不穏な誘い
「君に話がある」――その一言は、まるで雷のように頭を打ち抜いた。
俺は振り向いた。
見知らぬ男。歳は40代くらいか。深い皺が刻まれた顔には、普通の人間にはない冷たい輝きが宿っていた。
何かが違う。理屈じゃなく、体が拒否反応を示している。
「お前の中に、眠っている力がある」
その声は低く、けれど確かな確信に満ちていた。
何を言っているんだ?俺はただの高校生だ。
だが、そんな考えはすぐに自分の頭からこぼれ落ちた。
心の奥底で、何かがざわついていた。
今日の授業中から感じていた違和感、普通じゃないと気づいていた感覚。
けれど、それを認めることは怖かった。
「力がある」――その言葉に嘘はなかった。
けれど、まだ何も知らない。何もできない。
それなのに、どうして俺を知っているんだ?どうして見つけたんだ?
男は静かに一歩近づいた。
「覚悟を決めろ。お前の人生は、もう戻れない道に入った」
俺は息を飲んだ。
この瞬間、日常は崩れ去り、知らない世界の扉が開いたのだと感じた。
でも、まだその意味すら理解できずにいた。
遠くで、ドラムの音が静かに響いている。
その音は、まるで俺の胸の鼓動とシンクロしているかのようだった。