第九十五話 時計台に潜入!
レミーが俺達に紙を渡そうとした。
「心配するな。ロバート達にすでに託してある」
「依頼って、何の依頼です?」
「商人のディエゴの捜索依頼ですよ。今朝、彼の仕入れ先の商人から、行方がわからないから探してほしいって依頼が来て」
すでに依頼が出されていたか。だけど本来ならこの手の依頼は、ほかの依頼と同様掲示板に貼られるのが通例だ。
つまり俺達専用の依頼、というわけだな。ジョニーも気が利くな。まぁディエゴの居場所はもうわかっているから、捜索する必要はないんだけどね。
「ディエゴは仮にも大商人ですから、彼が行方不明となると、騒ぎが大きくなります。どうか一刻も早く探し出してください」
「大丈夫だレミーさん、俺達に任せてくれよ。それはそうと、無理はしないでくれよ」
俺はレミーを気づかった。するとレミーが少しだけ照れくさそうな顔を見せた。
「あ、ありがとう……ございます」
なんてかわいいんだろう。俺は別に気づかっただけだなんだが、もしかして俺のことまんざらでもないのか。
そんな変な想像をしていると、パメラとエイダがムスッとしたような表情で俺を睨んだ。
「さあ、もう用は済んだから早く行きましょ!」
「ロバート、さっきも言ったけど時計台に行きましょ!」
パメラとエイダが俺の腕を掴んで、半ば強引にギルドの外へ連れ出された。二人ともかなりの力で掴んでいる。まずいな、もしかして二人から変に誤解を生んでしまったかも。
ギルドから歩くこと約五分、俺達は高さ約五十メートルはある大きな時計台の目の前までやってきた。最上階の外側の壁に大きな円形の時計が飾られている。今は朝の11時半か。
「間違いない。ここがソーニャの町の時計台だな、それにしてもデカいな」
「ねぇ、エイダ。いい加減ここに来た目的を教えてくれない、何の理由もないのにここに来ることはないでしょ?」
パメラが質問した。エイダは答えず、俺の方を見た。
「その答えは……ロバートなら知ってるでしょ?」
「え? 俺が……でもここに来ようって言ったのは、エイダじゃないか?」
「う、なんというか。その……あれよ。あなたならこの塔の秘密、知ってるんじゃないかって思ったの」
「塔の秘密? なにそれ?」
「私も噂に聞いただけなんだけど、なんでもすんごいお宝が隠されてるらしいのよ。この塔には!」
エイダが興味深い話をし始めた。実際そのお宝の正体を俺は知っている。前世の記憶を頼りにするとあのアイテムしかないが、そんな噂が広まっているということ自体俺は初耳だ。
「お宝ですって? この塔に?」
「そうよ。ロバートならそのお宝の詳しい在り処と、お宝の中身がなにか知ってるんじゃないかって思ったの」
「そうだな。それは……一応心当たりはあるけど」
「本当? でも、なんというかそのお宝が、ルウミラとの戦いに役立つの?」
「多分、大いに役に立つよ」
俺がそう言うと、パメラも真剣な表情で俺を見つめた。
「あなたがそこまで言うなら、私も気になるわ。よし、それじゃ行きましょう!」
パメラが意を決して、時計台の一階正面の入口のドアを開けようとした。しかし。
「……開かないわ」
「ごめん、そうだったわ。ここは確かに時計台だけど、普段は鍵がかかってるの。唯一開くのは、塔の整備や清掃する管理人が来る時だけ」
「その管理人が来るのって、何時頃?」
「通常だと、夕方過ぎだね。だけどそんな時間まで待てないから、隠し扉から入ろう」
「か、隠し扉ですって?」
「ついて来てよ。俺がその隠し扉の場所を知ってるから」
俺はそのまま時計台の一階の後ろ側に回り込んだ。パメラとエイダも俺の後に続いた。
「扉なんかどこにも見当たらないけど」
パメラの言う通り、一階の入り口の反対側の壁にはどこにも扉らしいものは見当たらない。
「さっきも言ったけど、隠し扉なんだ。ちょっと待って、確かこの辺に……」
俺は壁際に並んでいる複数の植木鉢の前に立った。俺の記憶が確かなら、この植木鉢のどれかが鍵となっている。
「えぇと……これかな?」
一つだけ植木鉢の土の量が異様に膨らんでいた。その土を掘り返すと、下から金属製の細長い筒が出現した。
「なんなのそれ? 剣の鞘にも見えるけど……」
「その通り。これは鞘で、剣を差し込めば隠し扉の鍵を見つけられる仕掛けなのさ」
「まさか……でもあなたのその剣じゃ、形状的に無理があるんじゃ」
エイダの言う通りだ。俺が持っている〈コスモソード〉は、この鞘の中には入らないだろう。だけどもう一本俺は剣を持っているんだ。
「ちょっと待って。もう一本剣を出すから」
「もう一本?」
「ほら、これだよ!」
アイテムボックスに入っていた一本の剣を取り出した。
「それって……〈銅の剣〉じゃない」
「俺の実家から持ってきた剣だ。特に使い道はない剣だったけど、やっと出番が回ってきたな」
俺は持っていた〈銅の剣〉を鞘から抜き、鉢に固定されていた鞘に入れた。
「ピッタリだ」
ガタッ!
〈銅の剣〉を鞘にはめた途端、音が聞こえた。見てみると、なんと剣を挿したちょうど真上の位置の壁の部分に、丸い穴が開いていた。
「なに、この穴?」
「この穴の中に手を入れると……」
「気を付けて、ロバート!」
穴はちょうど俺の腕が入るくらいの大きさだ。奥の方まで右手を突っ込むと、指が入るくらいの小さな窪みがあった。その窪みの中に指を入れてみる。何やらスイッチのようなものがあり、俺は思い切って押してみた。
ゴゴゴゴゴゴ
何かが動く音がした。ちょうど横側の壁の一部分が、地面に潜り込んでいった。
「ビンゴだ。これが隠し扉だよ」
「こ、こんな仕掛けが……」
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