剣に続いて杖と盾も魔改造!
ギルドの掲示板に、新しい依頼が貼られた。
【依頼】
王都近郊で入手可能な薬草・鉱石などの素材採取。
併せて地形・魔獣の出没傾向を記録。
依頼主:橘 理人
ユリウスは首をかしげて声を上げた。
「おい理人! 依頼主が……お前の名前になってるぞ?」
理人はにやりと笑い、ゴーグルを指で押し上げた。
「そう。俺が依頼したんだ。ギルドを回すには物資と情報がいる。
薬草は回復薬の材料にもなるし、鉱石は武具改造のサンプルになる。
それに……実際に歩いて地理を把握しないと、地図が役に立たない」
セリナは目を丸くした。
「じゃあ、依頼人も一緒に来るの?」
「もちろん。俺抜きじゃデータ取れないからな」
「……爆発物は置いてきてくれよ」
ガルドが低い声でぼそりと釘を刺す。
「安心しろって! 今回はドローンでスキャンするだけだ。たぶん」
「“たぶん”て言ったぞ!」ユリウスが叫ぶ。
数日後、王都近郊の丘陵地帯。
草原の向こうに森が広がり、あちこちに薬草や鉱脈の兆候が見える。
「よし、作戦開始!」
理人は背中の小型装置を起動し、数機のドローンを飛ばした。
「こいつらで地形データを取る。お前らは薬草や鉱石を採取してくれ。……魔獣が出たら即応戦!」
ユリウスは剣を担ぎながら草むらをかき分け、セリナは植物を慎重に摘み取り、ガルドは周囲を見張る。
理人はタブレット状の装置に映る地形図を眺めながら、次々と指示を飛ばした。
「ユリウス、そこに群生してる赤葉草は回復用だ。根っこごと抜け!」
「了解!」
「セリナ、北側の崖沿いに光ってる鉱脈がある。サンプルを採れ」
「えっ!? わ、わたしが!?」
「ガルドが横で守るから安心しろ」
「……承知した」
汗と泥にまみれつつも、彼らは次々と素材を回収していった。
最後に森の奥から小型の魔獣が現れたが、ユリウスとガルドが押さえ、セリナの炎で追い払う。
「よーし、これで一通りデータも揃った!」
理人がドローンを呼び戻し、満足げに笑う。
「これで回復薬とラボの材料補給ルートが確保できる。……やっぱ実地調査は必要だな」
ユリウスは袋いっぱいの薬草を肩に担ぎ、笑みを浮かべた。
「これも立派な“冒険”だな!」
こうして、《暁の牙》の新たな活動が始まった。
戦うだけでなく、生活を支えるための冒険――。
それが、ギルドを根付かせる大切な一歩となったのだった。
理人のラボに、再び仲間たちが集まっていた。
机の上にはユリウスの改良済み剣が置かれ、彼は満足げにそれを磨いている。
「……さて、次はお前らだな」
理人が手を叩くと、セリナとガルドが顔を見合わせた。
「わ、わたし……ですか?」
「俺の盾も、か……」
理人はにやりと笑う。
「おう。せっかくだ、全員アップデートだ。まずはセリナから」
古びた杖を受け取ると、理人はしばし観察し、首を傾げた。
「……これ、魔力が散って安定してねぇな。詠唱中に暴発するのは、杖そのものの欠陥もある」
セリナは顔を赤くしてうつむいた。
「そ、そんな……でも、母の形見で……」
理人は表情を和らげた。
「安心しろ。大事なものだからこそ、壊さずに強化する。――っと」
杖の先端に金属リングをはめ込み、内部に魔力伝導材を埋め込む。
さらに、小型の安定装置を取り付けて――完成。
「改良型《導糸の杖》。魔力が暴れにくくなるはずだ」
セリナがおそるおそる握り、試しに小さな光球を生み出すと――
「……暴発しない! すごい、安定してます!」
「ふふん、科学の勝利だな」
次に理人はガルドの分厚い木盾を手に取った。
「……お前の盾、頑丈だが重すぎる。長期戦じゃスタミナを削られるぞ」
「……わかってはいる」
理人は盾の裏に金属骨組みを追加し、外装を一部削って軽量化。
さらに衝撃吸収用の詰め物を仕込み、短槍との連携が取りやすいようにグリップを改造した。
「よし、《軽量衝撃吸収シールド》の完成だ」
ガルドが構えてみると――
「……軽い。だが耐久は落ちていない。……すごい」
口数少ない彼が珍しく目を見開き、短く頷いた。
三人の武器が並べられたラボを眺め、理人は満足げに言った。
「これで《暁の牙》はもう“ただの新人”じゃない。
武器も支援も揃った、本物のパーティだ」
ユリウスは剣を掲げ、セリナは杖を抱き、ガルドは盾を強く握った。
それぞれの表情には、確かな自信が宿っていた。




