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俺がワガママ王子なわけがない! ~交通事故で転生したら、評判最悪の王族になっていた件~  作者: 角砂糖
第二章 え、誰だよお前ら!? 城外で無名の三人と遭遇!
16/22

初陣!暁の牙、怪鳥を討つ!

王城の密室。

倫太郎、渚、ミラの三人は机を囲んでいた。


「……俺たちは動ける時間が限られてる。王子の公務や監視の目があるし、そう遠くまでは出られない」

倫太郎は腕を組んで唸った。

「でもユリウスたちだけに背負わせるのは酷だ。戦力が足りなすぎる……」


渚は静かに頷いた。

テーブルの上に置かれたのは、鈍い光を帯びる召喚石。


それはつい先日――。

倫太郎が「余は退屈だ! 召喚石を再び探し出せ!」とギルバートに命じた結果、禁書庫の奥深くから掘り出されたものだった。

「この召喚石でこの糸を……私の世界と結ぶことができれば」


倫太郎の目が開かれる。

「つまり、渚の世界から仲間を呼べるかもしれないってこと?」

「ええ。かつて共に戦った“彼”ならば、きっと……」


光が満ちる。

次の瞬間、机の上にゴーグルを額に上げた青年が姿を現した。


「……は!? な、なにここ!? って、渚!? お前まで……!」


橘 理人。

発明好きのムードメーカー、霊糸を持たぬ代わりに数々のガジェットを操る“参謀役”だ。


「理人さん……!」

渚が目を見開き、かすかに微笑む。



理人は状況を一瞥し、渚の隣にいる見知らぬ少年に視線を移した。

「で……そっちの金髪イケメンは誰? ってか、ここどこだよ!」


倫太郎は観念したように深呼吸し、頭を下げた。

「俺は……高原倫太郎。見ての通り、今は“王子アレクシス”の体を借りてる。事情は……複雑なんだ」


王子の悪名、異世界転生、そして渚を呼んだ経緯。

倫太郎は包み隠さず語った。


理人は腕を組み、やがて苦笑した。

「……マジかよ。王子の中身が高校生? 信じらんねーけど……渚が一緒なら嘘じゃなさそうだな」



「……ありがとう、信じてくれて」

倫太郎は安堵の息を吐き、すぐに真剣な眼差しに変わった。

「それで――頼みたいことがあるんだ」


「頼み?」

理人が片眉を上げる。


「ユリウスたち……あの三人組だ。戦う意志も勇気もあるけど、経験も支援も足りない。

俺たちは王城からそう遠くへは動けない。だから、理人……君に彼らの支援を任せたいんだ」


理人は少し目を細めた。

「へぇ……なるほどな。王子の直轄チームじゃなくて、庶民上がりの新人パーティをバックアップするってわけか」


渚が静かに補足する。

「彼らの心は純粋です。ですが、その糸はまだ細く脆い。導き、支える存在が必要でしょう」


ミラもこくりと頷いた。

「……わたしもそう思います。あの三人に、未来がありますから」


理人は肩をすくめ、そしてにやりと笑った。

「はは、仕方ねぇな。俺の専門は“後方支援”。

頭脳とガジェットで守ってやるのは、むしろ得意分野だ」


「理人……!」

倫太郎の表情に安堵が広がる。


「よし決まりだ。ユリウスたちのチーム、俺が支える。

王子サマ――じゃなくて倫太郎、お前はそこで見守ってろ」



数日後。

王都郊外の冒険者ギルド仮設支部。


ユリウス、セリナ、ガルドの三人が登録を済ませた直後――。

そこに加わったのは、奇妙なゴーグルと自作ドローンを背負った新顔の青年だった。


「えっと……俺は橘 理人。発明とか解析とかは得意だけど、剣も魔法もさっぱり。まあ、頭脳労働担当ってことで」


ユリウスは唖然とした後、にやりと笑った。

「いいじゃないか! 俺たちに足りなかったのは、そういう奴なんだ!」


こうして――四人の新しい小さなパーティが誕生した。

ユリウスが掲げた名は、少し気恥ずかしく、けれど誇らしげに響いた。


「俺たちは今日から――《暁の牙》だ!」



王都広場に新設された冒険者ギルド。

まだ机や椅子も仮設のような粗末さだったが、掲げられた依頼板には早くも一枚の紙が貼られていた。


【依頼】

『郊外の農村近くで怪鳥が目撃された。

家畜の被害が続出し、このままでは人々の生活に支障をきたす。

急ぎ調査と討伐を求む。』


「おお……これが、俺たちの初依頼か!」

ユリウスが目を輝かせる。


セリナは不安げに依頼書を握りしめた。

「……でも、怪鳥って……。私たち、まだ経験が浅いし……」


「だからこそ、だろ?」

理人が肩をすくめ、ゴーグルを下ろす。

「データも足りない。俺のガジェットで弱点を探す。ユリウスは突っ込む、ガルドは守る、セリナは支援。俺が指揮する」


ガルドは黙って頷き、盾の革ベルトを締め直した。



郊外の空。

影が差すと同時に、甲高い鳴き声が響き渡る。

翼を広げれば人間二人分はある怪鳥が、旋回しながら村の鶏小屋を襲っていた。


「来たぞ!」

ユリウスが剣を抜き、地面を蹴る。


セリナが震える声で詠唱を紡ぐ。

「――《炎よ、矢となりて!》」

放たれた火矢が翼をかすめ、怪鳥がバランスを崩した。


「ガルド!」

「おうっ!」

盾が唸り、落下してきた怪鳥の鉤爪を受け止める。


その隙にユリウスが剣を振り抜き、翼に浅い傷を刻む。


だが怪鳥はまだ健在だ。鋭い嘴が振り下ろされ、セリナに迫る。


「デコイ・ドローン展開!」

理人の叫びと同時に、金属音を立てて飛び出した小型ドローンが怪鳥の注意を引き、爆ぜた。

煙と閃光に怯み、嘴が逸れる。


「今だ、ユリウス!」

「うおおおっ!」

渾身の斬撃が、怪鳥の首筋を断ち切った。


血しぶきが飛び、巨体が地面に崩れ落ちる。



しばしの沈黙。

やがて村人たちの歓声が上がった。


「やった……! 本当に、倒せた……!」

セリナは震える手を胸に当て、涙ぐむ。


理人はゴーグルを外し、にやりと笑った。

「ほらな。データと頭脳があれば、怪鳥くらいどうってことない」


ユリウスが大声で笑う。

「はははっ! 俺たち、やっと“冒険者”になれたんだ!」


その言葉に、全員の胸が高鳴った。


こうして――新生パーティ《暁の牙》の初依頼は成功。

彼らは名もなき存在から、一歩ずつ“冒険者”として歩み始めたのだった。

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