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エピローグ

雨が降っていた。傘を差す気分にならなかった。全身を雨という弾丸が絶え間なく打つ。


墓の前に純一は立っていた。目の前にあるのは啓二の墓だった。叩きのめした陽一、警察に突き出した陽一、陽一の罪は不問になった。陽一 の親は絶大な力をもっていた。富も、力も、全てを持っていた。


陽一、平然とした顔つきだった。それが当たり前のように道端を歩いていた。会った。いつもどおりの酷薄な微笑、お前はもう俺じゃねぇってわかったからつまんねぇよ、と吐き捨てられた。 また何かを失ってしまった。陽一との奇妙な友情、感じられたと思ったら消えてなくなっていた。


惜しいとは思わなかった。ただ、空しかった。陽一は大学を辞めた。行き先は知らない。何を思っているかもわからない。何を していくかもわからない。


ただ、もう二度と会うことができなくなってしまったのだと理解した。啓二と同じように純一の中で陽一は死んだ。


「お前らまで俺を――置いていくのかよ」


もうすがるものはなかった。本当に独りになった。陽一がくれた狂気は欠片も残っていない。空虚だった。白い闇が 目の前を広がっている。純一は声を押し殺して泣いた。泣き続けた。


どのくらい経ったのか、雨が止んだ。誰かが後ろにいる気配、背筋が凍った。ガクガクと足が震えた。だが、陽一であってくれ と願っていた。


そう、陽一ならば――また、俺を連れてってくれる。空虚をあますことなく暗闇で塗りつぶしてくれる。何でもよくなって いた。自棄になっていた。孤独にさいなまれた。心の空虚、何もかもを壊した。


「ねぇ」


女の声だった。予想外だった。もう二度と聞くはずのない声だった。振り返るのが怖くて振り返れなかった。


「もしも、私のこと、好きって言ってくれたら一緒にいてあげるけど、どうする?」


以前聞いた真摯な声と問い――答えは一つしかなかった。今なら答えられた。心の底から言うことが できた。


純一は後ろを振り返った。

















終幕


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