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第七話 隠しイベントでぶっ壊れ武器ゲット!

 実家を離れて早一時間が経った。昨日訪れたサングレアル大聖堂がある町と正反対の方向へ進んでいるが、ようやく最初の目的地であるソーニャの町の外観が見え始めた。


 ソーニャの町、俺の実家から東に離れたところにある次の目的地、巨大な港がありこの港の船を使って様々な場所へも行ける。もっともフラグが立ってないから、訪れてもまだ行けない場所が多いだろう。


 俺は街道の西側に広がる森林を見た。本来この森林に最初に訪れる意味はほぼない。訪れること自体は可能だが、今の俺のステータスの状況じゃ、勝てそうなのは弱小モンスターだけだ。


 森を少しでも奥に進めば洞窟がいくつかある。うまくいけば序盤から高レベルで強力な武器やアイテムなどが手に入るが、明かに終盤以降で出くわすような強力なモンスターもいる。


 もちろんここで頑張ってレベルを上げ続けるという手もあるが、限界もある。そもそも俺のステータスはHPが10、攻撃力と体力が1で、それ以外は全部ゼロ。


 こんな状態じゃまともに戦えるわけもない、瞬殺されるのがオチだ。仮に町で強い武器と防具を揃えたとしても厳しい。


 だがそれでも俺はこの森林にまず用がある。本来なら行ってもイベントなど何も起きそうにないが、今の俺なら特殊なイベントが起きる状態になっているのだ。というか今しか起きない。モンスターに出くわすのは危険だが、それでも行くしかないんだ。


 俺が最初にやるのはモンスターを倒すことでもなければ、町に行って装備やアイテムを買いそろえることでもない。


 ごく限られたプレイヤーのみが知る、オープニング直後にしかできない裏技。バランスブレイカーとなる武器を入手することだ。


「池だ」


 俺は早速森へ入った。そして森の中で池を探し歩き続けた。俺の記憶が正しければ、森に入ってひたすら赤いリンゴの実がぶらさがっている木を頼りに進んでいけば、池に辿り着ける。だが早速邪魔が入った。


「ヤバい!」


 モンスターだ。といっても、出てきたのはホーンリザード。額から角が生えた小型のトカゲのモンスターだ。


 前世では画面越しにしか見ることがなかったために、直接目の前に現れると非常にリアルだ。俺は深呼吸をして、物影に隠れてそっと様子を見た。


「頼むから早くどっかいけよ」


 ホーンリザードはまだ俺に気づいていない、エサを探しているのだろうか、地面を見ながら木の根の辺りを右往左往している。


 もちろん見つかっても逃げればいいだけだが、何といっても今の俺のHPは10だ。逃走に失敗してしまう可能性もある。今は一撃でも喰らうわけにはいかないんだ。


「仕方ない」


 俺は地面に転がっていた手ごろな大きさの石を拾い、それを遠くへ投げた。微かに石がどこかの木にぶつかった音が聞こえた。


 その音が聞こえたのだろうか、ホーンリザードは俺とは反対の方角を向き、石が飛んだ方へ走り向かった。


「なんとか行ったか……」


 ホーンリザードが見えなくなるのを見て、俺は物影から出た。ちょうどホーンリザードがいた場所に立っていた木の上を見ると、赤いリンゴの実を発見した。


 この方角で間違いない。そのリンゴの木を抜けしばらく歩くと、綺麗な水で満たされた池を発見した。


「あった!」


 遂に見つけた。やはり前世の記憶通り、同じ場所に池があった。


 俺は高揚が抑えきれなかった。ここでも俺の前世の記憶が役に立つときが来た。早速アイテムボックスを開け、中に手を伸ばし、あるアイテムを取り出した。


『「銅の剣×1」を取り出しますか?』


 目の前にメッセージボックスが表示された。もちろん答えは「はい」だ。


 俺は右手に銅製の剣を鞘に入った状態で取り出し、それを池の中へ投げ捨てた。大きな音と波紋を広げながら、剣は静かに沈んでいった。


「出てきてくれよ」


 しばらく経つと池の中央が鮮やかに光り出した。そして徐々に光は強まると、なんと今度は泡もたてず金髪の美しい女性が姿を現した。


 着ているのは露出が激しい白いドレス服、まるでファンタジー世界に出てくる女神そのものに見えた。それでいて巨乳で長身、美脚という抜群のプロポーションだ。


 呆気にとられ何も言葉が出なかった。すると目の前の女性は、両手に黄金に光る剣と、これまた黄金に光る盾を持って俺に見せつけた。


 これは間違いない、あのイベントだ。


「あなたが落としたのは、どんな硬い装甲でも破壊することができるこちらの最強の剣ですか? それともどんな高威力の攻撃も防ぐことができるこちらの最強の盾ですか?」


 この女性の言葉を聞いて、俺が最初に抱いた感想は「金の斧と銀の斧って奴か?」だった。


 まさにそのおとぎ話のアレンジバージョンだ。女性の右手に持っているのが最強の剣、左手に持っているのが最強の盾だ。


 となれば、俺が言うべき答えは決まっている。


「いいえ、女神様。俺が落としたのはどちらの武器でもありません。ただの銅の剣です。どうせ金色には輝けないんで」


 俺の言葉を聞いて、目の前の女性は目の色を変えた。


「まぁ、なんと素晴らしい! あなたはなんて正直な方なのでしょう!」


 女性は両手を頬に当て、目をキラキラさせながら俺を褒め称える。


(あぁ、なんて茶番だよ)


 いくらゲームの世界だからと言って、こうもテンプレ通りの言葉を言われると恥ずかしくなってくるな。


「あなたのその正直さに敬意を評し、とっておきの武器をプレゼントしましょう!」


 来た。俺が待ち望んでいたアイテムの登場だ。女性は目の前に新しい武器を池の中から出現させた。


 もちろんその武器も俺が落とした〈銅の剣〉じゃない。それどころか、さっき女性が見せた最強の剣と言うわけでもなさそうだ。


 そもそも最強の剣とか最強の盾とか、そんなアイテムは〈ロード・オブ・フロンティア〉には存在しない。女性がここで俺に与えるのは、そのどれにも該当しない、バランスブレイカーの武器だ。


 黒色の鞘に銀発色の立派な刀身、若干湾曲したような形状から日本刀にも見える。間違いなく、俺が最も欲しかった武器だ。


「あなたにこの〈神剣コスモソード〉を与えましょう。創造神プロビデンス様の御力が宿っております。きっと今後の旅に役立つはずです」

「ありがとうございます、女神様!」


 俺は速攻で礼を言った。〈神剣コスモソード〉、〈ロード・オブ・フロンティア〉において究極性能を誇るバランスブレイカーの武器だ。


 〈コスモソード〉をもらい、アイテムボックス内に入れた。アイテム一覧を見ると最後の欄に、〈神剣コスモソード〉の名前が確かに表示されたのを確かめて、ひとまず安堵した。


 これでもう怖いものはなにもない。この武器を駆使すれば、最弱だった俺もあっという間に最強に成り上がれる。


「女神様、ありがとうございました。このご恩は一生忘れません」


 俺は再び深々と頭を下げた。


「とんでもございませんわ。とくな……いえ、それでは私はこれで失礼しますわ!」

「え?」


 女神は突然その場から消えた。池は最初に見たのと同じ状態に戻った。


 女神は一瞬何か変な言葉を言いかけた気がする。しかもちょっと慌てていたような。気のせいかな。


 まぁ、そんなことはどうでもいいか。兎にも角にも、俺は最強の武器を手に入れることに成功した。

第七話ご覧いただきありがとうございます。


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今後の章でこの女神にまた会えることを願っています。
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