第八十六話 カルロスの乱心
ふとパメラの顔を見ると、ゾッとしたような顔をしている。何か怖いものでも見たか。
まさかケツァルコアトルが生き返ったのか。俺も急いで振り向いた。
すると俺の目の前に男が立っていた。すぐに誰かはわかった。
「カルロス!?」
「そいつをよこしてもらおうか、小僧! 命が惜しければな」
カルロスが怖い顔しながら俺を睨んでいる。だがよく見たら、右手で持っていた槍の矛先が俺の顔の目の前まで迫っていた。俺を脅迫しているのか。
「カルロス! あなた、何考えてるの!?」
「パメラは黙っててくれよ。これは俺とロバートの問題だ。さぁ、コアをよこしな。そうすれば槍を下げてやるからよ」
「コアをよこせだって? まさかお前は……」
「そうさ。ケツァルコアトルの討伐報酬は俺達のものだ。金貨二百枚だからな! 諦めてたまるかよ」
呆れた奴だ。逃げたと思ったのにまた戻ってきて、俺がケツァルコアトルを倒しコアを取り出すのを見計らっていたのか。
「カルロス、見損なったぞ! 誰のおかげで助かったと思ってる? お前には戦士としての誇りやプライドはないのか?」
同じく戻ってきたバティスタが後ろから非難した。バティスタはまだ常識人のようだ、パーティーを組む相手を間違えたな。
「バティスタの言う通りよ。槍を下げなさい、さもないと……」
今度はパメラが弓を構えようとした。
「おぉっと、パメラ。動くんじゃねぇ! 俺の槍の矛先が誰に向いているか、見えねぇのか?」
パメラも動きを止めた。これじゃ俺が人質扱いになっている。でも意味ないんだけどな。
「カルロス、よせ! 報酬を横取りにするなど、バレたら永久追放だぞ!」
「バティスタ、お前こそ冷静になれ。金貨二百枚だぞ、それに最初五人いたがもう俺達二人だけだ。つまり山分けで一人金貨百枚になる、それでも欲しくないのか?」
「金貨……百枚」
バティスタの表情が変わった。もしかしてカルロスに同調してしまったのか。
「ちょっと! まさかバティスタまで!?」
「……残念だが」
バティスタは斧を右手に持って構えた。
「それでいいんだ。よしバティスタ、一発大技をかましてやれ。そうすればこいつらも考えが変わる」
「わかった」
「ちょっと……考え直して!」
だがバティスタはパメラの言葉を無視して、斧を両手で持ち俺達に向けた。
そして両脚を広げ、斧を両手で高々と持ち上げた。今にも強烈な一撃が襲い掛かりそうだ。まずいぞ、俺は大丈夫だがパメラとエイダは消耗しているはずだ。こんな状態で奴の大技を喰らったら。
「ただしカルロス! お前にな!」
「え? なんだって?」
バティスタが急に方向を変え、カルロスに向き直った。そのまま勢いよく斧を地面に叩きつけた。
「〈地裂撃〉!」
ドォオオオオオン!!
直後、地面から大量の土砂の塊が噴出し、カルロスは吹き飛ばされた。
「うわぁあああああ!!」
「カルロスよ。お前とはもう組まん!」
カルロスの姿が見えなくなった。一瞬何が起きたのかわからなかったが、バティスタがカルロスを粛清してくれた。哀れな奴だったな、最初からおとなしく逃げていればよかったのに。
「バティスタ、ありがとう。一瞬だけどあなたを疑ってしまったわ」
「いや、謝るのは俺の方だ。あそこまで性根が腐った奴だとは俺も思わなくてな、正直一瞬だけ金貨百枚の言葉を聞いて戸惑ったよ。だが……倒したのはお前達だ。それを忘れてはいけない」
なんて素直で謙虚な男なんだ。ここまで言われたら逆にお礼をしたくなる。
「バティスタ、君がよければ討伐報酬を少し分けてやってもいいんだけど……」
「な、なに……?」
「ちょ!? 何言い出すの、突然?」
パメラが突然大声を出した。
「いいじゃないか。金貨二百枚ももらえるんだったら、少しくらいは分けても」
「そういう問題じゃない! あのね、ギルドの討伐報酬はそのモンスターを倒した戦士か、その戦士とパーティーを組んでいたメンバーだけしかもらえないの。それがルールなのよ」
「そうなのか」
「ロバート、あなたの気持ちわからなくはないわ。だけどバティスタの気持ちも考えてあげなさい」
バティスタの顔を見た。明らかに不満げな表情を浮かべている。
「だったらバティスタ。私達とパーティーを組むってのはどう?」
「ちょ、パメラ? さすがにそれは……」
「いいじゃないの。討伐報酬は駄目でも、パーティーを組むのはアリでしょ? ね、バティスタ? あなたがいいのなら、私達は全然ウェルカムよ」
パメラも突拍子もないことを言うもんだ。
「……その気持ちだけ受け止めておくよ。小僧、いやロバートよ。さっきのお前の戦いぶり見せてもらった。正直お前は強すぎる。なんというか、俺がお前達のパーティーに入り込む余地はなさそうだ」
バティスタの言葉にみんなどう返せばいいか戸惑った。だけどバティスタの言う通りだ。やはり人を見る目があるんだな。
「パメラ、それにエイダ。いいパートナーを見つけたな、俺は俺で好きにやらせてもらう。だが必要な時はいつでも呼んでくれ」
バティスタはそれだけ言い残して、中央広場から出て行った。
「……行っちゃった。でも本当にいいの、行かせちゃって?」
「彼の行動をとやかく言う権利は私達にないわ。それにバティスタってあぁ見えて、意外と一匹狼な一面があるから……」
「へぇ、意外だな。というか、バティスタのこと詳しいのか?」
「そりゃもう詳しいわ。昔、いろいろあって……ちょ! 何言わせんのよ!?」
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