第九話 レベルアップとステータスの相関
レベルN時点でのステータス総合値 = (炎の数)× N
ステータス総合値をY、炎の数をa、レベル数をXで「Y=aX」の関係となります。
割り振り値 = レベルNのステータス総合値 - レベルN-1のステータス総合値
今後もちょくちょく出てきます。
割り振り値は〈開花の儀〉でキャラクターに与えられる炎の数が関係している。俺に与えられた炎の数は二つだった。この二つとは、ステータス総合値の初期値だけでなく、一次関数の比例係数となっているんだ。
数学が苦手な俺は、この法則を理解するのに苦労した。キャラクターがレベルアップ時に新たに設定される割り振り値と、ステータス総合値は、実はこのような数式で表される。
レベルN時点でのステータス総合値 = (炎の数)× N
数学的に表現したら、総合値をY、炎の数をa、レベル数をXとして、「Y=aX」となる。中学の数学で習う一次関数の式だ。
仮に最初に与えられた炎の数が九つだとしたら、レベル1でのステータス総合値は9だ。これを公式に当てはめると「9=9×1」となり、確かに一致する。
俺の場合は炎の数が二つだったから、レベル1だと総合値は2、レベル2だと「2×2」と計算されるから、総合値は4となる。
そしてレベルアップ時での割り振り値の計算式はこうなる。
レベルNのステータス総合値 - レベルN-1のステータス総合値
レベルが2に上がったら、レベル2のステータス総合値からレベル1のステータス総合値をマイナスした数が、割り振り値となる。
ここまで説明したら、いかに炎の数が多ければいいかがわかるだろう。計算すればわかるが、ステータスの割り振り値とは炎の数と一致する。炎の数が九つだと、レベルが上がるごとにステータス総合値が9ずつ上がっていく。
一方炎の数が二つだと、どれだけレベルが上がろうとも、ステータス総合値は2ずつしか増えない。炎の数が二つしかない戦士が最弱と揶揄される理由はこれだ。
つまりステータスの伸びしろがとにかく低すぎて、どれだけレベルが上がろうとも強くならない。むしろレベルが上がれば上がるほど、差が拡がっていく仕組みだ。
仮にレベルが10まで上がったとしたら、炎の数が九つのキャラクターは総合値が90、二つだけのキャラクターは総合値が20、その差は70もある。
これだけ聞いたら、理不尽なゲームだなと思われるかもしれない。それまでのRPGはなんだかんだで、レベル上げこそ正義、という風潮が強く、実際レベル上げで攻略が簡単になるケースは多かった。
しかしこのゲームはそうもいかない。最初に与えられる炎の数で、その後の成長具合に天と地ほどの開きができてしまうのだ。レベルを上げてのゴリ押し戦法が通用しなくなる、何とも理不尽だ。だから〈開花の儀〉の炎の数で低い数が出たら、リセットせざるを得なくなる。
というのが、〈ロード・オブ・フロンティア〉における基本的なキャラクターの成長のシステムだ。運営会社が公開する攻略サイトにも堂々と載っていたから、多くのプレイヤーにとっては常識だ。そう考えれば、俺が儀式で与えらえた二つの炎は外れ中の外れ。
そしてそれを証明するかのように、今の俺のレベルアップ時で割り振られた値も2だった。つまり計算通りになっている。
ここまではね。
そう、俺が事前に行った裏技が成功しているなら、この後のレベルアップ時でのステータスの割り振り値は異なる。
そのためにも今は取り敢えずレベル5までは上げたい。俺は早速与えられた割り振り値を、設定することにした。最初に割り振るステータスの項目はもう決まっていた。
「防御に2だ」
防御は文字通り値が大きければ大きいほど、被ダメージが軽減する。そうは言っても、たかが0から2に上がっただけじゃないかと思われるかもしれない。
実はそうじゃないんだ。確かに俺のステータスはレベル1の時点で、攻撃力と体力が1で、それ以外は全部ゼロだった。
しかし今はそうじゃない。防御に2を割り振って、俺は改めてステータス画面を見た。
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ロバート・ヒューリック (貴族)
ランク:D
レベル:2
HP:20/20
MP:0/0
攻撃力:2
体力:2
防御:4
素早さ:0
器用さ:0
魔力:0
跳躍:0
魔法防御力:0
状態異常耐性:0
割り振り値:0
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防御が4になっていた。そしてHPと攻撃力、体力はそれぞれ2倍の数値になっている。普通に考えたら計算が合わないだろう。
でもそうじゃない、これが正解だ。なぜなら今の俺は、ぶっ壊れ武器の〈コスモソード〉を装備している。実はこの武器には恐ろしい特性がある。
その特性とは「装備している者の全ステータスが2倍」になるというもの。制限時間も何もない、常時二倍のバフを全ステータス与えられている。
これがこの武器がバランスブレイカーと呼ばれている理由の一つだ。そしてその特性は俺のステータスが2倍になっていることで、問題なく発揮されている。
防御が4になったことで、俺が敵から受けるダメージ量は相当減っている。それを確かめるべく、俺はまた森の奥へ進んだ。
「いたいた。ここは奴らの巣か」
奥へ進むと、俺がさっき倒したホーンリザードが群れを成して固まっていた。数にして六匹は下らない。ちょうどいい、こいつらを倒して、さらにレベルを上げてやる。
第九話ご覧いただきありがとうございます。説明だらけになって申し訳ございません。
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