第七十八話 転移魔法陣からひとっ飛び!
「着いた、ここに間違いない!」
「こんな場所に本当に転移魔法陣があるの?」
俺達が向かった先は、コルネ村から北に離れた森の中、そこにあった古い小屋だ。どこからどう見てもおんぼろの木造の小屋にしか見えないが、その見た目からして俺は確信した。
「間違いないよ。確かここに……」
念には念をと、前世の記憶を頼りに入口のドアの真ん中あたりを見た。そこには五芒星のマークが描かれていた。
「五芒星!? これってまさか……」
「間違いない、転移魔法陣の印よ。まさか本当にこの小屋が?」
「信じられねぇ! 一発で俺達の秘密経路の場所を当てやがった、ロバートも来たことあるのか?」
「あぁ、昔何度かね」
昔、と言っても前世の話だけどね。
「でもこの小屋のどこに転移魔法陣が? 仮にあるとしても、広さ的に足りないと思うわ」
「この小屋は入口に過ぎないよ。地下へのね」
「地下? 地下に降りる階段があるの?」
「まぁ見ててよ」
俺は小屋に入って、部屋中を見て回った。と言っても、すぐにわかってしまった。
「……ジョージが閉め忘れているな」
「え? あぁ、まさかこれって……」
「隠し階段!?」
「あの馬鹿野郎、誰かに見られたらどうするんだ」
地下への隠し階段は、本棚のすぐ後ろにある。本棚の本の位置をずらすと本棚が移動し、地下へ降りる階段が現れるようになっている。古典的な仕掛けだ。
その本棚の位置が戻っておらず、階段がすぐに目に入った。でも逆にいえば、ジョージが明らかにここから古代遺跡に行ったことはほぼ間違いないな。
「ここを降りれば転移魔法陣がある部屋だ。付いてきてくれ」
俺が先導で暗い階段を下りてみた。しばらく降りるとすぐ目の前に開いたままのドアがあり、中に入ると石造りのドーム状の空間が広がっていた。
地下室だというのに異様に明るい。その理由は床から発せられていた光にあった。
「広い……こんな空間が地下に」
「床を見て! これは……」
「転移魔法陣!? 間違いない、五芒星状に光っているわ」
俺達は魔法陣の前に立ち止まった。
「あとはこの転移魔法陣を発動させるだけだ。エイダ、頼めるかい?」
「任せて。ちょっと時間かかるわ」
「本当に唱えられるの?」
パメラが不安そうな顔で訊ねる。
「大丈夫よ。転移魔法陣さえあれば、特殊魔法の〈モメント・スポスターレ〉を唱えて移動ができるのよ」
「えぇと、モメント……なに?」
「〈モメント・スポスターレ〉さ。転移魔法陣を発動させる特殊魔法のことだよ」
「それって、要するに転移魔法のことでしょ?」
「いや、厳密にいうと違うかな。本来転移魔法というのは、失われた古代魔法に位置するんだ」
「古代魔法? 転移魔法が? じゃあ転移魔法陣がないと、結局意味ないっていうの?」
「うぅん、こればかりは説明するとややこしいからな。また次の機会に説明するよ」
俺はふとエイダを見た。すると何やら魔導書らしき書物を取り出して、ブツブツ独り言を言い始めた。
「え、エイダ……どうしたの?」
「話しかけないで。〈モメント・スポスターレ〉は特殊な言語で詠唱しないといけないの。えぇと、「飛べ」はどこ?」
魔導書かと思ったら、一種の言語辞書みたいなものか。
「なんだかすごく難しそう。相変わらず魔法は複雑なのよね。って、あれ?」
「どうしたパメラ?」
「いや、ジョージさんはどうやって移動したのかなって……」
パメラがふと口にした疑問を俺も聞き逃さなかった。
「そういえばそうだね。ジョージは魔法が使えないはず」
「あぁ、そのことか。ジョージには秘密の道具があるんだ」
ホルスが口を挟んだ。
「秘密の道具? 転移魔法陣を発動させる道具があるの?」
「あぁ、そうさ……その名も……」
「〈ワープクリスタル〉のことか? まさかあのジョージが持っているとはね」
「そうそう、ワープ……って、だからなんでそんなことまで知ってるんだ? お前は大賢者か何かかよ!?」
ホルスが大げさに褒めた。パメラも驚いた目で俺を見る。
「いや、まぁその……優秀な家庭教師がいてね。昔その人にいろいろ教わっただけさ」
「よし、これで完璧!」
エイダが本を閉じた。
「エイダ、準備できたのか?」
「バッチリよ、みんな転移魔法陣の中央に立って。あと目は瞑っててね。かなり眩しくなるから」
エイダが両手を杖に持ち、先端についていたオーブを上に掲げ目を閉じた。
「サルト・カルテット・コルディナータ・ノード・レスティ!」
一瞬変な言語で詠唱したなと思ったが、これは〈モメント・スポスターレ〉の詠唱の言語だ。前世でも何度か耳にした。
未だに何を言っているのやら、さっぱりわからない言葉だ。あとでエイダに聞いてみようかな。
すると次の瞬間、目を閉じていたがかなり強烈な光が地面から発せられたのを感じた。
そして今度は俺の体が急激に軽くなった。いや、床が消えて宙に浮かんだという表現のほうが正しいかもしれない。ジェットコースターに乗った時の無重力感が続いた。
「ろ、ロバート……」
「パメラ? どうしたの?」
「なんでもない。絶対離さないでね」
「あぁ、いいけど……」
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