第八十三話 激闘のケツァルコアトル戦②
突然誰かの叫び声が聞こえた。次の瞬間、ケツァルコアトルの背後に何かが衝突した。
「今のは……衝撃波?」
「小僧、そいつは俺がやる! 邪魔すんじゃねぇ!」
さっきと同じ男の声がした。まさかと思い見下ろすと、そこに槍を構えていたカルロスの姿がいた。
なんてことだ。衝撃波はカルロスが放ったのか。ちょっと待てよ、せっかく俺が奴の気を引き付けていたのに、これじゃ台無しじゃないか。
「おい、何考えてんだ!? 早く逃げろ! お前達じゃかなう相手なんかじゃないって!」
「うるせぇ、小僧! てめぇこそ死にたくなかったらさっさと逃げるんだな! そいつは俺が倒す、金貨二百枚は俺達のものだ!」
なんて奴だ。そこまでして討伐報酬が欲しいのか、いや金貨二百枚だったら意地でもそうなるか。
そしてカルロスの背後で、バティスタも声を掛けている。よく聞こえないが、恐らくカルロスを止めているのは間違いない。見た目に反してバティスタは冷静な男だ。
それに比べカルロスは気が短い。一昨日の適性検査もそうだったけど、やっぱり単純なんだよな。
「喰らえ! トルネードシュート!」
仮にもランクAだったから、繰り出す槍術スキルも高度だな。確かに飛んでいるモンスターには有効な攻撃だけど、相手が相手だからな。そこまで期待できない。
「ぎぃえええええええ!!」
あれ、ケツァルコアトルがよろめいている。意外と効いているのか。もしかしてバフか何かで強化されているのか。
「ははは、効いているじゃないか! バティスタ、見ろ! このまま押し切れば勝てるぞ!」
さっきの俺の一撃で奴のHPを相当減らしたんだ。恐らく奴のHPも残り僅かだ。
すると後ろにいたバティスタも意を決したのか、戻ってきた。まずいな、逃げると思ったのに、あの二人に倒されてしまう。
いや、別にいいか。俺は元々ここに何しに来たか、よく考えたらジョージを探しに来たんだ。金貨二百枚は惜しいけど、俺が欲しいのはあくまで〈覇王の魂〉の生成に必要な戦利品だけ。
ケツァルコアトルの角さえ手に入ればそれでいい。コアはおまけだ。となったら、俺はあいつら二人が倒すのを黙って見ていよう。これからどんな攻撃を仕掛けて、奴にとどめを刺すのか楽しみだ。
「バティスタ、例の連携で決めるぞ! 前へ出ろ!」
「おう!」
バティスタが猛ダッシュでカルロスの前まで出てきた。そして大盾を両手で持って止まった。
「〈フルパワー〉!」
バティスタがスキルを使った。あれは重戦士特有のスキルだ、一定時間筋肉が増幅し攻撃力が三倍になる効果がある。
バティスタの筋肉が遠くから見ても増大したのがわかった。すごい筋肉だな。
するとカルロスがバティスタの大盾の上にジャンプして乗っかった。バティスタはカルロスが持っていた大盾を斜めに構えた。まるでブーメランを投げる時のような構え方だ。
「〈ハイパーブーメラン〉!」
やっぱりそう来たか。直後カルロスが乗ったまま、大盾が大きな弧の軌道を描きながら、ブーメランのように飛んで行った。
大盾がそのままケツァルコアトルの胴体に直撃した。再び態勢を崩したけど、多分致命傷じゃないようだ。
「まだ終わりじゃないぜ!」
直後、大盾に乗っていたカルロスが大ジャンプをした。ケツァルコアトルの高度の二倍近くまで飛び上がり、槍の矛先を真下に向け一気に急降下した。
「〈飛竜降衝〉!」
カルロスの槍はそのままケツァルコアトルの後頭部に突き刺さった。
「ぎぃあああああああああああ!!」
ケツァルコアトルは悲痛な叫び声をあげ、そのまま地面に落下した。同じく地面に降りてきたカルロスはよろめきながらも、完全に勝ち誇った顔をしている。
「は、ははは! 見たか、俺達の連携を! ざっとこんなもんだぜ!」
槍術スキルの究極奥義だ。とんでもない大技がさく裂した。
あのスキルは大ジャンプして、急降下して真上から一気に攻撃する。恐らく普通に戦っていたら、ケツァルコアトルの高度まで届かない。
だけど今回みたいにバティスタが大盾をブーメランのように飛ばし、そのブーメランに乗ったままの状態なら、あの高く飛んでいるケツァルコアトルより高く飛び上がれるわけだ。
すごい連携だ。パメラも言っていたけど、やはり伊達にギルドマスターが推すランクAの戦士じゃないってわけだ。
「信じられん、本当にやったのか……」
「当たり前だろ、バティスタ! 俺達にかかればどんな強敵にも勝てるってわけよ! 逃げる必要なかっただろ?」
いや、そうじゃないだろ。一体どこの誰がケツァルコアトルのHPを半分以上も減らしたのか、まるでわかってないんだな。
まぁ、カルロスにそのことを説明しても理解できるわけないか。
「よし、あとはコアを取るだけだな。バティスタ、お前も手伝え。確かこいつのコアは……」
バアアアアン!
突然、雷が落ちる音がした。ふと見ると、ケツァルコアトルの角が上を向いている。
なんと空から降ってきた雷を、角が受け止めていた。まさかと思い、俺は空を見上げた。
「雨か!」
ぽつりぽつりと雨が降り出した。そのまま雨脚が強まり、次第に大雨となった。雲行きが怪しいとは思っていたけど、まさかこのタイミングで大雨となるなんて。
そして大雨になったということは、当然雷も発生する。ゴロゴロという音が止まない。これはかなりまずいことになりそうだ。
「おい、カルロス! 奴が!」
バティスタが大声で叫んだ。
「馬鹿な……そんな」
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