第九十二話 ルウミラ戦の秘策!?
ジョニーがここで口をつぐんだ。かなり言いづらそうな態度だな。
「……とある国の公爵令嬢、とだけ言っておこう」
「公爵令嬢ですって? 貴族の中でも爵位が一番上で、王族とも繋がりがあるとされているあの……」
パメラが驚愕した。公爵令嬢か、ファンタジー世界でよく登場する貴族の令嬢だけど、前世ではその手のお話が世間で人気があったな。
でもジョニーの言葉で俺はさらに気になったことがあった。
「もしかしてその人って、帽子を被っていなかった?」
「なに? どうしてそのことを?」
やっぱり俺の思った通りだ。ディエゴの店で現れた貴族の女性の正体が掴めたぞ。
「実は、俺達その人に会ったことあるんです。正確にはディエゴと会っているところを見たんですけど……」
「ディエゴと会っていた? まさか例の……」
ジョニーがここで口に手を当てて黙り込んだ。明らかに何かを知っている様子だ。
「ジョニーさん、知っていることがあったら全部話してくださいよ。俺達に隠し事はなしだぜ」
「いや、すまん。俺からも知っているのはこれだけだ。それ以上知りたかったら、ディエゴに聞いてくれ」
「ディエゴか。そのためにはなんとしても、この〈シーリングボール〉から助け出さないとな」
「ルウミラがディエゴを閉じ込めたのはほぼ間違いないだろう。となれば、ディエゴを助けるには方法は一つ」
ジョニーが俺達の顔を見た。何が言いたいのかもう察しはついた。
「ルウミラに頼むしかない、ってことか?」
「そうだけど、それができたら苦労はしないわ。あのルウミラがどういう理由で閉じ込めたかは定かじゃないけど、〈シーリングボール〉を物理的に破壊することは不可能。
この魔法道具は、使用した本人しか出し入れできないよう、特殊な魔法が施されているようね。でもその魔法は、使用した本人が死んだら解除されるはずよ」
エイダが長い説明を加えた。だけど今の説明を簡単にまとめると、結論はこうなるのか。
「つまり、ルウミラを倒すしかないってことか?」
「多分……そうなるわね」
「おいおい、物騒な話はやめてくれよ。仮にも相手は帝国の魔道士だぞ、しかもランクSだ。間違っても戦って解決などと……」
「もちろんそれはあくまで最後の手段よ。だけど、あのルウミラが素直に私達の話を聞くとは思えないわ」
「なんだかルウミラのことかなり詳しいようね。そもそもどんな人でどんな性格か、簡単に説明してくれない?」
「……目的のために手段を選ばない女、とだけ言っておこうかしら」
「そ、そう……」
エイダの言葉はかなり怖い印象を受けた。でも実際俺も前世で何度も会ったことがある(もちろんゲーム内で)
ルウミラといえばキシア帝国が誇る最強の魔道士、という設定だ。エイダの言う通り高ランクの魔法や禁呪魔法を使用でき、ストーリー上では幾度となくプレイヤーの前に立ちはだかる敵キャラだった。
そのルウミラと明日にも戦うことになるかもしれないなんて。これは楽しみだな。
「最悪戦うことになるかもしれないわ。明日の昼過ぎまでに、準備を万全に備えておきましょう」
「本来なら私も行ってあげたいが、その紙に書かれている内容に従った方がいいだろう。無事を祈っているよ」
「わかった。それじゃもう宿に行こうか。今日はもう休もう、明日は忙しくなるな」
俺達はそれからギルドを出て、一昨日止まったのと同じ宿に宿泊することにした。なんと今夜は宿泊料が無料とのことだ。
アナコンダとケツァルコアトルの二体を倒したことで、ジョニーから俺達をVIP扱いにするように言われたらしい。ジョニーも気が利くな、今夜はぐっすり眠れそうだ。
「あれ? ここはどこだ……って、俺の実家か?」
気が付くと俺はロバート・ヒューリックの実家にいつの間にかいた。俺は宿の部屋で寝ていたはずだ。どうしてこんな場所に。
「待てよ。この現象覚えがある……確か昨日も」
「そうよ。またここに戻ってきたわね、ロバート」
後ろから聞こえたのはエイダの声だ。なんでエイダもいるんだ。
「……あ! 思い出した、これは俺の夢で」
「そうよ。私の〈コネクティングロープ〉、まだ続いてたみたいね。よかった」
エイダがまたも右手に持った長いロープを見せつけた。そうだった、俺は今エイダの特殊な魔法にかかっている。夢を見るたびに、エイダと一緒に俺の実家に飛ばされるんだ。
「なぁ、頼むからその魔法解除してくれないか? なんというか俺はぐっすり眠りたいんだ」
「そんな悲しいこと言わないで、私はロバートと一緒に寝たいのよ。特に今夜はね」
「え? それは……どういう意味?」
エイダがすごく真剣な顔で俺を見つめている。一緒に寝たいだって。さすがにこの雰囲気はまずい。パメラが知ったらなんと思うだろうか。
「さ、さすがにさ……こんなことは駄目だと思うよ。いくら夢の中だからって、そんな……」
「もう、また変な勘違いしちゃって! 私が話したいのは明日のことよ」
「明日のことって?」
「忘れたの? ルウミラのことよ。明日彼女と大灯台で多分戦うわ」
「そういえばそうだな。で、俺に何か聞きたいのか?」
「彼女を……ルウミラを倒したいの。何か、秘策はない?」
エイダが突っ込んだ質問をした。この俺に聞くっていうのか。いや、昨日のことから、すでに彼女に俺の記憶は覗かれている。
「……あぁ、ルウミラの倒し方か。というか、あくまで戦う覚悟なんだな」
「えぇ、そもそもあんな置手紙を残した以上、彼女だって私達と一戦交えるつもりのはずよ」
「そうだな。でも彼女は強い、正直今の俺達で戦うのは厳しい相手だ」
「そんな、あなたまでそんなこと言うの?」
「いや、その……エイダが俺の記憶をどこまで覗いたかわからないけど、何も知らないで中途半端に挑んでも返り討ちに遭うだけだ。ちゃんと攻略法を練らないと」
「こ、攻略法……」
俺はあえて前世と同じような感覚で話してみた。まるで上級者が初心者プレイヤーに強敵の攻略法を伝授するときのように。
「ルウミラの一番厄介な点は結界を張ることだ。〈不動結界〉といって、この結界を張られると、ありとあらゆる物理攻撃を無効化されてしまうんだ。剣や槍、弓矢などの攻撃は全部通じなくなる」
「え? っていうことは……」
「そうさ。俺とパメラはこの結界を張られた時点で、彼女にはどうあがいても勝てない。それこそ一定時間が経過して、結界が破れるまで待つ必要あるけど、
そんな悠長な戦法で勝てるほどやさしい女じゃないさ」
まぁルウミラが結界を張る前に速攻で倒すという方法もあるけどね。というか、俺の高ステータスならゴリ押しで倒すことも可能なんだが。
「……物理攻撃を無効化する結界、なんて厄介なの。でもそれじゃ、ルウミラと戦うことになったら私しか……って、あぁ!?」
突然エイダが叫んだ。なんと彼女の体が若干透けてきている。何が起きているんだ。
「なんか……体が透けてるように見えるけど?」
「ロバート、早く答えを教えて!」
エイダが俺の両肩を強く掴んだ。かなり緊迫しているな。
「急にどうしたんだよ? というか、どんどん透けてきているけど大丈夫か?」
「大丈夫じゃないわ! 私の魔法の効果が切れるの。やっぱりまだ未熟だったわ」
「えぇと、ってことはあと少ししたらエイダは……」
「だから、早くルウミラを倒す確実な方法を教えて! なんでもいいから!」
エイダの魔法が切れるのか。なんか嬉しいのか嬉しくないのかわからないが、ここは俺ができるだけのことをしてあげよう。
「わかったよ。さっきも言ったけど、ルウミラには物理攻撃を無効化する結界があるから、魔法攻撃しか頼りにならない。だから基本魔法攻撃主体で攻めるしかないけど、エイダの魔力がルウミラより高くなれば、多分いけるよ」
「そんな……明日までに私の魔力をそこまで高くする方法なんて、あるわけが」
「いや、確実にあるんだ。ちょっと待って、俺の記憶を辿らせてもらうよ」
俺は前世の記憶を辿った。ほかのプレイヤーのステータスをほぼ恒久的に、爆発的に上げる方法が実はあるんだ。
俺が目を閉じてしばらくすると、目の前に小さなピアスが二つ落ちてきた。
「なにこれ? ピアスが二つ?」
「このピアスをつければいけるはずさ。どこにあるのか今から教えるね」
俺は一通りエイダに場所の在り処とピアスの効果について教えた。彼女は目を輝かせた。
「……すごい、そんな方法があったなんて! それなら勝てるわ! やっぱりロバート、あなたを頼ってよかった」
「いいって。でも、この夢が覚めたら俺の記憶は……」
「安心して。私は覚えたままよ。明日そこに案内してもらうから、よろしくね」
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