第七十一話 俺の実家にエイダがやってきた?
意外な言葉が返ってきた。急に赤く光るからなんだろうとは気になったが、まさか魔石だったとは。
「しかもランクAの大魔石とみたわ。こんな極上の魔石を使った魔法道具が、なんでこんな場所に?」
「おや、あなたはお目が高い。実はこの魔石、とある魔道士の方にもらったんですよ」
エイダが驚いている中、一緒に乗っていたスタッフが説明を始めた。
「とある魔道士、一体どんな人?」
「詳しくはわかりません。数日前にこの村に立ち寄ったものの、長居はせずすぐにどこかへ行きました。お食事だけは提供したのですが、帝国金貨しか持っていないと後からわかって、料金の支払いができなかったのです。
ご存じのようにこの島では帝国金貨はご利用いただけませんから、仕方なくその魔道士は代金代わりに魔石を差し出したのです。まさかランクAの魔石とは思いませんでしたよ」
「ランクAの魔石は、金貨にして十枚はくだらない額よ」
「じ、十枚!?」
「その魔道士、明らかに帝国の人だよね。どんな外見してた?」
「フードとマスクを被っていたので、詳しくはわかりませんが、恐らく女性かと……」
「女性……」
エイダがその言葉に反応した。そして顎に手を当てて、考え込む。
「もしかして心当たりがあるのか?」
「え? いや……なんでもないわ。多分、違うと思うから……」
「お客様、着きましたよ。ここが最上階です」
いつの間にか、〈リフティングボード〉は十階まで到達していた。スタッフが下りて俺達を部屋の前まで案内してくれた。ここまで親切にするだなんて、サービス精神がすごいな。
「こちらがお客様のお部屋となります。それではごゆっくりお休みください」
スタッフはまた快い笑顔を見せつつ、お辞儀をした。すると、右手で変な仕草をしだした。
この仕草は。今朝泊ったホテルのウェイターと同じ仕草だ。
「あぁ、チップだね。ちょっと待って」
「待って、私が出すから。はい、これでどう?」
「ありがとうございます。それではわたくしはこれにて。いい夢をご覧ください」
パメラは銀貨を手渡した。そうだった、俺は銀貨がなかった。またうっかり金貨を渡すところだったな。
「いやぁ、ごめん。またパメラにチップを払わせてしまうだなんて」
「いいのよ、銀貨くらいは何枚もあるから。だけど、ロバートもそろそろ銀貨をちゃんと用意してよね」
「そうだね。それにしても、ここの宿のスタッフも徹底しているな。部屋の前まで案内してくれるから、変だとは思っていたが、そんなにチップが欲しいのかな?」
「違うわよ、あなたが貴族だから。しかもヒューリック家の長男よ」
なるほど。どうやらすっかり金持ちと認識されているようだ。確かに俺は貴族だからその通りなんだが、これじゃ多分どこに行ってもチップを要求されるな。
「わかったよ、今後のために銀貨を用意しておこう。それはそうと、やっと休めるな」
「一等級の部屋だと言ってたわ。今夜はいい夢が見れそう」
「えぇ、そうね……うふふ」
「ん? どうしたんだエイダ?」
「なんでもないわ。でも……本当に今夜は素敵な夢が見れそう、そんな気がしてね」
エイダが不敵な笑みを浮かべながら話しかける。一体どうしたんだ、彼女は。
気になるけど、俺も眠気が襲ってきた。だけど、素敵な夢か。俺もエイダと同じくいい夢が見れたらいいな。
「ん? ここは……? 俺は宿の部屋で寝ていたはずだけど」
目が覚めると、俺は豪華な飾り付けがしてある部屋のベッドに腰かけていた。明らかに二人以上が寝れるサイズのベッドだが、それ以上に室内の飾り付けや雰囲気は、さっきまで俺がいた部屋とは全然違う。
というか、ここは宿じゃない。誰かの屋敷の寝室みたいだ。見た感じ貴族の屋敷だ。
「貴族の屋敷の寝室……待てよ。ここってまさか!?」
「そうよ。あなたの実家の両親の寝室、素晴らしいでしょ?」
誰かの声が聞こえた。振り向くとそこにはエイダが立っていた。
「エイダ、なんで君がここに? いや、それよりなんで俺の実家にいるんだ? どうなってんだ?」
「落ち着いて。気持ちはわかるけど、一度に複数質問するもんじゃないわ。順を追って説明してあげるから、とりあえず座って」
エイダが俺に座るよう指示した。その瞬間、俺のすぐ後ろに椅子が出現した。さっきまでなかった。これは魔法か何かの類なのか。
駄目だ。何が何だかさっぱりわからない。俺は頭が混乱してきたが、とりあえず出てきた椅子に座った。
「うふふ、あなたがそんなに動揺するだなんて意外ね」
「そりゃ動揺するでしょ? そろそろ一体何が起きているか、説明してくれよ」
「えぇ、わかったわ。それにしても、やっぱりあなたの実家ってすごいのね。さすがは当主のヒューリック家って感じだわ」
エイダも寝室内をまじまじと観察する。すると、一枚の写真に目がいった。
「これは家族全員の写真ね。あなたの弟らしき子供も写ってるわ、なんてかわいいの」
「おい、あまり見ないでくれよ。恥ずかしいから」
「あれ? あなたの隣にいる髭を生やした男性は誰? 見たところ父親より年上っぽいけど……」
「トマスだよ、俺の実家の執事をしている。今年で六十五歳だったかな」
「トマス……もしかして、トマス・ゴールドスミスさん!?」
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