第七十四話 助けを求めに来た赤い鳥
ここが食堂か。すでにいい匂いがしている。昨日の夜、村長の屋敷でご馳走を食べたからあまり腹が減ってるわけじゃないが、朝だから何か食べておかないと。
「遅いじゃない。一体何時まで寝たら気が済むの?」
「ごめんごめん。思った以上に疲れが溜まってたみたいだ」
「へぇ、あなたでもそんなに疲れがね。まぁ昨日のあなたの活躍ぶりからすると、無理もないか」
「おはよう、エイダ。隣座らせてもらうよ」
俺はエイダの隣の椅子に座った。すると座った瞬間、エイダが俺を見て驚いた顔を見せた。
「お、おはよう……ロバート」
「どうしたんだ、そんなに驚いて? 俺の顔に何かついているか?」
エイダは急に目を逸らした。なんか様子がおかしいぞ。
「そ、そんなんじゃないわ! なんというか、その……よく眠れた、みたいね?」
「うーん、そうだな。だけどなんというか、寝すぎたという感じかな? 夢の内容全然覚えてないくらい深い眠りについちゃったみたいでさ……」
「本当に、覚えてないの?」
エイダが不安そうな顔で聞いてきた。
「うん、覚えてないな。どうしてそんなに気になるんだ?」
「いや、なんでもないわ。別にあなたが元気ならそれで充分よ、おほほ……」
「そんなにベッドの寝心地がよかったのかしら? 確かに一等級の部屋の感じはしたけど、昨日泊った宿には負けるわ」
「そ、そんなことより!」
急にエイダが立ち上がった。
「なによ、突然立ち上がって」
「ほら、昨日アナコンダを倒したでしょ? 戦利品も大量に手に入れたから、全部換金したらいくらになるかなって……」
「あぁ、そうだね。すごく大事なことだった、ちょっと待ってて」
エイダに言われて俺も気づいた。そういえば村長から討伐報酬はもらったが、アナコンダの戦利品の換金はまだだった。
「えぇと、アナコンダの鱗に牙、あとは瞳かな。そして体液……これだけあれば多分金貨五十……うぅ、おえ!」
「ロバート、大丈夫?」
俺は吐き気を催した。いつの間にかアイテムボックス内はすごい臭気で溢れていた。仮にもモンスターの体の部位だったからか、一日経って腐り始めたかも。
「ちょっとこれは、急いでギルドへ持って行った方がいいかも……」
「そうしたほうがいいわね。それじゃ早いとこ朝食いただきましょ!」
その後スタッフから朝食がテーブルへ運ばれた。昨日の宿の朝食には劣るけど、それでも腹を満たすには十分だった。
だけどある程度食べ終えたその時だった。
「……困ります、予約もしないで……あぁ、ちょっと!」
「なに? なんか外が騒がしいけど?」
食堂の外でスタッフの一人の大声が聞こえた。その時入口のドアがバタンと開くと、なんと一羽の赤い鳥が入ってきた。
「おぉ! やっぱりここにいたか、探したんだぜ!」
「お、お前は!?」
「ホルス、なんでここに?」
ディエゴの店で出会ったペットのホルスだ。この見た目と喋り方は絶対忘れられない。
「なんなの、この鳥? ロバート、どういう知り合いなわけ?」
「エイダ、この鳥はホルスと言って、商人のディエゴのペットさ」
「ディエゴ? ……あぁ、あの髭面の!」
「よぉ! あんたは魔道士のエイダだな、俺はホルスだ。伝説の炎の魔鳥……って、今はそれどころじゃなかった!」
「どうしたのよ? さっきから慌ててるみたいだけど」
「どうしたもこうしたもねぇ! 俺の主人が行方不明になっているんだ、もう一日経ってるんだが、未だに帰ってきてねぇんだ!」
「ディエゴが帰ってきてないだって?」
ホルスから衝撃的な言葉が飛び出した。
「ソーニャの町の北に古代遺跡があるのは知ってるな? ディエゴはそこに行ったみたいなんだが、まだ帰ってこねぇんだ」
「北の古代遺跡? なんだってそんな場所に?」
北の古代遺跡、確かにソーニャの町の北には、いにしえの民が建設したという都市や神殿の跡地が並んだ遺跡がある。今は人が訪れることもほぼない、無人の遺跡となっている。というのも、凶悪なモンスターが潜んでいる危険な場所でもあるからだ。
まさかディエゴがそこに行ったというのか、しかも一人で。
いや、よく考えれば一人じゃないか。確かディエゴは昨日店で帝国の貴婦人らしき女性と話をしていた。これは裏がありそうだ。
「俺からの頼みだ、ディエゴを探してきてくれよ。本当は夜になったら戻ってくるはずなんだが、さすがに今回ばかりは心配でな」
「ちょっと待ってくれ、俺達になんでそんなこと頼む? 人探しならギルドへ行って依頼しろよ」
「おいおい、昨日約束したじゃないか! あんたらにディエゴの用心棒になってくれってな」
「は!? いや、その話は……」
確かにディエゴの用心棒の話は打診されたけど、引き受けた記憶はないぞ。っていうか、有耶無耶のままだったかな。
「私は金貨一枚なら引き受けるって言ったわ」
「そうそう。パメラちゃんはそうだったな。ちょっと高値だが、ディエゴもそれで了承したんだ」
「パメラはそうでも、俺は違うぞ。そもそも用心棒自体興味がないって言ったじゃないか」
「おい、そんなこと言わないでくれ! マジでディエゴの身があぶねぇんだ、引き受けてくれよ!」
ホルスが必死に懇願してきた。性格の悪い鳥だなと思っていたが、主人を憂う気持ちだけはしっかりあるんだな。
「危ないも何も、そもそも北の古代遺跡だろ? 凶悪なモンスターも潜んでいる場所じゃないか、どうしてそんな場所に一人で足を運ぶ?」
「そ、それは……」
「私達に大きな声で言えない秘密があるんでしょ? どんな秘密なの?」
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