【SIDE 虹色スライム】誕生
そこはスライムの楽園だった。
多種多様なスライムが、それぞれの特性を最大限伸ばせるように環境から餌まで整えられていた。
常に笑顔で溢れ、溌剌とした若き日々を過ごす。
そしてスライムは戦士となって、いずれ出会う主人の元で戦うのである。
ところでスライムは、ある程度レベルが上がると合成が起こることがある。二つの個体は一つにくっつき、より強い新しい個体へと収斂される。
この楽園の主であるブリーダーは様々なスライムを作る必要があるらしく、スライム合成が起こりやすい環境を整えてもいた。
多様なスライムを用意すること。互いに傷つけ合うことなくストレスフリーに育てること。
この2つで、スライムは自然に新たな領域へと手を伸ばすのだ。
そもそもの種類が多く、頻繁に合成も起こる。
その結果この楽園は、この世界でもっとも様々なスライムの共存する場所となった。
それは、それが生まれる条件が整ったことを意味した。
百種にも及ぶスライムたちは、自分たちの神を生み出す本能に誘われた。
それぞれが自分の一部を渡し、集まり、一つになる。
様々なものが混じり合った新種のスライムは、すべてのスライムの特性を譲り受けて一つ一つの細胞レベルで万能となる。
ドロルが作り上げた楽園で、それは生まれた。
四大凶兆が一つ。
万能細胞を持つ極彩色に輝く不定形生命体。
虹色スライムである。