、瞬く間に城内を駆け巡った。


「聞いた? アレクシス様が……庶民のために宿を!」

「まさか……あの“ワガママ王子”が?」

「そうよ! “余は退屈だ、宿を作れ!”って命じられたらしいわ!」

「退屈基準!? でも結果的に庶民は大助かりじゃない!」


侍女たちはきゃあきゃあと盛り上がり、兵士たちは頭を抱え、執事ギルバートは机に突っ伏した。


「……胃薬を、増やすだけでは足りぬかもしれん……」


そんな折。

渚は謁見の場を後にしようとしたとき、一人の外交官に呼び止められた。


「オホン……ソチのウワサ、大変タノシイ聞き物デース」

やけに抑揚のある口調で近づいてくる男。

派手な羽飾りをつけた帽子、奇妙なアクセント。


「貴女、渚サマですね? オミヤゲ、ドウゾ!」


差し出されたのは、掌に収まる美しい石。淡く脈打つ光を帯びている。


渚は怪訝に思いながらも、礼を尽くして受け取った。

「ご厚意、ありがたく頂戴します」


外交官は満面の笑みで頷く。

「ヨロシイヨロシイ! ワガクニ、石いっぱいアル! マタアソビニ来テネ!」


そう言って、飄々と去っていった。



その夜。

渚は改めて石を灯りにかざした。

淡い光の鼓動――それは、見覚えのある波動だった。


「……これは……召喚石!」


心臓が跳ねた。

外交官が何気なく渡した土産が、国を揺るがす秘宝だったとは。


「急がなくては……!」


渚はすぐにマントを羽織り、石を胸に抱いて駆け出した。

向かう先はただ一つ――冒険者ギルド。


新たな召喚計画が、思わぬ形で幕を開けようとしていた。



ギルド会議室。

帳簿や依頼票が積み上がり、理人が額を押さえていた。


「……やっぱダメだ。俺が現場とラボと帳簿、全部やるのは無理だ。

ギルド長を決めなきゃ組織が回らない」


ユリウスたちは顔を見合わせ、困惑するばかり。

「でも……誰が?」


倫太郎も腕を組み、唸った。

「確かに……制度は動き出したけど、まとめ役がいないと続かないな……」


その時。

バンッ!と扉が開き、渚が駆け込んできた。


「――大変です!」

彼女の手には、淡く光を放つ石。


「これは……召喚石!?」

倫太郎が思わず声を上げる。


渚は真剣な面持ちで言った。

「倫太郎、理人さん……今こそ、この石を使うべきです。

ギルド長にふさわしい人物を、私の世界から」


理人が渋い顔をした。

「……まさか、あの人を呼ぶ気か? いや、まあ……確かに信用はできる。

でもなぁ……俺からしたら口うるさい上司で……」


「ですが、誰よりも仲間を大切にする方です」

渚が強く頷く。


倫太郎も息を呑んだ。

(……藤堂 静香。ゲームで何度も世話になった、アルモニカの隊長。

指揮支援スキル持ちで、高難度レイドでは必須……!

現実に呼べるなんて……!)


「よし、決まりだ」

倫太郎は石を掲げた。

「この国のギルドを支えるのは、あの人しかいない!」


眩い光が会議室を満たす。

やがてそこに現れたのは――黒髪をきっちりまとめ、切れ長の瞳で全員を見据える一人の女性。


「……状況を説明してもらえるかしら?」


凛とした声が響いた瞬間、渚と理人は同時に背筋を伸ばした。

「「……隊長!」」


藤堂 静香。

アルモニカ指揮隊長にして、彼らの“精神的支柱”が異世界に降り立った瞬間だった。



「藤堂隊長! ここは……異世界です」

「俺たち、こっちの世界に呼ばれて……色々あって、今はギルドを運営してる」


静香の鋭い視線が倫太郎へ向く。

「そして、あなたは?」


倫太郎は一瞬たじろぎながらも深呼吸し、正直に名乗った。

「……高原倫太郎です。アレクシス王子の体に入って、この世界で生きています。

俺たちの目的は、この国を守るために“冒険者ギルド”を築き上げることです」


静香は眉を寄せ、しばし沈黙した。

やがて、机上に積まれた書類や未整理の依頼票に目を走らせ、深く息を吐く。

一方でミラは食器洗いの手伝いを咄嗟にユリウス達3人に依頼、倫太郎の正体露見を防いだ。


「……なるほど。秩序も規律も足りない。

理人が過労で倒れるのも時間の問題ね」


「ぐっ……!?」

理人が小さく呻き、渚は真剣な眼差しで頷いた。


「隊長……この世界にも、貴女の指揮が必要です」

「そうです。わたしも、もう一度あの背中を追いたい」


静香は二人を見つめ、そして目を閉じた。

過去に失った仲間たちの記憶が脳裏をよぎる。

失いたくない、もう二度と――。


「……わかりました」


瞳を開いた時、そこには迷いのない光が宿っていた。


「藤堂静香、ここの“ギルド長”を引き受けます。

ただし――私の指揮に従う以上、半端は許さない。

冒険者であれ庶民であれ、命を賭ける以上は真剣に向き合ってもらうわ」


その厳しい宣言に、いつの間にか戻っていたユリウスたち若い面々は思わず姿勢を正した。

倫太郎も内心で苦笑しつつ、同時に安堵を覚える。

(……これで、ギルドは本当に動き出す)


こうして――藤堂静香は冒険者ギルド初代ギルド長として、その席に就いたのだった。

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