第七十七話 古代遺跡に向かう戦士達
俺とパメラとエイダは無言になって目を合わせた。ここで昨日の話を思い出した。
「そういえば、目撃情報はあったって言ってたな」
「そうね。だけどあくまで目撃情報だけで、まさか本当に討伐依頼が出るだなんて」
「アナコンダに続いて、ケツァルコアトルとはね。さすがにちょっと異常じゃない?」
「討伐依頼が出たということは、恐らく出現する場所も絞られたんだと思います。あなた方も古代遺跡に行くとしたら用心してください。古代遺跡の中央広場付近に出没するそうです」
中央広場か。そこは前世でも何度か足を踏み入れたことがある。広さ的にはサッカー競技場くらいあるんだが、定期的にレイドボスが出現するイベントが開催されていたっけ。多くのプレイヤーがそこで交流していた、懐かしい思い出だ。
それにしてもアナコンダの次は、ケツァルコアトルか。二体とも七つ星ランクの凶悪モンスターだ、連日でここまで強敵が出てくるだなんて。
この島で何か異常なことが起きているような気がする。俺はそんなことをふと考えた。
「おーい、お前ら! 遅いぞ、一体何やってんだ!?」
遠くから鳥の声が聞こえてきた。ホルスか、すっかり待たせてしまったようだ。
「なんですか、あの赤い鳥は!?」
「あぁ、あれはホルスだよ。さっき言ったディエゴって人のペットだ」
「私達、あのホルスのご主人を探しに北の古代遺跡に行くところだったのよ」
「え? ちょっと待ってください、まさかそのディエゴさんが行ったのって」
「おーい、もう準備は済んだんだろ。だったら早いとこ行くぞ、因みに場所は古代遺跡の中央広場付近だからな、そこまでは案内してやるから安心しろ」
ホルスの言葉を聞いて、俺達は全員目を合わせた。
「おい、ホルス。今なんて?」
「聞いてなかったのか? 北の古代遺跡の中央広場付近だ、ほらモタモタすんなよ」
「なんてこと! ケツァルコアトルの場所と同じじゃない!」
悪い予想が当たった。なんとなくそんな気はしていたが、まさかディエゴとケツァルコアトルの居場所が一致してしまうとは。
ただ急ぐといっても、少し問題がある。今いる俺達の場所はソーニャの町から南に30km以上離れている。逆に古代遺跡は、ソーニャの町から北に50km、つまり合わせると80km以上も離れている。
「まずいな、今からじゃ間に合うか? 80km以上も離れているし」
「〈フローティングボード〉を全速力で飛ばすわ。となると、パメラの〈スターライトアロー〉で」
「おいおい、ちょっと待ってくれ! まさか普通に移動する気じゃないだろうな? さっきの俺の話を思い出してくれよ」
「なんだよ、何が言いたいんだ?」
「俺達だけが知っている秘密の移動経路があるんだよ、言っておくがディエゴだって同じ経路で古代遺跡まで行ったんだぜ」
ホルスが気になることを言い出した。だが俺はなんとなくピンと来た。多分ホルスが言いたいのはアレのことだ。
「秘密の移動経路、もしかして北の古代遺跡まで瞬間移動できるとか?」
「おぉ、ビンゴ! その通りだよ、さすがロバートだ!」
「ちょっと、瞬間移動とか一体何の話してるの?」
「エイダ、突然だけどさ、あの魔法は使える?」
俺はエイダに訊ねた。魔道士のエイダならあの魔法が使えるはずだ。
「て、転移魔法……」
「そうさ。転移魔法陣がある場所があってね。そこに行けば北の古代遺跡まであっという間さ」
「ロバート、すげぇぜ! まさか俺とディエゴしか知らない秘密の経路のことまで知っていたとは、その様子じゃ転移魔法陣がある場所も知っていそうだな」
「あぁ、場所も知ってるよ。なんなら連れて行ってやるよ」
「エイダ、転移魔法とか本当に使えるの?」
パメラもエイダに訊ねた。エイダもしばらく無言だったが、急に笑い出した。
「あはは! 私を誰だと思ってるの? 転移魔法なんか朝飯前よ、そんなに見たいのなら早くその場所まで連れて行きなさい」
エイダもすっかりその気のようだ。それから村を出て、全員を転移魔法陣がある場所まで案内した。
ロバート達がコルネ村を出発した同じ頃、北の古代遺跡へ移動していた戦士の一行がいた。槍使いのカルロス、重戦士のバティスタはソーニャの町の宿にて謎の貴婦人から最強の助っ人である
ランクSの魔道士を仲間にした。
彼女の〈フローティングボード〉は二人の予想を超えるほどの速度で移動していた。ソーニャの町を発ってからまだ五分だが、古代遺跡の建築群が早くも見えてきた。
「こいつはすごい。さすがランクSの実力なだけあるな、あの貴婦人も気が利く」
「おいおい、たかがこいつの移動速度がすごいだけで実力を決めつけるなよ。実戦での腕前が全てだ、それを忘れるな」
「そ、そうだな」
「何をごちゃごちゃ言っている? もうすぐ着くぞ、準備はいいのか?」
二人が自分のことを話しているのを知らない魔道士は、強気な口調で話しかけてきた。
「大丈夫だ、気にしないでくれ」
だがカルロスの不満は収まらない。
「くそ、あの女。ルウミラとか言ったか、完全に仕切っているつもりでいるな」
「しょうがない。さっき〈鑑定石〉で覗いたが、ステータスの高さ、レベルの高さ、全て俺達を凌駕している。それにあの女も俺達の強さを把握しているだろうからな」
するとルウミラが二人のそばに寄ってきた。悪口を言われたと思ったカルロスは、動揺した。
「今更だが、なぜあの二人まで連れていく?」
ルウミラが指をさした先には、弓使いの戦士と剣士が一人立っていた。カルロスがギルドで事前にスカウトしていたランクBの戦士だ。
「あぁ、あの二人か。ランクBだが、レベルは高いから安心しろ」
「相手は七つ星のケツァルコアトルだ。少しでも人数が多い方が心強いだろ」
「そうか。別に臆病風に吹かれたというわけではなかったか」
「な、なんだと貴様!?」
カルロスが思わず殴りかかりそうになり、バティスタが必死で抑えた。
「おい、よせ! ルウミラも口の利き方に気をつけろ」
「ふふ、この程度の言葉で腹を立てるとは。噂通り気の小さい男だ」
カルロスはまたも腹を立てる。再び殴りかかろうとするカルロスだが、バティスタが渾身の力で押さえつける。
「ぐぅ、はなせバティスタ! 一発殴らせろ」
「いい加減にしろ! これから一緒に戦うんだ、仲間同士で争ってどうする? ルウミラもこれ以上余計なことを言わないでくれ!」
一触即発の事態に、後ろにいた戦士二人はおどおどしながら見ていた。
「あ、あのぉ……みなさん……」
「なんだ!? 今取り込み中だ」
「いや……もう着いたみたいで」
剣士の男が指をさした先には巨大な鉄製の門が待ち構えていた。そして〈フローティングボード〉も静止した。
「ここが古代遺跡の入口だ。降りるぞ」
ルウミラが先に降り立った。カルロスもバティスタから離れ、怒りを抑えながら降りた。
全員が門の前に集まると、剣士が異変に気付いた。
「すでに門が開いているな、誰かが開けたのか?」
「いいさ、誰だって。おかげで入りやすくなったじゃないか」
「地図によれば、この入口から北西の方角に進めば中央広場に行けるみたいだな。お前達二人は無理するな、ここに出現するモンスターは強敵ぞろいだからな」
地図を広げたバティスタが二人の戦士を気づかう。二人とも無言で頷いた。
「この戦いが終わったら二度とてめぇとは組まねぇ。行くぞお前ら!」
捨て台詞を吐いてカルロスは先んじて門をくぐった。
「おい、待て! どんな罠が仕掛けられているかわからないんだぞ! 慎重に行け」
バティスタも慌てて後を追った。その様子を見たルウミラは半分呆れていた。
(全く失望したな、まさかあそこまで度量の小さい男とは。実力もそこまで高くない、一般的なランクAの戦士とほぼ変わらない。
帝国基準だと奴クラスの戦士はゴロゴロいる、あのお方も買いかぶりすぎだ。となれば捨て駒にするしかないか)
そしてルウミラはオーブを取り出して左手に持ち、一人の少年の姿を映し出した。黒髪の貴族の少年、彼女が最も気になっている人物だ。
(アナコンダを倒したのが本当なら、恐らくこの少年もここに。ふふ、楽しみだ)
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